論文紹介
The SWAP test and the Hong-Ou-Mandel effect are equivalent
SWAP test についての考察。
SWAP test は一般的に、補助量子ビットとCSWAP操作を用いて2つの量子状態のヒルベルト空間上での内積を求める手法です。
Hong-Ou-Mandel effect (HOM効果)は量子光学において知られる効果です。ビームスプリッタ素子の2入力に1つずつの(区別が不可能な)光子を入力すると、2出力の内いずれか片方からのみ2つの光子が出力されるというものです。双方の出力から1つずつの光子が出力される状態は、量子的な重ね合わせにより打ち消されます。
論文の主題は、HOM効果を詳細に解析することで SWAP test との等価性を見出したことです。
前提として、HOM効果における入力光子をそれぞれ光の波束として見ると、ビームスプリッタの出力における確率分布はその2つの波束の重なり、関数内積によって決まります。これはSWAP testと近い形をしています。
さらに、入力光をある離散的な基底状態の重ね合わせとして表した系においてHOM効果を考え、SWAP testとの等価性を示しています。
ただこの論文で有用な部分はこの先です。
HOM効果においては特に、補助量子ビットが登場しません。ならば、HOM効果と等価であるSWAP testも、補助量子ビットは必須でないはずだと言えます。
よってこの論文では Destructive SWAP test という、補助量子ビットを用いないSWAP testを提案しています。
補助量子ビットの省略により、結果的にCSWAPゲートが不要になり、CNOTゲート、Hゲート、測定結果の古典後処理で置き換えられます。
Destructive SWAP testは量子ビット数と回路の複雑さを抑えられる"地味に便利"な内容で、先日紹介したEQGAN論文で用いられています。
こういった何年も前に提案されたテクニックって、皆さんどうやって引き出してくるんでしょうかね。気になります