1. はじめに
日本のAIや量子業界は長らく「ソフトウェア受託」が中心でした。雇用を増やし、人が稼働して売上を立てるモデルは、シンプルで収益性も高く、17年にわたって私自身も取り組んできました。
しかし半導体を作り、量子コンピュータを社会インフラとして展開するには、受託からスケールビジネスへの転換が不可欠です。
2. 受託とインフラ(クラウド型)の違い
雇用と資産
- 受託:雇用で人を増やすほど売上が直接伸びる
- インフラ:人の稼働よりも**固定資産(設備・クラウド基盤)**が主役。資産が仕事をし、人の比重は相対的に小さい
売上と単価
- 受託:案件単位で金額が大きく動く
- インフラ:単価は小さく、立ち上げ期は売上が受託より落ちるが、スケールすれば指数的に伸びる
広がり方
- 受託:営業・紹介などで案件を一つひとつ広げる
- インフラ:サービスはすでに広まっている市場に「うまく乗る」ことが重要
3. スケール時代の人員構成の変化
受託では、
- 開発者を中心に
- プロジェクト単位で増減
が基本でした。
一方、インフラやクラウドでは、
- 運用・監視・サポートが継続的に必要
- 営業やCS(カスタマーサクセス)など顧客接点も拡大
- 少数精鋭で開発しつつ、継続的に回すチーム編成が重要
👉 この人員構成の変化をどう設計し、遂行していくかが、今後の自社の腕の見せ所です。
4. 固定資産とキャッシュフローの設計
インフラ事業では、サーバ・冷凍機・データセンター設備など、固定資産を自社で持つか借りるかが経営上の大きな決断になります。
- 固定資産は償却に時間がかかる
- 一方で資産が「稼働率」に応じて売上を生む
- 設備投資の設計と、実ビジネスの成長カーブを一致させることが極めて重要
受託では案件単位で入金されるため比較的シンプルでしたが、インフラでは償却スケジュールとキャッシュフローをどう設計するかが成否を分けます。
5. まとめ ― 次の挑戦へ
受託は「人が稼ぎ、案件ごとに大きな売上を立てる」モデルです。一方、インフラやクラウドは「資産が稼ぎ、スケールすることで大きく伸びる」モデルです。
- 雇用と資産の役割が逆転
- 単価は小さいが、スケールすれば市場全体を取れる
- 固定資産とキャッシュフロー設計が成功の鍵
私自身、受託を辞め、インフラ事業に挑戦する決断をしました。今後は、事業計画と資本設計を徹底しながら、量子インフラのスケールを実現していくことを目指します。