2022/01/07 04:30
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密度行列は量子力学の基本変数です。そして密度行列は およびを満たす必要があります。ただ、最後の、つまり半正定値条件は行列の固有値が0以上というもので、取り扱いが面倒です。同値な条件はいくつか知られています。その一つに すべての主小行列式がゼロ以上、というのがあります(佐竹線形代数p.163 §4, 定理6 とその脚注参照) これを使うと、密度行列の要素から有限個の不等式で書き下すことができます。
今回は、2準位系の密度行列に対する条件を、密度行列の要素の不等式で書き下す、ということをしてみます。
まずは準備です。
Copy from sympy import *
Copy var('λ1:11', real=True)
(λ1, λ2, λ3, λ4, λ5, λ6, λ7, λ8, λ9, λ10)
Copy e=Symbol('epsilon', real=True)
Pauli行列を, , と設定します。
Copy _λ1=Matrix([[0,1],[1,0]]) _λ2=Matrix([[0,-I],[I,0]]) _λ3=Matrix([[1,0],[0,-1]])
を確認しましょう。
Copy (_λ2*_λ2).trace()
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密度行列入力します。
Copy ρ2= Rational(1,2)*eye(2) + Rational(1,2)*(_λ1*λ1 + _λ2*λ2 + _λ3*λ3) display(ρ2)
Matrix([
[ λ3/2 + 1/2, λ1/2 - I*λ2/2],
[λ1/2 + I*λ2/2, 1/2 - λ3/2]])
2x2行列なので、主行列式はこのおよび対角成分二つ、のみです。まずは全行列の行列式を求めます
Copy simplify(ρ2.det())
-λ1**2/4 - λ2**2/4 - λ3**2/4 + 1/4
上の式はゼロ以上です。従って、と書き直せます。 さらに、対角要素からは、, が出てきますが、これはに含まれているので不要となります。これで二準位系の密度行列の完全な特徴づけを要素を使った不等式条件ですべて書き下すことができました。これは教科書にあるようにブロッホ球となります。2準位系の場合は偶然とてもきれいな形で書けます。
この方法は一般の順位系への拡張も簡単です。しかし、その場合、計算や式が複雑になるだけではなく、独立な条件のみを得るのも難しくなります。今回の場合は、, は自明にからわかりました。教科書にあるようにブロッホ球のように単純な形はしていません。次回は3準位系の密度行列の条件を出してみようと思います。
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