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2021年ローンチのGoogleの量子コンピュータGCP戦略を読み解く

Yuichiro Minato

2020/10/04 04:50

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先日はIBM社の量子コンピュータ戦略を見ました。今回はGoogleの戦略を見てみたいと思います。結論から言うと現時点でのGoogleの戦略はちょっと控えめです。今後に期待したいので、その辺りを見てみましょう。

あまり大きなアナウンスをしていない

Google社は2021年にGCPで量子コンピュータを提供するという割りにあまりニュースを聞きません。実際彼らも公式にあまり喋っておらず、こっそりと情報を出しています。2020/9/27現時点で一番わかりやすいニュースは、

https://www.youtube.com/watch?v=crpQexwT2HU

こちらのyoutube動画になっています。早速みてみましょう。

GCPでは、Quantum Engine APIを準備し、GCPからAPIを通じてsycamoreプロセッサを利用できるというものになっています。利用するツールはCirqと呼ばれる、以前から公開されているものです。

用途は研究者向けのNISQアルゴリズム探求

Google自体はかなり良質なNISQアルゴリズムの論文を発表しています。2020年初頭に出た、量子化学計算の問題とQAOAと呼ばれる組合せ最適化問題の論文はかなり良くかけています(偉そうに言えませんが)。

今回の計画の中では研究者向けにNISQ探索という目的がはっきりと書かれています。ビジネス向けに実用的に何かをやるというのが現時点でのNISQマシンではほぼ無理なので、12量子ビットのハートリーフォック、23量子ビットの量子断熱計算など、実用面から言うと到底及ばない計算をとりあえず研究として深めていくと言うことでしょう。

まだ未発表の論文が3種類控えていると言うことなので、それを合わせて、20-25量子ビット前後の良質な量子コンピュータが一番研究を促進しそうです。

このサイズのマシンは手元のノートPCで充分シミュレートできるので、まだまだ実用には時間がかかるでしょう。

量子コンピュータデータセンター構築中

動画内では、実際にマシンを複数台置けるようなデータセンターの構築中の写真が見れます。超電導マシンを配置して、データセンターのように複数を設置という形での運用になるでしょう。

チップは2種類、23量子ビットと51量子ビット

提供される量子チップは2種類。23量子ビットのrainbowと51量子ビットのraindowチップです。量子ビットの配置は2次元格子です。IBMの取った戦略とは全く違う配置になっています。

チップ自体はエラー率が公表されており、かなり低いゲート操作が実現できています。実際には各種の質の高い論文は23量子ビットのマシンで実行されていることが資料からわかるので、サイズの大きいマシンよりも20-30量子ビット程度のマシンが現時点で一番性能が良いのが見て取れます。それはIBMの傾向とも一致します。

51量子ビットマシンは元々53量子ビットマシンだったのでしょうが、右側の量子ビットが2つ欠けているのが見て取れて、途中で調子が悪くなったのでしょう。Rigetti社も以前、量子ビットが途中で壊れて量子ビット数が減ったことがありました。D-Wave社でもよくおきます。

上記で見ると23量子ビットが一番使いやすそうです。QAOAなどは問題によってはそこまで計算精度が必要ないので量子ビットをたくさん使えそうですが、23量子ビットマシンでも量子化学計算は12量子ビットしか利用できていない現状からするとしばらくは23量子ビットマシンでも研究は進められそうに見えます。

ツールはCirq、APIはQuantum Engine API

GoogleのGCPで彼らの量子コンピュータを利用するにはCirqという以前から提供されているツールと、APIとして新規に搭載予定のQuantum Engine APIが必要になります。

IBMがかなりアグレッシブにコミュニティを作り、APIの提供やQiskitツールの提供が進んでいるのとは対照的に、Googleは比較的活動が控えめです。

今回のGCPの提供もよほど探さないと情報がyoutubeにこっそり上がっているくらいな上、実はGoogleの量子コンピュータ操作ようのアプリケーションであるCirqはGoogle非公式となっています!

https://github.com/quantumlib/Cirq

"Cirq is not an official Google product. Copyright 2019 The Cirq Developers"

Cirqのgithubの一番下には、ちゃっかり is not an officialと書いてあるので、非公式となっています。

なぜ控えめなのか

一番大きな原因は、Googleのハードウェア開発責任者が昨年2019年に辞任しているということでしょう。

https://www.forbes.com/sites/moorinsights/2020/04/30/googles-top-quantum-scientist-explains-in-detail-why-he-resigned/#697bcbf36983

かなり皮肉的にgoogleを批判しているようにも見えるので、色々蟠りがあるのかもしれません。John Martinis抜きでハードウェアを今後発展させて開発をするのかどうかを含めて動向が気になります。

ハードウェア開発責任者が辞任、提供ツールのCirqは非公式、AmazonやMicrosoftが2020年にサービス開始しているのに対して、2021年に向けて準備中と色々計画が後手に回っています。

また、チップ提供もIBMが2021年に127量子ビットのEagleチップ。2023年には1000量子ビットを発表しているのに対して、23と51の提供をアナウンスという点にも、ちょっと物足りなさを感じます。

今後に期待

とは言ってもGoogleです。これまでの状況を牽引して積極的に相場を作ってきました。また、アプリケーション利用としての論文の質もピカイチです。なので、今後計画や体制が整ってきたりしたときにどれだけ、新しいことを発信できるのか?それともやはりNISQアルゴリズムの性能が思ったよりもよくなかったのであまり力を入れないのかは、今後の見所と期待なのではないでしょうか。

現状では、NISQはあまり利益を生まない上、Googleはあまり積極的に米国の量子コンピュータ予算をとりに行っていません。戦略的に米国の国予算で進めている他社との違いも明確ですので、今後の展開に期待です。

以上です。

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