こんにちは。量子コンピュータ業界激務&競争激化で体力を奪われています。元気に量子コンピュータやってますか?今日は2021年2月1日現在の量子コンピュータの最前線事情を自社の視点で語ってみようと思います。
blueqat?
IBMQネットワークやAmazon社パートナーとして名を連ねている日本の量子コンピュータソフトウェアベンチャーです。現在は量子コンピュータ向けのソフトウェアを開発するためのSDKやそれを利用するクラウドシステムの開発提供をしています。元々はMDRという社名でしたが、わかりやすくするために(ブルーキャット)に社名変更しました。
https://aws.amazon.com/jp/quantum-solutions-lab/
ズバリどうなる?量子コンピュータ
弊社が毎日仕事をしていて思うのは、量子コンピュータは、Amazon社やMicrosoft社などのパブリッククラウドサービスとは切っても切れない関係にあるということです。弊社はAmazon社のプラットフォームを主に利用していますが、量子コンピュータは基本的には遠方においてあり、必ずインターネットに接続して利用する必要があります。そのため、ローカルでは実行できないため必ずクラウドを利用します。パブリッククラウドサービスのシェア一位とシェア二位のAmazon社、Microsoft社の影響は今後急激に拡大すると思われます。API関連やサービスの質、実機を動かすためのツールがすごい勢いで発達しています。複数のマシンが選べるというのもかなり大きな利点です。
また、中国のHuaweiやAlibaba、そして本源量子などの技術力やツール群が急激にレベルアップしており、今年の春から来年にかけて大量のサービスや製品のリリースが中国から始まります。利用するツール群も、pythonからjuliaをベースに、機械学習や量子力学分野の最先端を採用し、クラウドサービスもalibabaやhuaweiのクラウドを利用した大規模サービスが大きく発展しているため、米国のサービスに対抗する形で大きく発展するでしょう。
2021年に過渡期を迎えるもう一つの理由が、量子ゲートのNISQマシンの第一世代の評価がある程度終わり、次の第二世代のマシンや理論に移行しつつあるという状況です。日本では量子アニーリングが行われており、一部の企業は量子ゲートへ移行しつつありますが、すでに最先端ではこれから企業が取り掛かろうとしているNISQの評価をある程度終えて、次の段階に入っています。もちろん量子古典ハイブリッド計算も重要ですが、次のステップとして量子ハードウェアの超伝導とイオントラップによる大規模化、量子誤り訂正の本格的な研究開発、ソフトウェアの多様化と量子機械学習の大幅な拡大になります。
ソフトウェアは多様化、教育が進む
量子ソフトウェアは急激に多様化が進んでいます。昨年2020年にawsがサービスを開始して以来、誰でも安価に実機が利用できるようになりました。それに応じて最先端技術業界は大幅に人口増加が起こり、ハミルトニアンベースの組合せ最適化や量子化学計算以外の分野でも金融におけるモンテカルロ計算にJPモルガンやゴールドマンサックスがチームを組んだり、数値積分やナビエストークスへの利用など、量子振幅増幅アルゴリズムなどの汎用アルゴリズムに実機で取り掛かるチームも増えてきました。イオントラップマシンはエラーが少なく、一部汎用アルゴリズムが動くというのが大きいと思います。
ソフトウェアの用途が目にみえるように広がると参入も広がります。ただ、量子コンピュータは理論を学ぶのになかなか大変です。教育や調査用途での参入が広がっており、弊社でもクラウドサービスのもうしこみが増えています。カリキュラムに応じてですが、量子コンピュータを学ぶには1-3年ほどかかります。すでに初期の教育を終えている企業も増えているので、みた感じ大きく差がついているように見えます。
ハードウェアも発展
今後ハードウェアもイオントラップと超伝導が米国と中国の競争によって大きく発展していくでしょう。NISQアルゴリズムの活用のほか、誤り訂正もかなり進むので、進捗も重要です。弊社はこの状況でソフトウェア中心の運用にシフトしていますので、ハードウェアはIBM、Amazon、Microsoft社についていくという方針にしています。
ソフトウェアは量子機械学習
世界的な量子コンピュータの発展とともに、各社どの部分に量子コンピュータを利用しようかという目標が大事になってきています。もちろんハミルトニアンベースで固有値問題を解く組合せ最適化や量子化学も大事ですが、今一番人気があるのが、量子機械学習や量子ディープラーニングです。自然言語処理や画像認識モデルを中心に、AIの活用を量子もつれを利用して進めることで企業の技術力を上げるという流れがとても強くなっています。弊社でもハミルトニアンベースの量子アニーリングや量子化学計算、モンテカルロベースの量子振幅推定や数値積分などは依頼があったらやりますが、基本的には大きな流れとなる量子機械学習をお勧めしています。まだ量子コンピュータでの機械学習がどれだけパフォーマンスを出せるかというのは未知数なところがありますが、まさに過渡期ですので、理論面、そして実機を利用した基本的なパフォーマンスチェックを中心に大きく理論の発展と利用が進むと思われますので、ぜひ取り掛かってみてください。
まとめ
まとめると、NISQの量子古典ハイブリッド計算は引き続き研究開発されますが、基本的にはそれに量子誤り訂正理論と、それに応じてハイブリッドと汎用量子アルゴリズムの中間が大きく研究開発され、また、アプリケーションも量子位相推定タイプや量子振幅増幅タイプの他に実用的な利用が期待される量子機械学習がメインになると思います。