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【コラム】なぜこの時期に米国は量子コンピュータのパブリッククラウドをリリースしたのか?物理を離れ始める量子コンピュータアプリ

Yuichiro Minato

2020/10/06 02:47

米国では、IBMによる量子コンピュータの提供に競合するように、アマゾンやマイクロソフトなどがこぞって量子コンピュータクラウドの提供を始めています。それを読み解くには、これまでの流れを把握した上で、今度技術的にどの方向性に向かっているのか?また、日本国内とは異なる米国における傾向や事情を読み解く必要があります。ここでは、そのパブリッククラウドの方向性とアプリケーションにおける傾向を見てみたいと思います。

ハードウェアの流れ

ハードウェアはこれまでIBMやGoogle主体になって開発されてきた超電導方式に対して、今後はイオントラップ方式とシリコン量子ドット方式の2方式が加わる情勢となってきました。

超電導方式はこれまで盛んに開発が進んできました。主な開発企業は、IBMとGoogleとRigettiです。ここにきてIBMは新しいロードマップを発表し、1000量子ビットの現実的な作成計画を発表しました。超電導方式ではIBM社が頭ひとつ抜けている状況で、2021年までサービスを提供できないGoogleはハードウェア開発責任者が辞任していますし、Rigetti社はamazonへの採用はありますが、ハードウェアの性能やツール提供、コミュニティ作成などIBMに技術的に勝てている部分がありません。今後はIBM社の三年ロードマップの実行とともに少しずつ差が開くのか、Google/Rigettiの出方次第というところになるでしょう。

量子コンピュータのハードウェア開発競争は、これまで超電導方式と呼ばれる方式内部で競争が行われてきましたが、2020年からはイオントラップ方式と呼ばれる新しい方式が性能を伸ばしており、第五世代のイオントラップマシンを先日発表したIonQ社は32量子ビット全結合のマシンを発表して、量子体積推定400万を発表しています。この性能は現状の量子体積が64-128程度に対して大幅に性能を伸ばすものになっています。もちろん実機が出るまで少し時間がありますが、基本的にはイオントラップマシンは2020年からの実機提供に対して、性能を既に大きく伸ばしている段階ですので、今後もハードウェアの進展とアプリケーションの充実が期待されます。アプリケーション自体は超電導方式と共通なので過去の資産をそのまま利用できるというのも強みです。

イオントラップ方式がここ数年で期待感を持っていますが、米国やオーストラリアではさらに次の方式となるシリコンを利用した、量子ドットなどが注目され始めています。こちらはインテル社が取り掛かっている方式で有名ですが、超電導方式で弱点と言われる集積化、大規模化に対して期待がもたれるため、最近Googleの超電導量子ビットの責任者がGoogleから移籍したことで話題になっています。量子ドットは電子を閉じ込て計算する方式で、原理検証段階ですが、大規模化を目指して現在急激に世界で注目度が上がっています。日本でも産総研や理研が取り掛かっています。

このようにハードウェアは明確に、超電導>イオントラップ>量子ドットという流れができてきています。

パブリッククラウドで扱われている量子コンピュータの種類を見ると、

アマゾン:イオントラップ 、超電導アニーリング、超電導ゲート

マイクロソフト:イオントラップx2、超電導ゲート

となっています。このように、多くのハードウェアが揃ってきたため、これまで自社開発が主体だった量子ハードは、パブリッククラウド上で、それぞれの利点を評価しながら生き残るハードウェアがパブリッククラウドを通じて提供されているという状況になってきました。

ソフトウェアの流れ

一方ソフトウェアに関しても新しい流れができてきています。これまで2019年までは主に量子化学計算や組合せ最適化問題が中心でした。これらはハミルトニアンと呼ばれる行列の形で問題を定式化してそれを量子コンピュータで解きます。量子アニーリングもこれに含まれます。これらはまず定式化を行い、その式を効率的に量子コンピュータの機能の範囲内で解く必要があります。固有値と呼ばれる値を求めるのが目的でしたが、方法は異なれど、基本的には式を作ってそれを解くという単純な作業がメインでした。

2020年以降パブリッククラウドで量子コンピュータが注目され始めている理由の一つに、今後は量子コンピュータのソフトウェアの多様化があります。これまでは、ソフトウェアは固有値計算が主体でしたが、量子振幅推定などのハミルトニアンを利用しないタイプ。また、量子機械学習のようにデータからモデルを利用して学習するタイプなど、これまでのハミルトニアンを使わないアプリケーションのモデルが増えてきました。

これまでは主に材料メーカーや製造業、金融計算などが主流だった量子アプリケーションは、2020年以降は急激に範囲を広げ、固有値計算、微分積分、各種機械学習と大幅に応用範囲が広がることになりそうで、すでにアルゴリムなどの実装が始まっています。

このようにハードの広がりだけではなく、ソフトの広がりも2020年は大きく進んでいます。

ハードとソフトは両輪

なぜ、量子コンピュータは固有値計算を飛び出して多様なアプリケーション開発が加速していったのでしょうか?それは、イオントラップ方式でこれまで計算があまりされてこなかった振幅推定などの計算が動くようになってきたこともあります。特定のハードウェアでアプリケーションを動かすには、そのハードウェアの特性が大きく影響します。一方で新しいハードウェアが出てくると別の側面での特徴が際立つことで、新しいアプリケーションが動くようになり、新しい応用が生まれます。

これまでハードウェアがかなり限られていた状況から、ハードウェアの種類が増えたことで新しいアプリケーションの研究開発が加速した側面からパブリッククラウドでの提供が加速しています。

多様化する人材

一方教育面でもかなり量子コンピュータの利用は進んでおり、新しい人材として量子コンピュータを使いこなす人材が増えてきました。これまで物理の人が中心となって開発したきたアプリケーションも多様化し、ハミルトニアンベースのもの以外のものも増えてきたため、数学人材やコンピュータサイエンス人材など多くの他分野の人材の参入が相次いでいます。今後もこの動きは加速するものと思われ、使いやすいハードウェアとともに、ますますアプリは物理を離れると思われます。

今後はより人材面も層が厚くなるので競争も激しくなりますが、どんどん精進していきましょう。

以上です!

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