量子コンピュータの世界に飛び込んでから、もう10年が経ちました。
最初は「この技術が世界を変える」と信じて疑わなかったし、
実際に、日々新しい理論やアルゴリズムに触れていると、
確かに“未来を感じる瞬間”がいくつもありました。
2018年には、国の研究所から超伝導量子ビットの開発案件を受けてハードウェアにも挑戦。
量子アニーリングから量子ゲートまで、
アルゴリズムやアプリケーションの開発にも幅広く取り組みました。
金融、化学、材料、自動車、広告──
あらゆる産業で量子を活かせる可能性を探り、
PoC(実証実験)や実アプリを作り続けてきました。
2020年には超伝導の限界が見えたので、ハードをシリコン半導体に切り替えました。
💡 挑戦の10年:量子でできること、そしてできなかったこと
この10年間で、さまざまな業界のトップ企業と一緒に仕事をしてきました。
中には、商業的に成功されたお客さんもいます。
たとえば、量子アニーリングを使った組み合わせ最適化や、
GPUと量子を組み合わせたハイブリッドAIによって、
解析の糸口を掴んだケースもありました。
ただ、そうした成功は“局所的”でした。
多くの業界で共通していたのは、
「量子に興味はあるけど、すぐにお金になるかはわからない」という距離感。
金融や材料開発の分野では確かに理論的な効果が見えるけれど、
実際の導入や運用コストを考えると、
まだ“ROI(投資対効果)”が釣り合わない段階でした。
🧩 量子アプリの現実:技術は進化しても市場はまだ育たない
この10年で作った量子アプリは数え切れません。
- 金融:ポートフォリオ最適化、リスク分析、オプション価格計算
- 化学:分子シミュレーション、触媒探索
- 自動車:経路最適化、サプライチェーン設計
- 広告:ターゲティング最適化
それぞれの分野で、量子技術を活かす余地は確かにありました。
でも──**「儲かるアプリ」にはまだ育っていない。**
試作はできる、技術的には動く、論文も書ける。
けれど、“誰かがそれに継続的にお金を払う”という構造を作るのは、まだ難しい。
量子技術そのものよりも、
むしろ業界のマインドセットと投資判断の壁の方が大きいのかもしれません。
💰 これから:量子を続けながら、ちゃんと儲ける方向を探す
最近は、「研究」や「国策」ではなく、
どうすれば自立して事業として成り立つかを考えるようになりました。
弊社は補助金は活用してませんが、補助金があるときは続けられる。けれど、補助が切れれば売上は下がる。
そんな循環に長くいると、
「これは自分のやりたいことだろうか?」と考えるようになりました。
これからは、量子を軸にしながらも、
きちんと評価できて、すぐに収益化できる領域に集中する。
テクノロジーが目的ではなく、
テクノロジーで“儲かる構造”を作ることをゴールにする。
そんな方向に舵を切っていこうと思っています。
🚀 技術の時代から、構造の時代へ
量子コンピュータは間違いなく未来の技術です。
でも、“未来の技術”をやり続けるには、いまの現実を直視することも必要です。
次の10年は、理想よりも現実、研究よりも実益。
「どうすれば儲かるのか」を真正面から考える10年にします。