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2023年 5月の研究論文・ハードウェア編

By Dr Chris Mansell, Senior Scientific Writer at Terra Quantum


ここ1か月で見た、量子コンピューティングと量子通信に関する興味深い研究論文の概要の紹介を以下に。


Hardware


Title: Scalable Multilayer Architecture of Assembled Single-Atom Qubit Arrays in a Three-Dimensional Talbot Tweezer Lattice(3次元タルボルツイザー格子における単一原子量子ビットアレイのスケーラブルな多層構造の形成)

Organization: Technische Universität Darmstadt


この論文では、大規模構成が可能な、超低温原子の三次元アレイを作成する方法を記述し、実現した。この方法では、回折光は焦点面だけでなく、他のいくつかの面でも強度プロファイルを持つというタルボット効果を利用している。その後、原子はこのプロファイルの局所極値 (赤色調光では極大値、青色調光では極小値) に補足することができる。このシステムは、現在実装されているように、原子を捕獲できる17の平面を持ち、平面ごとに750以上の原子を捕獲する。原子をリュードベリ状態に励起することで、原子を量子ビットとして扱うことができるため、量子コンピューティングプロトコルの大規模なインスタンスを調査する手段を提供する。



Title: A Race Track Trapped-Ion Quantum Processor(レーストラック型トラップドイオン量子プロセッサー)

Organizations: Quantinuum; Honeywell Aerospace


この論文では、新しいイオントラップの設計が示されている。量子電荷結合素子アーキテクチャに基づいているが、楕円形のレーストラックのような形をしている。現在の32量子ビットからのスケールアップを可能にするいくつかのコンポーネントが含まれている。研究者らはこれまでの操作をベンチマークし、2量子ビット論理ゲートがエラーの主要な原因であることを発見した。また、2量子ビットゲート誤差を評価するためのハミルトンシミュレーションの性能、量子ビット接続性を評価するためのQAOAアルゴリズム、中間回路の測定とリセットを評価するための繰り返しコードと動的シミュレーションを使用して、それぞれのアプリケーションがシステムの異なる側面にどのように依存するかを調査した。このシステムは、これまでで最高の量子ボリュームを達成している。



Title: Loophole-free Bell inequality violation with superconducting circuits(超伝導回路による抜け穴のないベル不等式の違反)

Organizations: ETH Zurich; Quside Technologies S.L.; Institut de Ciencies Fotoniques; Institució Catalana de Recerca i Estudis Avançats; University of Paris-Saclay; Yale University; Université de Sherbrooke; Canadian Institute for Advanced Research


この実験が行われるまで、抜け穴のないベル実験に使われた物理系は、窒素空孔中心、光学光子、中性原子だけだった。今回、超伝導体がこのリストに加わった。これは、非局所性に関連するため、基礎的な観点から重要である。また、技術的な意味合いでも問題を提起している。超伝導体は、世界をリードする量子プロセッサーを構成している。この実験は、数十メートルに及ぶ超伝導導波路を使用して、それらを確実に接続できることを示している。つまり、デバイスに依存しない量子鍵配布プロトコルや、分散型量子計算に利用できる可能性があることを意味している。



Title: Solving Graph Problems Using Gaussian Boson Sampling(ガウスボソンサンプリングを用いたグラフ問題の解決)

Organizations: University of Science and Technology of China; Chinese Academy of Sciences; New Cornerstone Science Laboratory


密なサブグラフの識別は、計算生物学や金融関連で発生する問題。この問題に対する古典アプローチに比べて高速化を提供することは、ガウスボソンサンプリングの応用により可能だ。量子計算の非普遍モデルであり、ガウス圧縮状態が受動的な線形干渉器を通過する仕組みである。この最新の研究では、ガウスボソンサンプリングの実験結果を、現在の最速のスーパーコンピュータが正確な古典的アルゴリズムを実行するのに何年もかかるような領域まで拡張している。おそらく、より高速な古典的アルゴリズムが開発されるだろう。その一方で、これは非常に注目すべき進展と考えられる。



Title: Entangling microwaves with light(マイクロ波と光のエンタングルメント)

Organizations: Institute of Science and Technology Austria; Vienna Center for Quantum Science and Technology


この論文では、通信業界で使用される波長を持つ光と、マイクロ波を決定論的に絡ませている。超伝導量子プロセッサをネットワーク化できる可能性があり重要と言える。この結果は、超低ノイズ超伝導アルミニウムマイクロ波空洞内にニオブ酸リチウム光共振器を配置することによって達成された。電磁場の四象限の測定結果は、Duan-Simonの分離性基準を破り、それによりエンタングルメントの発生に成功したことが確認された。



Title: Cryogenic sensor enabling broad-band and traceable power measurements(広帯域で追跡可能な電力測定を可能にする極低温センサー)

Organizations: Aalto University; Bluefors Oy; IQM; VTT Technical Research Centre of Finland; QTF Centre of Excellence


超伝導体がマイクロ波光子と相互作用する回路量子電磁力学は、量子計算の主要なアーキテクチャの一つである。弱いマイクロ波信号の測定能力を向上させることは、装置にとって非常に有益な結果となるだろう。今回の研究では、極低温環境下で幅広い周波数帯域のマイクロ波信号を正確に測定する方法を考案した。既存の計測装置と比較して、彼らの装置はノイズ等価能力と呼ばれる性能指標を2桁向上させ、重要な部品の熱伝導率を5桁以上向上させる。今後の実験では、彼らの装置を使用して、超伝導量子ビットの実験においてマイクロ波信号を校正する予定という。



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原記事(Quantum Computing Report)

https://quantumcomputingreport.com/


翻訳:Hideki Hayashi

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