こんにちは。全世界的に自動車業界における量子コンピュータは量子アニーリングから始まり、最近では最先端のトレンドを追う形で発達しています。ここでは、自動車業界における量子コンピュータの活用方法のトレンドを確認し、技術的観点から実務でこれまで弊社が行ってきた事例や技術をもとに紹介をしていきます。
トレンド:コンソーシアム
国内外で自動車関連の企業がコンソーシアムを組む例が増えています。国内ではトヨタグループをはじめとして活用を模索しており、海外ではBMWやVWなどが積極的にコンソーシアム参加しています。
BMWやVW、量子コンピューターを産業利用へ…コンソーシアム設立
https://response.jp/article/2021/06/14/346688.html
マシンは最新イオントラップの事例が増加
BMWはハネウェル、VWやあいおいニッセイ米子会社はIonQというように、最先端は量子ビット接続数が多く、エラーの少ないイオントラップ方式がはやっている。国内では少し遅れて、量子アニーリングや超伝導量子ゲートがはやっているように見える。ドイツ勢は日本勢に比べてトレンドに敏感で、ダイムラー社も含め、最新の技術にキャッチアップできているので、国内勢も頑張ってほしい。
量子化学とマテリアルズインフォマティクス
材料系はバッテリー開発が注目されており、VWやダイムラーが中心となって、国内ではTOYOTAが注目している技術となっている。主に利用するのはVQEやQPEを利用した量子化学計算と、QCBMなどを利用したマテリアルズインフォマティクスが注目されている。
サプライチェーン、物流、交通最適もゲートの波が
これまで量子アニーリングで行われていた分野の最適化計算もイオントラップ方式の登場によってQAOAを利用した最適化計算が行われるようになっており、BMWのハネウェルマシンを利用したQAOAによるサプライチェーン最適やVWのQAOAによるイオントラップによる組合せ最適化などが行われている。国内では引き続き量子アニーリングを利用したものが行われている。
工場最適、設計最適、生産最適
こちらも同様に組合せ最適化問題を利用した最適化計算を中心に生産最適などの製造業における最適化を利用した各種業務効率化が引き続きたびたびニュースに登場する。
量子機械学習における分類問題
あいおいニッセイ米子会社はIonQを利用したイオントラップ方式での量子ニューラルネットワークを利用した量子機械学習を実行しており、こちらも最先端として利用されるAI分野の技術が利用されている。国内ではあまりポピュラーではないが、弊社でも旭化成における物性予測問題において同様のIonQ回路を発表している。
量子流体計算は今後アルゴリズムが発展するか
現在量子金融分野を中心に技術が発展している量子振幅推定を利用した量子流体計算へと応用され始めている。微分方程式関連は量子振幅推定を利用した場合、二乗加速と呼ばれる量子化学計算などに比べると速度向上は小さいが、金融分野におけるモンテカルロ計算の実用化が前倒しになりそうな見込みに合わせて、量子振幅推定を利用した数値計算分野が少しずつ盛り上がりを見せている。量子振幅推定を利用したナビエストークスなど流体計算なども車体設計への応用で今後期待される。
自動車分野へのソフトウェア応用は4種類を想定
まずは、量子化学計算。速度向上は不明だが、最適化を利用してハミルトニアンを解くVQE。誤り訂正付き量子コンピュータのある程度のサイズが出ると実行できるかもしれない量子位相推定を利用した量子化学計算は王道。
次に、組合せ最適化問題。現在はNISQ向けのQAOAと呼ばれる量子アニーリングを量子ゲートマシンで動かすようなアルゴリズム。速度向上は厳しいが、制約条件式などの複雑な最適化において様々なテクニックを習得する必要がある。今後FTQCに向かってQAOAもどのような発展をするのかも注目。超伝導では接続が少なく厳しかった最適化計算がイオントラップの全結合の構造によって実行可能になったのも大きい。
そして、量子機械学習。量子回路ボルンマシンをベースとして、量子ニューラルネットワークや量子ディープラーニングと呼ばれる分野のテクニックを覚えておけばまずはOK。その他、いくつか今後のために技術を習得しておくのも吉。
最後に量子振幅推定。グローバーのアルゴリズムを一般化したものを使って、数値積分、それを応用した偏微分方程式解法を学び、将来的な量子流体計算への応用を探る。
ハードウェアはイオントラップが流行り。IBMも強い
BMWはハネウェル、VWは王道のIonQを利用。あいおいニッセイ米子会社もIonQを利用。ダイムラーはIBMなど理論に強いところとがっつり組んでいる。GoogleやIBMに加えて、最近はAmazonも急激に人材があつまり、マイクロソフトも強いことから、ユーザーサポートの手厚いところを選ぶか、最新型のイオントラップを扱うかなど選択肢も複雑に。論文発表などの手厚さはIBMが一歩リードの様子。技術的にはGoogleなども見逃せない。
結局どうすればいいのか
効率よく、VQE/QPEを学び、QAOAを学び、QAEを学び、QCBMを学べばOK。理論を覚えたらチームに分かれて実機実行。実機はコストが大変かかるのでそれだけ注意。以上です。