面白そうなタイトルだったので、移動時間に読んでみました。最初にいっておきますと4ノードのトイモデルでサイズも非常に小さく結果も芳しくないですが、アプローチが面白い論文でした。
論文
Experimental evaluation of quantum Bayesian networks on IBM QX hardware
Sima E. Borujeni, Nam H. Nguyen, Saideep Nannapaneni, Elizabeth C. Behrman, James E. Steck
https://arxiv.org/abs/2005.12474
概要
因果関係を条件付確率で表現するベイジアンネットワークモデルを、量子コンピュータの確率振幅と対応させて実装するようなモデルで、金利や市場から、石油市場などを組み合わせて株価の因果関係をIBMマシンで実装してみたという論文です。
問題設定
非常にシンプルな問題設定で、IRが金利、SMが株式市場、SPが株価、右側のOIは石油市場です。各ノードは01かのバイナリ値を取りますが、その確率が前のノードの条件付確率で決まっていて、下記の表はその対応が見えます。最初のノードはIRとOIはそれぞれ01の出る確率がきまっています。
引用:https://arxiv.org/pdf/2005.12474.pdf
量子回路での解法
解法はシンプルで、確率をRYゲートを使って実装します。また、条件付確率はCRYゲートで実装することで、0と1の場合でのCRYゲートの角度を調整できます。
引用:https://arxiv.org/pdf/2005.12474.pdf
前のノードが0の場合の条件付確率を実現したいわけですが、0だとCRYゲートは反応しないので、わざとXをかけて1にしてからCRYを作用させ、Xで元に戻しています。また、1の場合には何もする必要がないので、CRYをそのまま適用すればいいというわけになります。
全体的な回路としては、下記のようになり、RYをU3で表現したりとCCXとの組み合わせで実現したりしています。最後のほうはちょっと回路が複雑になっているように見えますが、条件付確率を一つ一つ実装しているように見えます。回路構造としては素直に実装しててあまり工夫はありませんが、ベイジアンネットワークってこうやって実装するんだというのはなんとなくわかった気になります。
引用:https://arxiv.org/pdf/2005.12474.pdf
論文の見どころは、ベイジアンネットワークの条件付確率をRY+CRYで実装しているところかと思います。実際にはやはりエラーでかなり苦労していたそうで、結論は誤り訂正が必要となっていたので、そのままでしばらく使えなさそうかなと思いました。以上です。