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量子コンピュータの基本 - エルミート行列の固有値が実数であることの確認

Tetsuro Tabata

2021/06/07 01:47

#量子計算 #固有値計算

量子コンピュータの基本 - エルミート行列の固有値が実数であることの確認

§ この記事の目的

量子コンピュータ理論の基本、または線形代数の基本である公理「エルミート行列の固有値は実数である」ことについて、具体的に確認します。

§ 命題「エルミート行列の固有値は実数である」の確認

では、さっそく数式を用いて確認します。

行列AAをエルミート行列、列ベクトルXXを固有ベクトル、λ\lambdaを固有値(スカラー値)とすると、固有値・固有ベクトルの関係から、以下のように表すことができます。

AX=λXAX=\lambda X

両辺に左から、XXのエルミート共役行列であるXX^\daggerをかけます。

XAX=XλX=λXX(1)\begin{align} X^\dagger AX &= X^\dagger \lambda X\\ &=\lambda X^\dagger X\quad(式1) \end{align}

両辺のエルミート共役を取ると、

(XAX)=(λXX)(2)(X^\dagger AX)^\dagger = (\lambda X^\dagger X)^\dagger\quad(式2)

以下の公式を使用します。

(AB)=BA(AB)^\dagger = B^\dagger A^\dagger

(式2)を丁寧に展開すると、

((XA)X)=(λ(XX))X(XA)=(XX)λ(3)\begin{align} ((X^\dagger A)X)^\dagger = (\lambda(X^\dagger X))^\dagger\\ X^\dagger(X^\dagger A)^\dagger = (X^\dagger X)^\dagger \lambda^*\quad(式3) \end{align}

(式3)の右辺の記号^*は複素共役の意味です。λ\lambdaはスカラー値なので、エルミート共役を取れない代わりに複素共役を取ります。
よって、(式3)は、

XA(X)=λX(X)XAX=λXXX^\dagger A^\dagger (X^\dagger)^\dagger = \lambda^*X^\dagger (X^\dagger)^\dagger\\ X^\dagger A^\dagger X=\lambda^*X^\dagger X

当然ながら、(X)=X(X^\dagger)^\dagger=Xです。
ここで、AAはエルミート行列なのでA=AA^\dagger = Aを代入すると、

XAX=λXX(4)X^\dagger AX = \lambda^* X^\dagger X\quad(式4)

(式1)と(式4)を比較すると、以下のようになります。

XAX=λXX(1)XAX=λXX(4)X^\dagger AX = \lambda X^\dagger X\quad(式1)\\ X^\dagger AX = \lambda^*X^\dagger X\quad(式4)

これより、以下が導けます。

λ=λ\lambda = \lambda^*

λ\lambdaはスカラー値であるから、上記が成立する条件は、λ\lambdaが実数の場合になります。

よって、命題が真である(正しい)ことが確認できました。

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