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特集インタビュー:量子コンピュータプログラミングのためのWebサービス「Qni(キューニ)」とは?

Quantum Business Magazine 10 months ago

ビジネスインタビュー


今回は、TIS株式会社の高宮様に、量子コンピューティングをシミュレートするツール開発についてお話を伺いました。無料で実機も必要なく、開発環境の準備ができ、開発人材の育成が可能となるということで、いち早く将来の量子技術への準備をすすめています。


 

TIS テクノロジー&エンジニアリングセンター 所属

高宮 安仁(たかみや やすひと)

 


- インタビューの機会をいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。


高宮氏:よろしくお願いします。



- まずサービスの紹介をお願いします。


高宮氏:今回リリースする Qni (キューニ) は、ブラウザ上で量子回路をリアルタイムに実行できるサービスです。ドラッグ&ドロップだけで量子回路を書いて実行できます。



- 開発に至ったきっかけはありましたか?


高宮氏:作りはじめたきっかけは、仕事で量子コンピューティングを勉強する必要が出てきて、そのための計算ツールが必要だったからです。量子コンピューティングの教科書には数式がたくさん出てくるので、計算用紙をたくさん使います。しかも複数の量子ビットを扱おうとすると手計算ではめんどくさいので、専用の電卓みたいなものがほしいなあというのが動機でした。



- 勉強するためのツール作りですね。量子計算はノートの場所も取るので数式が大変です(汗)


高宮氏:作りながら自分でも毎日使っていると、方向性がだんだん決まってきました。最初は教科書に出てくる状態ベクトルと行列の掛け算をそのまま計算したかったので、シンボリック演算ライブラリとシミュレータを実装しました。ところが使ってみるとほとんどの回路では、(当たり前ですが) ぐちゃぐちゃな長い式が出ます。そこで数式表示はあきらめて、グラフィカルに表示する方法はないかと考え、ブラウザに対応したり量子回路を直接ドラッグ&ドロップできるようにしていったら、現在の形に近付いてきました。



- 実際のサービス内容と、アクセス方法を教えてください。


高宮氏:URL (https://qniapp.net をブラウザで開くだけで量子コンピューティングを始められます。量子コンピュータを勉強するときのお供として、ちょっとゲートの動きを確認するときなどに便利です。いつでもぱぱっと使えるように、ユーザ登録やログインなどの邪魔な機能は入れていません。

ユーザアカウントという概念はありませんが、回路を URL として保存できる機能を付けました。作った回路ごとにユニーク URL が生成されるので、これをブックマークしたりテキストファイルに保存しておけば、いつでも作った回路を開けます。あとはこの URL を送るだけで、他の人と回路をシェアできますし Twitter にも投稿できます。



- 特に学びたいエンジニアにとっては、電卓のように手間なく使えるのは嬉しいですね。自分が作った回路をぱっとツイートできるのもいいです。ここまで進めてきた中で、印象的な苦労などありましたか?


高宮氏:量子コンピュータやフロントエンド開発などすべてが専門外だったので、勉強だけでかなりの時間を溶かしました。ただし量子コンピュータに関しては、理研の中田真秀さんに助けてもらいました。中田さんは量子化学や HPC 分野で活躍されている研究者で、もともと古い知り合いなのですが、2020 年に中田さんが監訳の「みんなの量子コンピュータ」が出たので、なんだ身近に専門家がいたんじゃん、となりました。そこからいろいろ教えてもらたりしているうちに Qni の共同研究者になってもらって、一緒に論文を書いたり、Qni に NVIDIA cuStateVec を接続して 30 量子ビットまで計算できる機能など、むずかしそうな部分を実装してもらいました。



(1. デスクトップのブラウザでQniを開いたスクリーンショット)



- 30量子ビットまで!仲間としてコミッターが増えていくのはよいアプリケーションでよく聞く話です。縁を引き付けるようなものがあるのかもしれません。では、こんなことがあったなど、成果として得た点はいかがでしょうか?


