エルミート行列とユニタリ行列は兄弟みたいなもの (I)

(disclaimer 数学的には雑なのでそこはご容赦)

線形代数を学ぶとエルミート行列とユニタリ行列が出てくると思います。初学者はなんやこれと思うと思うのですが、エルミート行列とユニタリ行列は

量子力学、量子コンピュータにでてくる必須の行列です。まず最初に、量子力学、量子コンピュータで頻繁に使う定義と定理を確認しておきましょう。


定義をまずはっきりさせておきます。

  • エルミート行列の定義はH=HH=H^\dagger つまり転置をとって複素共役をとるともとの行列に戻る、です。成分で書くとHij=HjiH_{ij}= H_{ji}^* となってます。*は複素共役という意味です。
  • ユニタリ行列の定義はU=U1U^\dagger = U^{-1} となってます。転置をとって複素共役をとると逆行列になる、です。したがってUU=UU=IU^\dagger U = UU^\dagger=I です。


さて、正規行列についても定義を書いておきます。

  • 行列AA が正規行列とはAA=AAAA^\dagger = A^\dagger A が成立すること

以上で定義は終わりです。


正規行列ですが、行列AA が正規行列ならば、行列AA をユニタリ行列で対角化ができることが知られています(実は同値)。

したがって、以下のことが分かります。

  • ユニタリ行列はユニタリ行列で対角化できる。
  • エルミート行列はユニタリ行列で対角化できる。


量子コンピュータの教科書には必ず、

  • エルミート行列HH は物理量に対応している。
  • エルミート行列はH=Udiag(θ1,θ2,θ3,,θn)UH = U^\dagger {\rm diag} (\theta_1, \theta_2, \theta_3, \cdots, \theta_n) U ユニタリ行列で対角化できる
  • 固有値θ1,θ2,θ3θn\theta_1, \theta_2, \theta_3 \cdots \theta_n は必ず実数となる。物理的解釈としては、物理量は必ず実数値をとるから、です。
  • 固有ベクトルはたがいに直交する(=ユニタリ行列で対角化可能なので)、物理的解釈としてはN次元複素数空間の座標系を回転させるだけで、物理量は対角的に見える、です。


実は、ユニタリ行列もユニタリ行列で対角ができるのです。今回はこれを使います。


次に行列の指数関数exp\exp というのを考えてみましょう。皆さんは実数や複素数の時にexp(x+yi)\exp (x+yi) を考えるということをしたことがあると思います。aa が実数でも複素数でも

expa=kakn!\exp a = \sum_k^\infty \frac{a^k}{n!}

が定義です。特に、複素数の場合、最も有名な関係

expiθ=cosθ+isinθ\exp i\theta =\cos\theta + i \sin \theta

はご存じの方が多いでしょう。


指数関数は実数や複素数の時と同じように、行列に拡張することができます。ただ単に複素数または実数aa を行列AA に置き換えるだけです。


expA=k=1Akk!\exp A = \sum_{k=1}^\infty \frac{A^k}{k!}


エルミート行列に虚数単位をかけたものiHiH の指数関数を考えてみましょう。

expiH=k=1ikHkk!\exp iH = \sum_{k=1}^\infty \frac{i^kH^k}{k!}


ikHki^k H^k を考えるのはめんどくさそうですが、一歩ずつやるとそんなに大したこともありません。まず、エルミート行列はユニタリ行列で対角化可能というのを使うと、


H=Udiag(θ1,θ2,θ3,,θn)UH = U^\dagger {\rm diag} (\theta_1, \theta_2, \theta_3, \cdots, \theta_n) U、とかけますから、

iH=Udiag(iθ1,iθ2,iθ3,,iθn)UiH = U^\dagger {\rm diag} (i\theta_1, i\theta_2, i\theta_3, \cdots, i\theta_n) U ですね。


二乗を考えると、


H2=Udiag(θ1,θ2,θ3,,θn)UUdiag(θ1,θ2,θ3,,θn)U=Udiag(θ12,θ22,θ32,,θn2)UH^2 = U^\dagger {\rm diag} (\theta_1, \theta_2, \theta_3, \cdots, \theta_n) U U^\dagger {\rm diag} (\theta_1, \theta_2, \theta_3, \cdots, \theta n) U = U^\dagger {\rm diag} (\theta_1^2, \theta_2^2, \theta_3^2, \cdots, \theta_n^2) U

より

i2H2=Udiag(iθ1,iθ2,iθ3,,iθn)UUdiag(iθ1,iθ2,iθ3,,iθn)U=Udiag(θ12,θ22,θ32,,θn2)Ui^2 H^2 = U^\dagger {\rm diag} (i \theta_1, i\theta_2, i\theta_3, \cdots, i\theta_n) U U^\dagger {\rm diag} (i\theta_1, i\theta_2, i\theta_3, \cdots, i\theta_n) U = U^\dagger {\rm diag} (-\theta_1^2, -\theta_2^2, -\theta_3^2, \cdots, -\theta_n^2) U

と、なるため、

expiH=Uk=1ikdiag(θ1k,θ2k,θ3k,,θnk)k!U\exp iH = U^\dagger \sum_{k=1}^\infty \frac{ i^k {\rm diag} (\theta_1^k, \theta_2^k, \theta_3^k, \cdots, \theta_n^k) }{k!} U となります。


結局

expiH=Udiag(expiθ1,expiθ2,expiθ3,,expiθn)U\exp iH = U^\dagger {\rm diag} (\exp i \theta_1, \exp i\theta_2, \exp i \theta_3, \cdots, \exp i \theta_n) U

という風に簡単に計算することができます。


つづく

Nakata Maho
RIKEN
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