ついにawsで量子コンピュータが公開されました。これによってどのようになっていくのか、これまでの知見をもとに解説してみます。今後どうなるのか心配している人もいると思うので、参考にしてください。
awsは実験、研究用と言っている
今回公開されたハードウェアは全てベンチャー企業によるものです。
D-Wave
IonQ
Rigetti
GoogleやIBMのマシンと比べると多少見劣りがします。チュートリアルや技術力も多少劣りますので、ニュースに出ているような計算ができるようになるにはまだ数年かかると思います。
チュートリアルもまだまだ
IBMのチュートリアルはかなり進んでいますが、awsはまだ基本的なチュートリアルに限られています。awsのパートナー企業も少なめです。今後はIBMのqiskitチュートリアルや各種論文の実装によってユーザーから優秀なチュートリアルが出ることと思います。
マシンやシミュレータが混じってて区別がつきにくい
まだユーザーは使い始めてみて、D-WaveやIonQ/Rigettiとの方式の違い、IonQ/Rigettiとの接続の違いなどマシンやシミュレータの違いを使い分けるのに少し時間がかかるでしょう。これらの区別がつくようになってやっと使えるアプリケーションの探索ができます。
D-Waveは2048量子ビットのキメラ接続で1量子ビットとの接続が最大8、ユニットセルの概念や量子ビットの接続、最適化モードとサンプリングモードの違いなどを把握する必要があります。
Rigettiは標準的な量子ゲートですが、量子ビット数が30、最大接続が3なので接続数に注意が必要です。
IonQは全結合11量子ビット、ゲートセットがXXなどが導入され、新しい可能性を広げるでしょう。
awsは最後のIonQに出資をしており、IonQの社長もawsの事業責任者なので、親和性が高いと思います。
マイクロソフトも参戦
awsの公開が先となりましたが、microsoftも準備をしています。honeywell/ionq/qciですが、qciはあまり実機ができているというニュースがありませんが、honeywellとionqは稼働中なので、そちらが先にリリースされるかもしれません。Azure Quantumというブランドでawsの公開に合わせて近日リリースされる予定と思います。
インテル
インテルは超電導と量子ドットと呼ばれるタイプを開発しています。まだ表には出てません。量子ドットはまだゲート操作なども原理検証段階なので5-10年くらいは表舞台には出ないかもしれませんが、それでも数年後に別の実機が待ち構えているのは楽しみです。量子ドットはシリコンを使い、集積かと量子ビット数の増加に優位性があると言われています。
他のハードベンチャー
米国、欧州ではAQTやPsiQなどイオントラップやフォトニクスマシンがベンチャーで開発されています。そのた量子アニーリングや量子ゲートでたくさんの企業が開発に参入しており、今後ますますハードウェアが発展していくと思われます。
価格は下がる
今後量子コンピュータの価格はどんどん下がっていくと思われます。現在月額数十まん、年間数百マンから数千マン払っているところが従量課金で今回awsで50円程度から始められることになり、azure quantumなどの競合と併せてどんどん値段が下がると思われます。
アプリケーションの学習方法
基本的にどのようなアプリケーションをやりたいかによりますが、最適化計算もしくは機械学習がとっつきやすいかと思います。弊社では離散最適化よりも量子機械学習の応用の方が実用化に近いと考えます。
awsでの活用
awsではローカルでbraketSDKを動かして、
1、ローカルシミュレータを活用
2、クラウドの実機を活用
という手順になります。予算に余裕がある人はsagemakerを活用することで、権限を気にしなくて良くなるので、それもおすすめです。
チュートリアルはいくつかありますが、汎用計算とハイブリッド計算があります。学習用の汎用計算は比較的金額が小さくすみますが、ハイブリッド計算は何度も繰り返し計算する必要があり、コストがかなり嵩みます。なので、企業での活用のハイブリッド計算は安くなったと言っても実機で行う際には予算の確保を数百万円単位でお勧めします。
今後
azureの公開とともに量子デバイスの価格競争が起き、アプリケーションは機械学習中心での発展が進むと思います。特にハイブリッドには古典計算、機械学習が欠かせませんので、既存計算機との並列で高度に量子計算を実行しましょう!
では、量子の御加護を!