どうも夏バテしたおじさんです。世の中にはすごい人たちがいて、弊社も何とか発展に寄与したいのですが、まだまだ実力がついておらずそこまで至っていません。そんな中、量子コンピュータの発展に寄与しているソフトウェア面での発明・発見を(個人的趣味で)いくつか見てみたいと思います。
1,VQE(量子化学 / 2013)
誰もが認めるNISQの立役者です。固有値計算といえば量子位相推定という固定概念をなくし、量子古典ハイブリッド計算を確立したアルゴリズムです。どうでもいい豆知識は、提案時の名前はQVEでした。
初出は2013年のこちら
A variational eigenvalue solver on a photonic quantum processor
https://arxiv.org/abs/1304.3061
2,QAOA mixer(組合せ最適化 / 2017)
QAOA自体はVQEからの派生で出てきて、それ自体もすごいですが、それよりこちら、新しい風を巻き起こしたmixerテクニック。それまでは横磁場が定番だったのが、mixerの登場によって、量子もつれを併用するmixerの導入で、組合せ最適化問題の制約調整変数不要のテクが生まれ大きな課題が一つ解決されました。
2017年のこちら
From the Quantum Approximate Optimization Algorithm to a Quantum Alternating Operator Ansatz
https://arxiv.org/abs/1709.03489
3,パラメータシフト法(機械学習 / 2018)
量子古典ハイブリッド計算の最適化計算に数値微分でなく、厳密微分を適用できるということで理論的に数値微分の誤差を心配することなく計算できるようになりました。
機械学習への適用を発見したのは日本のチーム!
Quantum Circuit Learning
https://arxiv.org/abs/1803.00745
4,QCBM+MPS(機械学習 / 2017)
機械学習の中でも生成モデルは量子コンピュータの状態ベクトルとも相性がよさそうです。それまではボルツマンマシンが利用されていましたが、パラメータ量子回路によって状態ベクトルを直接利用するボルンマシンが提唱され、量子古典ハイブリッド機械学習のメインストリームとなりました。
Unsupervised Generative Modeling Using Matrix Product States
https://arxiv.org/abs/1709.01662
正直、衝撃を受けました。しかもQCBMでMPSというテンソルネットワーク方式が採用されて提案されています。
5,QCNN(機械学習 / 2018)
量子コンピュータの量子回路にも構造的な機械学習モデルがあるというのをイメージづけた量子CNNです。上記QCBMでも、MPSではなくMERA構造に近いものを採用して、量子データを分類しています。ハーバード大学のMikhail Lukinグループから。
Quantum Convolutional Neural Networks
https://arxiv.org/abs/1810.03787
6,HolograhicVQE / holoQUADS (組合せ最適化・機械学習 / 2019)
大きなVQEをMPSの利用によって、波動関数を近似し、少ない量子ビットで大きな回路を実行します。量子状態を作るだけなら、holoVQEでMPS作って終わりなのですが、さらにそっから時間発展を行うholoQUADSはMCMRをうまく使うことで、大幅な量子ビットの削減を実現します。もともとはQCBMの続きで提案されましたが、最近はhoneywellによって実機での実行が行われています。
Variational Quantum Eigensolver with Fewer Qubits
https://arxiv.org/abs/1902.02663
Holographic dynamics simulations with a trapped ion quantum computer
https://arxiv.org/abs/2105.09324
7,虚時間発展(最適化 / 2018)
虚時間発展を量子回路で実現することができています!
Variational ansatz-based quantum simulation of imaginary time evolution
https://arxiv.org/abs/1804.03023
8,量子ボルツマンマシン(機械学習 / 2013,2015)
量子回路ボルンマシンの前身です。量子アニーリングのD-Waveの組合せ最適化問題はなかなか解くのが難しいといわれていたころ、量子ボルツマンマシンのモデルを量子アニーリングマシンを使って実行するというアイデアが提唱され、実行されました。
2013年のこちらのYoshua Bengioグループの論文と、
On the Challenges of Physical Implementations of RBMs
https://arxiv.org/abs/1312.5258
2015年のロッキードマーティンのグループのこちらがおすすめです。
Application of Quantum Annealing to Training of Deep Neural Networks
https://arxiv.org/abs/1510.06356
この中で特にお気に入りなのが、QCBM+MPSの論文とholoQUADSのテンソルネットワーク関連です!世の中わけのわからないくらい優秀な人がいてとんでもないですね。ほかにもたくさんありますが、書ききれないので以上です。