論文紹介:開放系における時間結晶。


今回は、開放系における時間結晶を確率オートマトンをスピン列で再現した論文を紹介します。この論文の内容はこのようにまとめられます。


・この時間結晶は熱浴と接しています。

・進行方向を確率で決め、系を遷移させる確率セルオートマトンを時間結晶に使います。

・多次元系における確率セルオートマトンの空間をランジュバン方程式に落として時間発展させた後、時間結晶を作るハミルトニアンを掛けることで、それを実現しました。


この論文においては、本来閉鎖系で実現する時間結晶を開放系で熱によるかく乱の下で実現します。確率セルオートマトンにおける単一プロセスはセルオートマトンをハミルトニアンに落として次のように決めます。


1,セルオートマトンにおける座標sをハミルトニアンにおける座標Q(s)とします。


2,あらかじめ用意していたAの系とBの系の内Aのうち方で隣接するセルの間で多数決フリップを行い、その結果に応じて周期変化する2つのポテンシャルを変えてビットの状態を変えます。片方は0の状態と1の状態の間に壁を作り、もう片方は状態をそれらのどちらかに落とします。


3,前回のAの状態を記録しているBを基にAの状態におけるエラーを検知します。エラーがあれば2,をやり直し、無ければ4,に進みます。


4,2,と同じことをBに行います。


5,ハミルトニアンにおける座標をセルオートマトンの座標に戻します。これはS(q)=argmin|Q(s)-q|に従ってエネルギー固有値が一番小さくなるように物理座標系(p,q)からセルオートマトン座標系sに変換されます。


AとBは同一の初期状態に設定されます。その結果、スピンの磁気モーメントの期待値にタイムクリスタル振動が現れました。今まで報告された時間結晶はスピン集団あるいはスピンの1次元配列でした。今回初めて多次元系におけるものが実現しました。今後の発展が期待されるところです。


[2110.00585] An absolutely stable open time crystal (arxiv.org)

Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
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