高宮氏:Qni が早い段階でいくつかのサービスで使ってもらえたことです。たとえば、Qni のユーザインタフェースは Web Components という Web 標準技術で作られていて、独自の <h-gate> とか <x-gate> みたいな HTML タグで量子回路をブラウザに表示できます。従来の <div> をたくさん書くスタイルよりもかなり簡潔に UI を組み立てられます。これが便利なので、今回 blueqat VQE や AutoQML といったサービスで使われはじめています。




(2 モバイル(iPhone)でのスクリーンショット)



- コンポーネントとしても提供してくれているのですね、量子ゲートを書く際に使いたい人も多くなりそうです。少し角度は変わりますが量子技術、量子ビジネスに関わってみて、現在どのような感想・手ごたえをもっているか聞かせてください。


高宮氏:個人的には Qni は研究というか趣味という感覚でやっているので、ビジネスは大変だろうなあと思います。量子コンピュータは実現まであと何年もかかるので、これは自分にとってはですが、今の段階でビジネスにして儲けるのは無理です。ただし、今は "量子ゴールドラッシュ" ですから、ジーンズやスコップを作って売る仕事なら成り立つと思っています。つまりむりやりビジネスに結び付けるとすると、Qni はジーンズ売りと同じことをしようとしています。



- 量子ならではのユースケースを実現するにはいたっていない中で、世界中で金脈を掘ってるって分かりやすい例えです(笑)。ユースケースが実現した後も、長く愛されるジーンズにしたいのではないでしょか。具体的な短期・長期的なビジョンがあれば教えてください。


高宮氏:長期的なビジョンを語るのは苦手なので、すでに取り組んでいるプロジェクトについて紹介します。

Qni 自体の機能強化についてには、任意のユニタリゲートを追加できたりといった実用性強化をやっていきたいと思っています。よく教科書とか論文に載っている回路図を、そのまま Qni 上で再現できることを目指しています。任意のユニタリゲートもそうですが、(逆行列を求める HHL アルゴリズムで出てくるような) アークコサインゲートとか、たまに使うけど実装が面倒というものが、ブラックボックスなプリセットゲートとして入っていれば便利そうです。



- Utility的に扱えるものが増えると、特に初学者の敷居が下がるので嬉しいです。


高宮氏:また、これから量子コンピュータを始めたいと考えているプログラマ向けのチュートリアルを開発していきます。すでに世の中には各社チュートリアルがそろいつつありますが、どれも数学や物理学の前提知識が必要で、本当の初級者・中級者向けコンテンツが不足しています。プログラマが読むような書籍 (JavaScript などのプログラミング教科書) には数式がひとつも出てきませんから、そういった人達でもひととおり理解できるものを目指しています。



- C言語のプログラマーが移行しやすい言語仕様にしたことがJava言語の成功の一つだった言われています。古典的なプログラマーが、量子に移行しやすい環境も大事かもしれません。本誌も「量子の一般化」をテーマの一つに進んでいきます。


高宮氏:これらの取り組みはすべて GitHub に公開していきますので、ユーザのみなさんからフィードバックやユースケースを集め、改善を重ねていきたいと思っています。ぜひ、https://github.com/qniapp/ に参加をおねがいします!



- 節目となるリリースなどありましたら積極的にアピールしていきますので連絡いただければと思います。本日は丁寧に対応いただきありがとうございました!


高宮氏:ありがとうございました。



(3 Twitter でQni のURL シェアをさっそく使っている方のツイート)



 

先日、1/26日にQni (キューニ)のニュースリリースがありました。企業ページで詳細な記事を確認することができます。


・ニュースリリース

https://www.tis.co.jp/news/2021/tis_news/20220126_1.html


・Twitterアカウント

@qniapp



企業概要

企業名:TIS株式会社(TIS Inc.)

本社所在地:東京都新宿区西新宿8丁目17番1号

設立:1971年4月28日

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米国のQuantumComputingReportからの翻訳記事にオリジナルの量子業界の記事を加えてお届けしています。

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