研究分野紹介、量子情報熱力学


今回はデコヒーレンスより一般的な外界と量子情報の相互作用の話をします。熱力学をご存じですか。これは原子集団が相互作用でいずれどのようになるかを記述します。これには有名な熱力学の三法則があり、それでマクロ系の多くは説明出来ます。熱エネルギー保存則、エントロピー増大則、ネルンストの法則です。第2法則であるエントロピー増大則は特に重要です。これは閉鎖系における全体の乱雑さは不可逆的に増大するというものです。例えば、コーヒーとミルクを容器に入れて混ぜればいつかはカフェオレになり、振り子の運動も摩擦があれば力学エネルギーは熱に変換され振り子の運動は止まるといった、現実にありふれた現象の多くを説明する一般的法則です。熱力学第三法則は、絶対零度の系ににおけるエントロピーはゼロになるというものです。


量子力学においても、これがより厳密に成り立つとは四半世紀前まで考えられていませんでした。これは、非平衡物理学における確率的エントロピー生成と揺らぎによってようやく定量化されました。量子系と特定分布で熱平衡状態にある熱欲と接続された系を考えると、確率的エントロピー生成が定義されます。そこから平均エントロピー生成のアンサンブル平均はゼロ以上になる事が示されます。これはジャルジンスキー不等式として熱力学第二法則の一般化として広く利用されるようになりました。これらのことの初学者向け導出は参考文献[1]に載っていますので、詳しくはそちらをご参照ください。それを利用してエントロピーが減少するように見えるジラードエンジンにおける仕事の生成とエントロピーの蓄積を計算し、熱力学第二法則が成り立つことを示しました。


量子力学的エントロピーはすでに簡単な系で計算され、時間発展とともに増大するさまが数値計算で確かめられています[2]。これが量子情報をはじめ様々な分野に生かされるのはこれからです。


[1] https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/194302/1/bussei_el_041209.pdf

[2] http://noneq.c.u-tokyo.ac.jp/Kaisetsu_KIS2018.pdf

Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
Comments
Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
Related posts

blueqat Inc.

Shibuya Scramble Square 39F 2-24-12, Shibuya, Shibuya-ku, Tokyo
Contact: info@blueqat.com