かなり楽しい論文を見つけました。JPモルガンで、イオントラップの最適化問題です。問題抽出手法としてMMR(Maximal Marginal Relevance)という手法がありますが、見た目はポートフォリオ最適などの組合せ最適化問題に酷似しており、QAOAで解くことができます。かなりきちんとしていてかなりレベルが高いと思います。
参考論文
Constrained Quantum Optimization for Extractive Summarization on a Trapped-ion Quantum Computer
Pradeep Niroula,1, 2, 3, ∗ Ruslan Shaydulin,1, ∗ Romina Yalovetzky,1, ∗ Pierre Minssen,1 Dylan Herman,1 Shaohan Hu,1 and Marco Pistoia1 1 JPMorgan Chase Bank, N.A., New York, NY 2 Joint Center for Quantum Information and Computer Science, NIST/University of Maryland, College Park, MD 3 Joint Quantum Institute, University of Maryland, College Park, MD (Dated: June 14, 2022)
https://arxiv.org/abs/2206.06290
抽出型文章要約
何かしらの文章の意味を維持したまま文章を要約したい場合には手法が複数あるようですが、今回はExtractive Summarization(ES)法と呼ばれる抽出型の文章要約を取り上げています。今回は形式がQUBOに似ているアルゴリズムで定式化は下記の論文からとっているようです。
A Study of Global Inference Algorithms in Multi-Document Summarization
Ryan McDonald
Google Research 76 Ninth Avenue, New York, NY 10011 ryanmcd@google.com
https://ryanmcd.github.io/papers/globsumm.pdf
このあたりのESアルゴリズムはMMRなどがスタンダードらしいですが、比較的QUBO定式化に近いこともあり興味がわきます。時間があるときに全体像を見ていきたいですが、今回は定式化と解き方をこの論文についてみていきます。
定式化
定式化は上記の論文の通りになっています。比較的シンプルな構成です。
μは文章に対しての情報量をもつ値、βはその文章同士の類似度の計算を行った行列となっています。また、一番下はこの要約に含まれる文章の数Mで、Nの文章からMを抜き出す制約がついています。一番最後の式はXY-QAOAではハード制約として扱えるため、ソフト制約の場合と定式化が微妙に異なります。
制約
制約は抽出された文章の個数を制約としてかけています。ソフト制約としてQAOAを解く以外にも、ハード制約としてXYミキサーを利用しています。また、AnsatzとしてLayer VQEも試しています。L-VQEについては今回は特別には触れませんが、別の機会に取り上げようと思います。XYミキサーを利用する際には初期もつれ状態など固有状態を用意する必要がありますが、初期状態としてDicke状態を深さの浅い回路で作ろうというところも考察されていてかなりいい感じです。
計算結果
QAOA, XY-QAOA, L-VQEをなんと14量子ビット、20量子ビットの実機で実行しています。ハード制約付きのQAOAを実機実行は珍しいと思いました。計算結果は、、、やはりハード制約はちょっと実機では十分な実行は厳しそうですが、一定の傾向は見えていました。
考察
実機でのQAOA、特にXY-QAOAの実行結果は推して知るべしという感じでしたが、問題設定も面白いですしなかなか楽しい論文かと思います。実機のハネウェルマシンを使ってQAOAというのもかなり希望が持てる内容でした。以上です。