common.title

Docs
Quantum Circuit
TYTAN CLOUD

QUANTUM GAMING


Overview
Terms of service

Privacy policy

Contact
Research

Sign in
Sign up
common.title

【株式会社博報堂DYホールディングス / 東京科学大学 / blueqat株式会社】 計測磁場に基づいた電流双極子逆問題の機械学習モデル開発

blueqat official

2025/06/11 02:00

#実績 #特集

この度、blueqat株式会社は株式会社博報堂DYホールディングス(東京都港区、代表取締役社長:水島正幸)の研究開発部門であるマーケティング・テクノロジー・センターおよび量子センシング分野で豊富な実績を有する東京科学大学荒井慧悟研究室と共同で、脳磁場データから脳内の電気的活動を高精度に推定可能な新しい量子インスパイアドアルゴリズムを開発し、その有効性を実証しました。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2025/06/5501.html

1. はじめに

脳磁図(MEG)は、脳内の神経電流によって生成される磁場を非侵襲的に計測する神経イメージング技術です。逆問題とは、磁場測定値から、電流双極子(局所的な神経活動を表す点電流源)の位置、方向、強度を推定する課題です。既知の電流源からビオ・サバールの法則に基づいて磁場を計算する正問題は、良定義問題であり直感的ですが、逆問題は不良定義問題であり、特にデータが限られている場合やノイズがある場合には、様々な電流源構成が類似の測定磁場を生成する可能性があります。(Fig. 1)

また、一部の高次元ソース空間や反復最適化を伴うソース推定手法は計算コストが高く、リアルタイムな計算が困難です[PA21]。これに対し、深層学習を用いることで計算時間をミリ秒単位まで削減でき、従来手法の限界を克服できます。さらに今回の開発では、モデルのサイズと計算効率を改善するために量子インスパイアド技術であるテンソルネットワーク分解の実装を行いました。
image

2. 手法

2.1 データセットの作成

初期検証では、電流双極子を2次元グリッド(Ex, Ey)上に分布させ、磁場成分(Bx, By, Bz)は、電流双極子の平面に平行で一定の距離をもつ2次元面上での測定を行いました。最大で10個の電流双極子を64×64のグリッド内にランダムに配置し、5万件のデータを生成しました。

2.2 モデル構造

モデルはU-Netベースの構造を用いました。(Fig. 2) 本モデルの入力は測定磁場、出力は電流双極子の予測値です。活性化関数にはtanhを使うことで、双極子強度の正規化と強度範囲の適正化が可能となりました。また、テンソル化により元のモデルの3400万学習可能パラメータから2500万パラメータまで削減しました。
image

2.3 テンソル分解

テンソルネットワークは量子物理や数学分野で開発されたフレームワークで、高次元データの効率的な処理に有用な量子インスパイド技術です。特にCP分解は、畳み込み層の重みテンソルを低ランクで近似し、モデルサイズを大幅に削減できます[YL24]。(Fig. 3) この手法はモバイル端末や組み込みシステムでも展開可能で、計算資源が限られる環境でのリアルタイム処理に有効です。
image

2.4 結果

本モデルは、電流双極子の位置と方向を正確に再現し、強度も許容範囲内で再現可能であることが示されました。(Fig. 4) また、感度の最も低い畳み込み層にCP分解を適用し、パラメータ数を27.32%削減(3400万→2500万)、推論速度は7~8%向上しました。また、通常モデルとテンソル化モデルの磁場予測におけるフロベニウスノルムの差は10⁻⁵未満で、テンソル化モデルの方が精度向上する場合もありました。
image

3. 結論と今後の展望

本研究では、脳磁図データから電流双極子を低コストかつリアルタイムに逆計算する手法として、機械学習とテンソルネットワーク分解の有効性を検証しました。今回は2次元モデルによる検証でしたが、今後は3次元モデルへの拡張と検証が予定されています。 本技術は、BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)の実現に向けて重要な進展となります。脳活動の非侵襲的な計測と、その信号の高精度な解析は、BMI の実現において重要な要素となっており、本研究成果は、ソフトウェア面からその実現に貢献するものです。

参考文献

[LGR+15] Vadim Lebedev, Yaroslav Ganin, Maksim Rakhuba, Ivan Oseledets, and Victor Lempitsky. Speeding-up convolutional neural networks using fine-tuned cp-decomposition, 2015.

[PA21] Dimitrios Pantazis and Amir Adler. Meg source localization via deep learning. Sensors, 21(13), 2021.

[YL24] Chenbin Yang and Huiyi Liu. Stable low-rank cp decomposition for compression of convolutional neural networks based on sensitivity. Applied Sciences, 14(4), 2024.

補足データ

Fig. 5〜7は、本モデルの有効性を補足するデータを示しています。

image
image
image

© 2025, blueqat Inc. All rights reserved