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[2021年7月26日過去記事]2億資金調達してから二年、結構量子コンピュータ頑張った結果

Yuichiro Minato

2021/10/02 14:39

はじめに

2008年に起業してからコツコツやっていましたが、2014年くらいから量子コンピュータの研究開発をがんばりました。資金調達もしてある程度技術に目処がついたのと、若者から起業したいという相談をよくもらうので、まとめておきます。

経営は大事

簡単にいうとベンチャーをやろうとしたら技術よりもキャッシュが大事です。なので、財務や経営感覚がついてから技術をつけないと結構大変と思います。特に1年目は慣れない事務に忙殺されますし、二年目以降はキャッシュが厳しくなります。

あとは、最初は経営に夢見て舞い上がりがちなので、その気持ちがおさまって厳しさが一通り身についたところからが本番です。

調達の前に譲渡

2008年から10年くらいはコツコツ会社をやっていた上、そんなに頑張るタイプでもなかったのですが、たまたま2014年からやっていた量子コンピュータのニュースが巷で新聞に載るようになってから、周辺の投資家の人たちがそろそろやったほうがいいんじゃないかということで、半ば自分の意思とは違うところで周りが盛り上がり、株式譲渡を通じて、本格的に量子コンピュータをやることに。それまではウェブデザインやシステム開発をコツコツしていました。

起業して5年して利益も出て、時間も自由だったので、結構だらだら慣れてた時期なので毎日昼寝してほとんど仕事せずに収入があったので、楽しかったのですが、周りから督促されて四年頑張れと言われました。2018年くらいでしょうか。たまたま総務省の異能vationに受かって、LAのGoogleに会議で出張行ったところで知り合ったNASAの人から、たまたま投資家の人と一緒に食事してた時に、メールもらったのが転換点かもしれません。

寝てても儲かるくらいの技術は必要

正直毎日家で寝てても家族4人を十分生活させられるくらいの経営能力は必須だと思いました。そうじゃないとさらにそっから量子コンピュータなんていうのはちょっときついです。

税理関連、財務諸表一式、キャッシュフローあたりが数字をぱっと見て感覚でどうかっていうのが瞬時に判断できるくらいは必要です。特に、事業のピボットやその他行き詰まりそうになったら色々回避しないといけないので修羅場は沢山潜っておいた方がいいです。今となっては絶対にもう嫌ですが、そういうもう経験したくないことを体が無意識に覚えている気がします。

よく自画自賛する起業家いますが、僕は思い出したくないくらい大変だった気がするので、何も思い出せないです。体が条件反射で嫌なことを避ける感じです。周囲の人には起業なんてするもんじゃないと常に言っています。

経営は苦手ですが、最低限の生き延びるためのスキルは必須と思います。

収入はそんなに必要ない

事業をやっていると沢山お金を使うことに抵抗感が出ます。もちろん開発しないといけないことにはお金をかけますが、キャッシュフローを優先すると、派手なことはしない方がいいです。結果として技術や成果が出てればお金はついてきますので。

個人の収入も社会保険や税金などを考えると、会社の利益を圧迫しますし、給料は上げすぎない方がいいというのが自分の方針です。会社には社会保険ではさらに負担が増えますし、見えないコストは注意が必要です。

1000万円くらいまでの給料が幸せに暮らせます。それ以上増やしてもあんまりいいことないです。会社がピンチになることもあるので、そうした事業をサポートするような個人の資産は別途に必要な気がしますが、それはもちょい会社が大きくなるか、サポートしてくれる企業を探した方が早い気がします。

技術では稼げない

技術では結局稼げないということがわかりました。それを有用にお金に変える出口が必要です。BtoBにしろ、相手の企業の担当者が理解してもらう、またそれを事業計画として相手企業の中できちんと揉んでもらわないとマネタイズできません。

また、BtoCなどは、そもそもそんな高度な技術は理解してもらえないので、うまく使う必要がありますが、量子コンピュータではtoCに活用できるほどの成果が出ません。

むしろtoBでも大して成果が出るほどのものではありませんでした。

三年前はもっと盛り上がってた

三年前はgoogleもIBMもこれからという感じで盛り上がっていましたが、量子超越にしろ、実アプリケーションにしろそこまで性能が高くないということがだんだんわかり、激動の三年の中心で開発ができて面白かったですが、結果として実用化はお預けという感じで、これから少しずつ死の谷に向かって地道に実用化に耐えられる企業が残ると思います。

