現在量子コンピュータ業界は量子の冬というどうにもならない状況にありそうです。今回はIBMの公式ツールであるQiskit AlgorithmsからHHLとShorが外された件についてです。
Why was the HHL algorithm removed from the qiskit library?
公式にはこちらに記述があります。
https://docs.quantum.ibm.com/api/migration-guides/qiskit-algorithms-module
Algorithms that were deprecated and are now removed entirely from qiskit.algorithms. These are algorithms that do not serve as building blocks for applications and are only valueable for education, as described in the following tutorials:
"Qiskit.algorithmsから完全に削除された非推奨のアルゴリズム。これらはアプリケーションの構築ブロックとして機能せず、以下のチュートリアルで説明されているように、教育のためにのみ価値があるアルゴリズムです。"
HHLとShorはFTQCと呼ばれる誤り訂正量子コンピュータの期待されるアプリとして有名ですが、今回これらが公式のアルゴリズムライブラリから外されました。理由としては当面実用性がなく、基礎研究などにはいいですが利用が難しいので教育向けのみに提供するということのようです。
現在量子コンピュータに対する期待感の高まりと反対に業界は冷え込んでいます。変分量子アルゴリズムが全く利用できなかったという現状から基礎研究に戻っており、量子機械学習も例外ではありません。現在まともに利用できる量子アルゴリズムはほぼゼロと言っていい状態で、次の展開を待っている状況です。
そんな中、次の展開としてFTQCと呼ばれるデバイスの開発が待たれていますが、その最有力アプリとしてはHHLはまだ実用には耐えないという印象があります。実際HHLを利用するためには多くのハードルがあります。そのため、将来の機械学習としてHHLを現在学ぶことはリスクがあると言えるでしょう。実際にアルゴリズムとしては利用に多くの問題を抱えているため、FTQCのロードマップが発表された今でもHHLが実用に上がることは当面なさそうです。
量子コンピュータ業界への期待はいいですが、事業化や企業が進出して果実を得るような段階ではなさそうです。こうした量子コンピュータ業界の再編や今後への準備期間として当面は注意が必要です。