行間を埋める: 堀田量子p.43 式(3.15) 付近の、N準位系のすべての物理量 (エルミート演算子) を作る基底について(III)

たかが一行の式の理解にやたら時間がかかってます。


これを3×33\times 3 エルミート行列に拡張してみましょう。一気に3x3=9個も行列が出てきますが、構造は難しくありません。非対角要素は簡単です。とりあえず、(i,j) 要素に1、(j,i)要素に1 を埋めた行列、(i,j) 要素に-i、(j,i)要素にiを埋めた行列を用意すればいいだけです。これはN2NN^2-N 個あります。3x3の場合は6個です。


λ1=(010100000)\lambda_{1}=\left(\begin{array}{lll} 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array}\right) λ2=(0i0i00000)\lambda_{2}=\left(\begin{array}{ccc} 0 & -i & 0 \\ i & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array}\right) λ4=(001000100)\lambda_{4}=\left(\begin{array}{lll} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{array}\right) λ5=(00i000i00)\lambda_{5}=\left(\begin{array}{ccc} 0 & 0 & -i \\ 0 & 0 & 0 \\ i & 0 & 0 \end{array}\right)  λ6=(000001010)\lambda_{6}=\left(\begin{array}{lll} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \end{array}\right)  λ7=(00000i0i0)\lambda_{7}=\left(\begin{array}{ccc} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & -i \\ 0 & i & 0 \end{array}\right) 

これはすぐわかりますね。これらが線形独立であること、実数で線形結合をとることでエルミート行列の非対角要素に任意の値を入れられることは2x2の場合を拡張することですぐわかります。


次に対角要素が問題になります。まず、単位行列はトレースが0ではないので(3.15)には入ってきませんが、考える必要はあります。次にσ^z\hat \sigma_z を3x3に拡張した行列λ3\lambda_3 を入れておきましょう

I=(100010001)I=\left(\begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array}\right) λ3=(100010000)\lambda_{3}=\left(\begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array}\right)

を入れておきましょう。そうすることで次元の拡張がスムーズになります。さてこれであと一つです。こいつがちょっとトリッキーです。もったいぶらずに答えを与えると

λ8=(100010002)\lambda_{8}=\left(\begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & -2 \end{array}\right)

となります。すると

Tr(I^λ3)=0,Tr(I^λ8)=0,Tr(λ3λ8)=0\operatorname{Tr} (\hat I \lambda_3) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\hat I \lambda_8) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\lambda_3 \lambda_8) = 0

が一気にほとんど自明にわかります。(定数をのぞいて)このような行列はGell-Mann行列と呼ばれます。この対角要素、なかなかきれいな構造になってますね。作り方も簡単ですし。


四次元への拡張も簡単です。15個も行列が出てくるので、めんどくさいです。非対角要素に成分を持つのは自明に出てくるので、対角要素を成分に持つもののみ、具体的に書いておきましょう。


I=(1000010000100001)λa=(1000010000000000)λb=(1000010000200000)λc=(1000010000100003)I=\left(\begin{array}{cccc} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ \end{array}\right) \lambda_{a}=\left(\begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & -1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ \end{array}\right) \lambda_{b}=\left(\begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & -2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ \end{array}\right) \lambda_{c}=\left(\begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & -3 \\ \end{array}\right)


Tr(I^λa)=0,Tr(I^λb)=0,Tr(I^λc)=0,Tr(λaλb)=0,Tr(λbλc)=0,Tr(λc,λa)=0\operatorname{Tr} (\hat I \lambda_a) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\hat I \lambda_b) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\hat I \lambda_c) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\lambda_a \lambda_b) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\lambda_b \lambda_c) = 0, \quad \operatorname{Tr} (\lambda_c, \lambda_a) = 0

これも秒でわかります。これ以上の次元への拡張は自明でしょう。説明の必要すら感じません。行列にかかる係数は適当に調節してください。


これで(3.15)は完全に理解できた!やったね!おつかれさまでした。


さて、今回出した表現は一意ではありません。他にも表現はあります。単に一つ、量子力学でよく使われている表現を出したまでです。数学と物理では、虚数の使い方に流儀があったり、規格化定数に流儀があったりで、ちょっと違うので、とまどうかもしれません。どちらの流儀もリーズナブルですが、どの流儀かは注意して読む必要があります。

Nakata Maho
RIKEN
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