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研究用(22nmMOSFET)と商用(5nm/7nmFinFET)の半導体量子コンピュータの違い

Yuichiro Minato

2025/02/01 10:15

研究用と商用の半導体量子コンピュータの違い

量子コンピュータの半導体技術は、研究用途と商用用途で異なる進化を遂げています。研究では長らくプレーナー型のゲート定義方式が主流でしたが、商用化が進むにつれ、より高度な半導体技術が適用されるようになっています。

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研究用半導体量子コンピュータ

研究分野では、主にプレーナー(平面)構造のゲート定義型半導体が使われてきました。これは、製造プロセスが比較的単純で、研究者がデバイスの特性を詳細に制御しやすいことが理由です。プレーナー型では、電子の移動が二次元平面上で制御され、量子ビットの設計や動作の解析が比較的容易になります。

この方式では、22nmプロセスなどの比較的大きなプロセスノードが採用され、従来のシリコンMOSFET技術を応用する形で開発が進められてきました。ゲートを定義し、その下に電子を閉じ込めることで量子ドットを形成し、スピン量子ビットとして動作させるアプローチが一般的です。

商用半導体量子コンピュータ

一方で、商用化に向けた開発では、より微細なプロセスノードが活用されています。特に5nmや7nmといった先端プロセスでは、プレーナー型ではなく FinFET(Fin Field-Effect Transistor) が使われています。

FinFETは、プレーナー型と異なり、ゲートがチャネルを三次元的に取り囲む構造を持っています。これは、微細化によるリーク電流の抑制やスイッチング性能の向上を目的としたもので、従来の半導体プロセスでの性能向上には不可欠な技術です。しかし、FinFETは完全なゲート定義型ではなく、その形状によって電子の挙動がプレーナー型とは異なるため、量子ビットの設計にも影響を与えます。

例えば、FinFET構造では、電子が三次元的に閉じ込められるため、スピン量子ビットの制御や読み出しの設計に影響があります。また、半導体メーカーが商用量子コンピュータを開発する際には、従来のFinFETプロセスを流用することで製造コストを抑えながらスケールアップを図る必要があります。そのため、プレーナー型とは異なるアプローチで量子ビットを設計する必要が生じます。

設計の変化と今後の展望

このように、研究用途では伝統的なプレーナー型ゲート定義方式が用いられてきましたが、商用の量子コンピュータではFinFETをはじめとした三次元構造を活用した新しい設計が求められています。今後、より微細なプロセスノードが進化するにつれて、量子ビットの実装方法も変化していくでしょう。

特に、TSMCやIntel、Samsungなどの半導体メーカーが、新しいトランジスタ技術(Gate-All-Around FET など)を採用する可能性があり、それによりさらなる量子ビットのスケールアップや安定化が期待されます。

研究と商用で異なる技術の選択がなされる背景には、それぞれの目的の違いがあります。研究では量子ビットの基礎特性の解析や新技術の検証が重要視されるのに対し、商用ではスケールアップやエラー耐性、コスト削減が主な課題となるため、異なる技術が適用されるのです。

これまでの半導体量子コンピュータでは、二次元平面上でゲート定義型の設計が行われてきましたが、FinFETへ移行する際には、従来のプレーナー型では問題にならなかった構造もFinの立体的な形状によって影響を受けることになります。FinFETでは、ゲートが三次元的にチャネルを囲むため、電子の分布やスピン特性がこれまでとは異なり、量子ビットの安定性や制御精度に影響を与える可能性があります。これにより、従来の設計ルールが通用しなくなり、新たな量子ビット設計の最適化が求められています。

これらの問題を解決するために、様々な手法が検討されていますが、商用化においてさらに困難になるのが、デバイス設計や材料面での制約です。研究用途では、半導体量子ビットに特化した材料や構造の最適化が可能ですが、商用では既存の最先端AI向けロジック半導体やスマートフォン向け半導体に合わせたデバイスや製造プロセスが適用されるため、必ずしも量子ビットに最適な設計が選択されるとは限りません。量産の半導体製造ラインに統合するためには、既存のシリコン技術との互換性を維持しつつ、量子コンピュータに必要な特性を確保する必要があります。

そのため、現時点では、デバイスの設計や要素技術の再検討に多くの時間が費やされています。従来のプレーナー型からFinFETへの移行に伴い、トランジスタの微細化技術だけでなく、新たな材料やデバイス構造の導入、プロセスの適用方法の再考が不可欠となっています。今後、商用半導体量子コンピュータのスケールアップと安定動作を実現するために、より革新的なアプローチが求められるでしょう。

今後、半導体プロセス技術がどのように量子コンピュータに適用されていくのか、引き続き注目が集まります。

ちなみに国内の産総研はFinFETでも作ってます。

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