論文紹介:量子計算を用いた窒素固定の計算可能性。


今回は、量子計算機を用いた高分子触媒系における現状での計算時間をまとめた論文を紹介します。この論文は特にFeMoCoという窒素固定におけるその時間発展過程を量子位相推定を用いて計算する場合における所要ゲート数、計算時間についてまとめたものです。FeMocoはFerroum-Moribtenium-cofactorの略で、窒素を固定することからアンモニア合成における触媒として期待されています。産業革命から半世紀後、マルサスが人口論の中で、人口は幾何級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しないということを示し、食糧危機が起こることを予言しました。その中で、ハーバーとボッシュらがアンモニアの合成方法の工業化に成功しました。これはハーバーボッシュ法と呼ばれ、20世紀初頭にドイツで初めて工業的にアンモニアを大量生産する試みがなされ、食糧生産量が増加しました。今ではより優秀な触媒ができ、アンモニアの製造能力は向上しました。


密度行列繰り込み群を用いれば、Complete active space self-consistent field(CASSCF)法を用いて解ける最大量子ビット数は18から100に増やせます。量子位相推定をシングルスレッド、マルチスレッド、入れ子計算で実行し、FeMocoにおけるスピンモーメントS=0、電荷+3,54電子、54軌道における場合、スピンモーメントS=0,電荷0、軌道数57、電子数63における場合とで計算時間と必要量子ビット数の見積もりが行われました。その結果、エラー量を厳密解から0.1mHartree以内に収めるにはシングルスレッドでは両者とも量子ビット数100程度で3年以上かかるという結果になりました。一方、マルチスレッドでは、量子ビット数2000程度で3ヶ月で計算が終わるという結果になりました。


この論文が出てから4年が経ちましたが、あまり状況は変わっていないように見えます。再来年、2000量子ビット量子計算機がIBMから出る予定になっていますが、それでも状況が改善するか解りません。


Elucidating reaction mechanisms on quantum computers | PNAS

Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
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