論文紹介:局在系におけるエンタングルメントエントロピー。


今回は人工的に作られた局在系間のエントロピーと相関について実験で調べた論文を紹介します。局在系は熱平衡にならず、固有状態熱化仮説も適用できない系です。今回はAubry-Andre系が使われています。これは欠陥項を入れることで簡単に局在系に出来るボソン格子系です。このハミルトニアンは


H=Ji(aiai+1+h.c.)+U2ini(ni1)+WihiniH=-J\sum_{i}(a_i^\dagger a_{i+1}+h.c.)+\frac{U}{2}\sum_{i}n_i(n_i-1)+W\sum_{i}h_i n_i


となります。ここで、Jはトンネル効果係数、Uはクーロン項、hi=cos(2πβ+ϕ),β1.618h_i=cos(2\pi\beta+\phi),\beta\approx 1.618 は欠陥ポテンシャルの係数、Wはその強さです。また、ai,aia_i^\dagger,a_i それぞれサイトiにボソンを生成、消滅させる演算子、ni=aiain_i=a_i^\dagger a_i はサイトiの個数演算子です。この系は単独ではWを増幅させるほどに単一サイトエントロピーの最大値は小さくなり、時間発展によるその蓄積も熱平衡に達せず、欠陥項がゼロの系と比較してもその値が小さくなることが確認されています。通常の量子状態エントロピーである個数エントロピーSnS_n と、エンタングルメントの総量に比例して大きくなる配置エントロピーScS_c を計算し、一次元格子でサイト数8の可積分系であるW=1.0の状態と局在系であるW=8.9の状態が比較されました。その結果、両者の内個数エントロピーの増加は局在系の方が緩やかになり、配置エントロピーの増大は個数エントロピーが収束してから始まり、その増加も緩やかになっていました。更に、接続されるシステムのサイズ差がエントロピーを最大値を決め、システムサイズが接続されるシステムの半分の時に最大になり、そこから離れるほど小さくなることが確認されました。


熱平衡にならない局在系がほかの系と接続することによって熱平衡になってしまうという結果は、量子情報と量子計算機ハードウェアを研究している方にとってはショッキングかもしれませんが、局在系もその他の系と同様に、他の系と接続することで互いの量子情報が混ざり合うのは、様々な物理現象に慣れ親しんでいれば自然なことのようにも感じるでしょう。しかしながら、今後の発展が期待されるテーマであることには変わりないでしょう。例えば、接続による両エントロピーを抑制する方法を模索することなどが考えられます。


https://arxiv.org/abs/1805.09819

Hikaru Wakaura
個人研究者の若浦 光です。量子アルゴリズムの実装結果や論文の紹介などを載せていきます。 mail: hikaruwakaura@gmail.com
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