量子超越もビジネストーク

量子超越も1万年かかるのが200秒とありますが、結局alibabaやIBMが反論を出して、よりいいアルゴリズムを使うと20日とか、2日半とかでできると出てきましたし、既存技術でも専用チップなどを使って、最適化すればもしかしたら抜き返すことができてしまうかもしれません。研究というよりも民間がやって民間が反論してるので、ビジネストークに近いので今後の発展を期待したいです。

アルゴリズムは多少の発展があった

アルゴリズム自体で大きな進捗は、これまで理想的な量子コンピュータに対するアルゴリズムが考えられていたのが、実際のマシン上で動くものが考えられている点です。

細かいテクニックがいくつか出てきたので、それは小さいですが重要な進捗かと思います。

論文で大きな成果強調はほぼシミュレータ

ただ、実機でGoogleマシンで量子化学で12量子ビット、量子断熱で17程度が実用的です。世界最高水準で多数の著者を集めても現在はその程度の性能です。12,17は既存のコンピュータで十分計算できる範囲です。

論文で新しい理論提唱する場合は大体がシミュレータと呼ばれる既存コンピュータを使うので、その点でも既存コンピュータを全然超えていないことになります。

みんなが期待するのはシミュレータではなく、実機のコンピュータだと思いますので、その点でもっとハードウェアに投資をするべきで、シミュレータでは誰も納得してくれません。

任意回転に課題がある

量子古典ハイブリッド計算は任意回転角を使いますが、そんなに精度のいい任意回転制御ができているのかがよくわかりません。量子ビット数、エラー、任意回転精度など多角的に調べる必要があります。

期待値計算に課題がある

量子コンピュータでは期待値を計算します。これは量子ビットが増えるごとに指数で期待値を計算するのは難しくなっていきます。ざっと1量子ビット増えると二倍で性能が必要になります。実機で12とか17量子ビットだと、そっから1量子ビット増えるごとに性能が2倍必要となると、量子ビットが増えるごとに指数で難しくなっていくということになります。

ハイブリッドにも問題が

ハイブリッド計算と言っても、実質的に計算しているのは古典コンピュータが全ての最適化計算をしています。これでは量子コンピュータ使っても使わなくても同じなので、ハイブリッドの使い方を変えないと、そもそも無意味だと思いました。。。

量子ビット数から質へ

量子ビット数の競争は2018年と2019年がピークでした。Googleは72から53へ。IBMは53から28へ減らして質を確保し始めています。今後はアプリケーション&質を求める時代になりそうです。

アプリケーションの実用化は雰囲気

量子化学にしろ量子金融にしろ、実態は実用性はなく、雰囲気でできるんじゃないかという程度で本当に高速化されるかどうかが実はわかっていません。一通りのアプリケーションをVQEからQAOAからQMLまでやりましたが、課題が多すぎて実用化は厳しいです。

再現性の問題

実用化で再現性も課題になります。特にエラー訂正ないので、毎回計算結果にばらつきがあり、安定した事業計画や研究計画は難しいでしょう。実用化に関しては機械学習含めて、再現性の確保は結構大きな課題です。

いいマシンは手に入らない

数年前から最新のマシンがあって性能が高いマシンがあるという話を聞いて、なかなかさわれませんでした。交渉したのですが、海外には出せないということで、結局いいマシンがあってもなかなか外には出ないというのがあります。自分が担当していたマシンの場合にも輸出規制や外為法の関係でハイパフォーマンスの量子マシンは公開できなかったので、事業化には誰かが利益を取った後にしかマシンを手に入れることができないという現実があります。

結局コツコツやるしか

結局夢のマシンまではまだまだ時間がかかるというのがこの三年のみんなの総意ではないでしょうか。

実用化

実用化というのは計算ができるということではありません。事業の内部でその計算がどのくらい事業に寄与して、どのくらいの予算をかければどれくらいが「戻ってくる」かが重要で、計算ができた、そのマシンが安く手に入る、その事業にどれくらいの利益をもたらすかを客観的に判断するとなると、古典機械学習ですら導入が遅れていて、量子コンピュータがすぐに浸透する気配はありません。

国内で研究開発

国内ハードをとにかく作るということ、ソフトウェアは全世界で活躍するという二重の戦略が必要です。

起業に戻ると

元々量子コンピュータのチップは資金調達前の自費で開発をしました。資金調達をしてからは、右も左も分からない状態でSDKを作り、チームを作り、論文を出し、ユーザーをたくさん集めてあらゆるアプリケーションを研究し、システムを開発しました。

結果として得られたのは技術だけではどうにもならないということです。今後は教訓として、それらの技術を応用してマネタイズに集中する三年となりそうです。

以上です。

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