はじめに
量子コンピュータをやっている人はQuantum Algorithm Zooというサイトを知っている人もいるでしょう。最近なぜかそこに掲載されました。
一介のベンチャー企業をやってるおっさんが、論文を書いてQuantum Algorithm Zooに掲載されるまでを記録に残しておこうと思います。
簡単な読み物くらいでみてみてください。
Quantum Algorithm Zoo
量子コンピュータのアルゴリズムが掲載されています。僕は前に一度読んだことがあるくらいであまりそこまで興味を持ったことがないというのが本音です。。。
https://quantumalgorithmzoo.org/
いろんなアルゴリズムが網羅的になっています。結構量子コンピュータのアルゴリズムって似てるものが多いんだなという印象くらいです。
掲載の経緯
正直わかりません。。。特徴は論文のオリジナリティがちょっと高いのと、きちんと査読誌に載っているという感じでしょうか?それかもしかしたら論文の査読担当者にその手に近い人がいたのかもしれません。
どちらにしろ、バッチリ名前が載っています。。。
正直探すのは難しくて、リファレンスの番号で406をみると、載ってました。。。
406
Andriyan Bayo Suksmono and Yuichiro Minato
Finding Hadamard matrices by a quantum annealing machine
Scientific Reports 9:14380, 2019.
[arXiv:1902.07890]
Andriyan先生はインドネシアのバンドン工科大学の先生で、東大のご出身なので以前のAQC、量子断熱会議で知り合ってアルゴリズムの開発を始めました。
https://www.stei.itb.ac.id/file/stei-script/andriyan.html
インドネシアは経済発展めざましいですし、すごい勢いあります。
掲載箇所
何せ由緒正しいサイトですので、一人一人が大々的に載るという感じではありません。。。
Algorithm: Adiabatic Algorithms
b>Speedup: Unknown
b>Description: (中略),
machine learning [192, 195],
finding Hadamard matrices [406], <<<<<<これ!
and graph problems [193, 194]. Some quantum simulation algorithms also use adiabatic state preparation.
しかし、なぜか錚々たる機械学習とグラフ問題の間に唐突に我々のアルゴリズムが出てきます。もうquantum algorithm zooに載ってしまった以上頑張るしかありません。
論文自体
論文自体は数年前にいろいろあり、書き始めて、Google+NASAのNASA Amesなどでも引き合いありましたが、結局自分たちで書きました。マシン自体はカナダのD-Waveマシンを使っています。僕は研究者ではなく、ビジネスマンなので論文を書いたのは初めてです。
arxivは、
Finding Hadamard matrices by a quantum annealing machine
https://arxiv.org/abs/1902.07890
で、結局最近NatureのScientific Reportsでも載ってます、
https://www.nature.com/articles/s41598-019-50473-w
内容は、結構壮大で、アダマール行列という行列の大きいサイズのものは見つかっていないので、それをイジング計算で求めようというものです。アダマール行列は量子コンピュータのゲート計算にも登場するので興味ある方は見てみてください。正直当時はまだゲート計算したことなかったので、名前も知りませんでした。
結局いろんなテクを駆使して、理論を確立し、いろいろ掲載に至るという経緯でした。
オリジナリティが高く、応用範囲が広い
今回の論文で一つだけポイントがあるとすれば、現在の量子コンピュータのアルゴリズムやアプリケーションの流れとして企業の応用だったり、機械学習だったりとトレンドを追いやすいものが多い中で、かなり基礎的な内容になっていて、お洒落なアプリが多い中で、かなり無骨な感じの理論になっています。
その分オリジナリティがとても高く、人類が解けていない問題にチャレンジしているという点は珍しいのではないでしょうか。また、これまで解かれていない問題な分、解ければ将来的なインパクトも大きいので応用範囲が広く、セキュリティや産業にも応用が効く基礎技術の塊みたいなものになっています。
ベンチャーで収益を取るのか基礎技術を作るのか
正直儲かるものではないどころか、逆に金も時間もかかるので、ベンチャー企業としては意味があるかはわかりませんが、学術的、将来的な成果につながる基礎技術として貢献ができたことは個人的には嬉しく思います。手間と時間はめちゃくちゃかかるし、成果として認められるかどうかなんていうのは全く見込みがなかったので、誠実にやっていれば何かしら活用も見出されるのだなぁといい励みになりました。
今後
多少掲載されてやる気出たので、より量子コンピュータでさらに効率的に解けそうなアイデアが出てきましたので、早速次につながるように新しいアイデアをシェアしているところです。共著論文の場合には二人三脚なので、アイデアと理論をシェアしながら進捗に合わせて進めたいと思います。
以上です。