【昔の研究内容紹介】スピン渦誘起ループ電流を利用した量子計算機に関する理論的研究

今回は、私が以前取り組んでいた研究テーマについて説明します。私は博士課程に在籍していた折、スピン渦誘起ループ電流を利用した量子計算機の研究をしていました。この電流は、銅酸化物高温超伝導体における伝導層に流れるナノサイズのループ電流です。極低温においては高温では電荷キャリアを担っていたヤーンテーラー結晶ひずみによってホールは格子に束縛され、スモールポーラロンとなります。

その状態では、反強磁性となっていた銅原子における価電子におけるホール周りに超交換相互作用が生じます。すると、ホール周りの電子におけるスピンは渦構造を作ります。その状態においては電子がその周りに恒常的な全体運動を起こします。これがスピン渦誘起ループ電流です。この電流にはホール周りに右回り、左回りの自由度があります。

私の研究はこれを量子ビットとして利用するものです。私はその結果、この電流におけるいくつかの回転モード間に遷移双極子モーメントが存在し、磁場で回転モード間の縮退を解き、電磁場を照射することで量子計算が可能であることを明らかにしました[1]。

Microsoft社が開発していたマヨラナ粒子量子計算機が根拠となる論文の内容が間違っていたことが示されましたが、この電流は、存在することは理論的に予言されているのみですが、間接的に示す証拠は多く出ています[2]*[3]*1。興味があるという方は、下の論文も読んでいただけると幸いです。更に、分子線エピタキシーなどで実験的に私が理論的に研究した系を精製し、直接観測のための実験を行っていただけるのであれば、可能な限り協力させて頂きます。


https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2399-6528/aa98ff


*:中性子散乱の結果、伝導層に平行な結晶面における反強磁性のものとは違う磁気モーメントが観測されています。


*1:磁気励起スペクトルに砂時計構造が現れます。他にも多くの証拠が出ております。


[1]Wakaura H and Koizumi H 2016 PhysicaC521–522 55–66

[2]Mangin-Thro L, Sidis Y, Wildes A and Bourges P 2015 Nat. Commun. 6 7705

[3]Hidekata R and Koizumi H 2011 J. Supercond. Novel Magn. 24 2253

[4]Gozar A and Bozovic I 2016 PhysicaC521–522 38–49

Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
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