量子コンピュータの新しい生成モデル機械学習の潮流「ボルツマンマシン」から「ボルンマシン」へ

はじめに

量子コンピュータの実用化が進むにつれて新しいアプリケーションが必要となってきます。これまでのAIや人工知能と呼ばれる分野におけるモデルと、量子コンピュータの高速性を発揮するモデルは異なることがわかり始めてきました。 古典計算機がチューリングマシンの考え方に基づき、人工知能という人間の知能を模倣した学習モデルを構築する一方で、量子計算機は人間の考え方に必ずしも根付かない、量子力学的な性質をベースとしています。 量子機械学習でこれまで量子アニーリングなどでベースとなっていたのは統計物理学をベースとしたボルツマンマシンのようなサンプリングを活用したモデルでした。

今回はさらに踏み込んで新しいモデルを見ていきます。

識別モデルと生成モデル

分類モデルには識別モデルと生成モデルがあり、分類において境界面を学ぶ識別モデルと、データ自体の分布を学ぶ生成モデルがあるようです。生成モデルはデータ自体の分布を学ぶことができるので、そこから分布に沿った新しいデータが生成できる点がいいようです。今回はこの生成モデルに関して量子コンピュータの最近の機械学習モデルを見てみたいと思います。

統計物理学に基づくボルツマンマシン

D-Waveでは、ボルツマンマシンと呼ばれる統計物理学に基づく機械学習モデルをよく扱っていました。 ボルツマン機械学習はイジングモデルのハミルトニアンのエネルギー分布が各状態の出現確率に対応します。答えの出る偏りそのものを学習することで、モデルを学習させていきます。 また、ボルツマン機械学習を使って学んだものから画像などを復元することができますが、その際にはイジング式を使います。

ボルツマンマシンは出現確率が、エネルギー分布と規格化定数で構成されています。

$$ p(x) = \frac{1}{Z} e^{-E(x)} $$

ボルツマンマシンはxの値を導入したイジングモデルのエネルギー分布で記述されます。機械学習としては、上記のエネルギー分布が可視層vと隠れ層hの元構成されています。

量子力学に基づくボルンマシン

今回新しく登場してきたのは、ボルンマシンです。中国科学院のLei Wang氏による論文と資料から新しいマシンの着想が実現してきました(ちょっと驚きました)。ボルツマンマシンの理論は統計物理学をベースとしていたのと対照的に、ボルンマシンは波動関数を利用した量子物理学の確率分布を実装したモデルとなっています。

Differentiable Learning of Quantum Circuit Born Machine https://arxiv.org/pdf/1804.04168.pdf

ボルンマシンは波動関数を使います。

$$ p(x) = \frac{|\psi(x)|^2}{N} $$

ボルンマシンは、ドイツの理論物理学者であるマックス・ボルンからきており、ボルンの規則と呼ばれる、量子系における物理量の測定における確率を与える法則で、これを使うことで直接波動関数を利用して機械学習をしようという試みです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%A6%8F%E5%89%87

理論的な枠組みはボルツマンマシンに似ていますが、利用するのはイジングモデルのハミルトニアンではなく、量子ゲートと状態ベクトルです。最新の機械学習の現場ではそれだけに止まらず、最新のハードウェアでの実装が進んでいます。 量子回路ボルンマシンはQuancum Circuit Born MachineでQCBMと略されます。

Yuichiro Minato
blueqat CEO/CTO 2015年総務省異能vation最終採択 2017年内閣府ImPACTプロジェクトPM補佐 2019年文科省さきがけ量子情報処理領域アドバイザー
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Yuichiro Minato
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