こんにちは、外向けの印象と中身がちがうことってありますよね。今回はIonQがSECに提出した最新のレポートから見えてくる現状と戦略を見てみたいと思います。レポートはこちらです。英語です。
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001824920/000119312521271213/d204390d425.htm
基本的には上場申請時からレポートが大きく変更になっています。今回は注目したいのが、IonQは量子コンピュータハードウェアとしてaws/azure/gcpというクラウドサービスを網羅してハードウェアの提供をしている唯一の企業です。
レポート内では、アクセンチュアとの提携とソフトバンクとの提携にも触れられています。
ポイントは、
・aws/azure/gcpを制覇
・メジャーなSDKをサポートしている
・大学などとも連携
・アクセンチュアやソフトバンクと提携
・2021年の売り上げ当初からの3倍予測。当初は5億。今は15億。
・マルチコア化、小型化、光技術による並列化
などです。ビジネス的要因と技術的要因がバランスよく混じっています。
特に注目をしたいのが、SDKサポートで。IonQといえばamazon braketでのawsのSDKが有力かと思われていましたが、ふたを開けてみるとGoogle CirqとIBM Qiskitが強力なツールとなっていました。
引用:レポートより
Google GCPではすでにIonQが利用できるようになっており、Googleのソフトウェア開発キットであるCirqが実用的にようやく使える機会ということで、かなり貴重です。これまでCirqはシミュレーションしかできなかったので。また、IBMも自社マシンはありながらもIonQ対応せざるを得ないという事情があるのでしょうか。GoogleやIBMが自社の超伝導のマシンを保有しながらIonQという外部ベンダーに依存するというのがとても不思議に見えます。この結果はそのうち市場に数字となって表れるでしょう。IonQのハードウェア特化型でSDKを複数サポートするマルチプラットフォームの戦略はGoogle Cirqのダウンロード数が大きい割合を占めていることからも、複数クラウドへの搭載は成功しているという見方もできます。
技術的には今後マルチコア、マルチプロセッサの流れを汲んで、データセンター小型化が最優先となっており、アクセンチュアやソフトバンクを通じて販売をしていくという流れが見られます。
売上も順調に増えていますので、2024年の予想売上高が60億円となっておりさすがの規模と言えます。今後も量子コンピュータの市場規模はどんどん大きくなっていきそうです。収支が合うのかはまた別の問題となっているので、資本が大きいところでないとレースになかなか参加できないという状況にはなっています。以上です。