はじめに
量子状態には純粋状態と混合状態があります。量子コンピュータのアプリケーションを作る際には通常純粋状態と呼ばれる理想的な状態で物事を考えますので、特に混合状態を意識する必要はありませんが、外部からの影響などを考慮する必要が出る場合には、混合状態を考えます。式の形は似ていますが係数や根本的な考え方が異なるので、確認をしてみたいと思います。
純粋状態
純粋状態とは扱う系について原理的に可能な限りの情報が既に得られている場合の状態のことで、状態がエネルギー固有値Eのエネルギー固有状態(ハミルトニアンHの固有ベクトル)であるとき、状態ベクトルを使って下記のように表現できます。
H∣ψ⟩=E∣ψ⟩ 混合状態
混合状態とは、すべての物理量について、その測定値に対する確率分布が、純粋状態における物理量の測定値に対する確率分布に、重みをつけて平均したものとして表せるような状態のことで、それぞれの純粋状態が確率で古典的に重ね合わさった状態を表します。
混合状態は密度演算子ρ^というものを使い、k番目の状態が確率pkで混ざる時下記のように書きます。
ρ^=k∑pk∣ψk⟩⟨ψk∣ 例題
まず∣0⟩と∣1⟩が21ずつ混ざり合った混合状態を考えてみます。密度演算子は、
ρ=21∣0⟩⟨0∣+21∣1⟩⟨1∣=21(10)(10)+21(01)(01)=21(1000)+21(0001)=21(1001)
となります。一方0と1が重なりあった状態の純粋状態と上記の混合状態は全く異なるものであるということを確認したいと思います。0と1の重なりあった状態は∣+⟩と表されます。これは1つの純粋状態を表すので、密度演算子は、
ρ=∣+⟩⟨+∣=21(∣0⟩+∣1⟩)21(⟨0∣+⟨1∣)=21(∣0⟩⟨0∣+∣0⟩⟨1∣+∣1⟩⟨0∣+∣1⟩⟨1∣)=21(1000)+21(0010)+21(0100)+21(0001)=21(1111)
このように密度演算子が異なるものとなっています。
まとめ
混合状態における係数はあくまで確率を表し、純粋状態の重ね合わせで表現されます。