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2022年7月の研究論文・ハードウェア編

By Dr. Chris Mansell


Title: Suppressing quantum errors by scaling a surface code logical qubit(surface code論理量子ビットをスケーリングすることによる量子エラーの抑制)

Organization: Google


量子誤り訂正の究極の目標は、フォールトトレラントな量子コンピュータを実現することである。そのためには、誤り訂正の仕組み自体が時折誤りを犯すものであるが、それよりも訂正する数の方が多いという閾値を超えなければならない。surface code は、ノイズの多い複数の物理量子ビットを、ノイズの少ない単一の論理量子ビットとして動作させるように設計されている。超伝導量子ビットを9個または25個のグループに分けて、全体が部分よりもエラーを起こしにくいかどうかを検証する研究が行われている。研究者たちは、彼らのデバイスがフォールトトレランスの閾値に近いことを発見した(技術的には、論理量子ビットのサイズを大きくすると論理エラー率が低下したが、これは真のスケーリングではなく、有限サイズ効果に過ぎなかった)。彼らは、閾値を下回るためには部品性能を20%向上させ、さらに改良を加えれば実用的なスケーリングが可能になると試算した。



Title: Transport of multispecies ion crystals through a junction in an RF Paul trap(RFポールトラップ内の接合部を介した多種類のイオン結晶の移送)

Organization: Quantinuum


バリウムとイッテルビウムのような、2つの異なる元素をイオントラップ量子コンピュータに捕獲することには、いくつかの利点がある。一つには、"sympathetic cooling" で、片方のイオンを量子ビットとして使用して、もう片方をレーザーで冷却するというものだ。両者はクーロン反発によって結合しているため、「イオン量子ビット」はデコヒーレンス誘導冷却ビームと直接相互作用することなく冷却される。また、測定効率が非常に高いというメリットもある。しかし、イオントラップが拡張性を持つためには、イオンが異なる領域間を移動できなければならない。今回の実証は、この動きを2種のイオン結晶でなされたものだ。2つのイオンは、トラップ構造の接合部を通過して、秒速4メートルで移動することに成功したのだ。



Title: Optimal Purification of a Spin Ensemble by Quantum-Algorithmic Feedback(量子アルゴリズムフィードバックによるスピンアンサンブルの最適精製)

Organizations: University of Cambridge; University of Sheffield; Université Côte d’Azur


この実験では、半導体量子ドットに閉じ込められた1個の電子が、約10万個の原子核を目標状態に近づけ、核スピンフリップ1回以内の精度で決定することに成功した。この熱ゆらぎは、単一スピンのゆらぎという基本的な量子限界からわずか1/3しか離れていない。スピンノイズに対する積極的なアクティブ制御は、いくつかの技術的応用にとって重要である。論文の焦点ではないが、任意の光学的にアドレス指定された量子ドット量子ビットの最長不均一デフェージング時間の記録は4倍になった。さらに重要なことは、実証されたアルゴリズム的アプローチによって、量子メモリーの改良や、「シュレディンガーの猫」ような量子相関のある多体系状態を準備できるようになる可能性があるということだ。



Title: A universal qudit quantum processor with trapped ions(イオントラップ型の quditプロセッサー)

Organizations: Universität Innsbruck; Österreichische Akademie der Wissenschaften; Alpine Quantum Technologies GmbH


ビットは、18世紀に織機制御用のパンチカードから、100年後のモールス信号のドットとダッシュ、そして最終的には現代の電子コンピュータまで、古典的な情報処理の長い歴史を持っている。しかし、量子プロセッサーには、それとは異なる現実的な問題がある。多くの量子システムは、2つ以上の可能な量子状態を持っているため、データをプロセッサにエンコードするためのオプションは量子ビットだけではない。複数のエネルギー準位が採用されている場合は、qudit で構成されていると言われる。量子ビットに対する qudit の利点は多様であるが、その使用には技術的な課題が伴う。これまでの実装は原理検証的なものが多かったが、今回の論文では、最大7つのエネルギー準位を利用したトラップイオンがそれぞれユニバーサルゲートセットを実現し、同等の量子ビットシステムに匹敵する性能を発揮している。


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