論文紹介、行列積状態を用いたノイズシミュレーション。


今回は、matrix product density operator(MPDO)を用いたノイズシミュレーターの研究論文を紹介します。これは、状態ではなく密度行列にテンソル積を掛けてノイズを表すことで、ノイズを既存のあらゆる手法を超える精度で再現できたことを示しました。


Phys. Rev. Research 3, 023005 (2021) - Simulating noisy quantum circuits with matrix product density operators (aps.org)


この論文のモデルでは、ノイズをdephasing、depolarizing、amplitude dampingの3つに分けてクラウスオペレーターという密度行列の両側からかけるオペレーターとして表します。このクラウスオペレーターをMPDOを使って表し、これを掛けることで系のデコヒーレンスを時間発展で表します。クラウス表現ではノイズ演算子をEkE_k として、


E(ρ)=kEkρEk\Epsilon(\rho)=\sum_kE_k \rho E_k^\dagger


でノイズが存在する系の密度演算子が表されます。この密度演算子を初期状態における密度演算子とMatrix Product Operator(MPO)の積をMPDOとして、そこにユニタリ演算を行います。



これを用いて、ランダム行列を回路深さ24で掛けることでそれを十分回数反復した際に実現するポータートーマス分布をそれぞれ3種のノイズ下でシミュレーションしたところ、ノイズが大きいほど分布の実現は遅れるものの、MPDOを用いれば精度良くそれを再現できることが確認されました。また、IBMのクラウド量子計算機を用いた結果、シミュレーションと実機における結果は高精度で一致しました。


テンソル構造とノイズの関係が問題として残りましたが、複数量子ビットにおけるノイズを正確に再現できたのは大きいと思われます。

Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
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