いくつか最近のトレンドに関する記事を書きましたが、今回はハード、ソフト、クラウドと完全に覚えておけばいいトレンドをひとまとめにしてみます。4つのハードウェア、4つのソフトウェア、4つの量子クラウドを覚えておけばこの3年は大丈夫だと思います。さっそくいきましょう!
4つのハード
量子コンピュータ業界では、ビジネス領域では主に4つのハードウェアを覚えればOKです。一つは先行して開発されている超電導方式。次に最近勢力を伸ばしているイオントラップ方式。そして、これから登場するシリコン量子ビットです。この3種類は同じ計算原理でできますので、ソフトウェアはほぼ共通です。それに計算原理の異なる光量子コンピュータであるフォトニクス方式を加えた4つを覚えれば大丈夫です。ほかにも冷却原子とかトポロジカルとかダイヤモンドとかありますが、まだビジネスには登場していませんので、登場したら考えましょう。このうち、シリコンと光マシンはまだ登場していませんので、こちらも使えるようになったら使いたいですが、現状は超電導とイオントラップがすぐに利用できます。
超電導は超電導素子を組み合わせたもの、イオントラップは原子をイオン化したものにレーザーを打つもの、シリコンは既存シリコン上に電子をとじこめて操作するもの。フォトニクスは主に光をチップ化したナノフォトニクスデバイスを利用します。
4つのソフト
ソフトウェアの活用領域・アルゴリズムも4種類です。一つは量子位相推定やVQEと呼ばれる固有値というものを計算するためのアルゴリズムでおもに量子化学計算、材料計算に利用されます。つぎに量子アニーリングやQAOAと呼ばれる組合せ最適化問題を解くタイプ。そして、金融や流体計算で利用される量子振幅増幅を拡張した量子振幅推定。最後に、VQEから派生した近年のハイブリッドを利用した量子機械学習(似た機械学習でもHHLやQSVMは別)です。
当初ソフトウェアは量子コンピュータのハードウェアなしで発展しました。その時には、おもに量子位相推定と量子振幅増幅が発展しました。2012年にカナダのD-Wave社が量子アニーリングと呼ばれるアルゴリズムを活用したハードウェアを発表すると、GoogleやIBMは汎用量子コンピュータの流れをくむNISQと呼ばれるエラーの多いマシンを開発し、量子位相推定の代わりにVQE、量子アニーリングの代わりにQAOA、それらの派生で量子機械学習用のソフトウェアが開発されました。量子振幅増幅だけはNISQアルゴリズムはほぼなく、そのまま汎用アルゴリズムから脈々と開発が続いています。
今後はNISQでのハイブリッドアルゴリズムがあまり速度がでないことから、VQEの開発と並行して、量子位相推定への回帰などの汎用アルゴリズム重視姿勢もあるので、誤り訂正の発達と一緒に注目すべきポイントになります。
量子コンピュータはこれまで、ハードウェアメーカーが垂直統合でクラウドまでを提供というのが2019年までの流れでしたが、最近ではIBMやGoogleなどの巨大資本以外は、パブリッククラウドと呼ばれるクラウドサービスに統合される流れが強いです。上記4社が強く、今後はこれらのプラットフォームに統合されるのが基本になるでしょう。それぞれ強みも違います。ベンチャーなどのハードウェアメーカーはクラウドサービスの提供を通じてのビジネス拡張は難しくなり、今後はパブリッククラウドへの統合が一番の道になりそうです。
まとめ
2020年が量子コンピュータの過渡期でした。2021年もその流れが続いています。NISQアルゴリズムの限界と誤り訂正への道。大手パブリッククラウドへの統合。先行する超電導量子ビット、イオントラップハードウェアの台頭とその次に続く、シリコン量子ビットへの期待。そして今後は中国勢の大幅な発展と目が離せません。がんばりましょう。では、よい量子を!