こんにちは。最近米国でも量子コンピュータにまつわる誇大広告が問題になっています。米国ではすでに量子アニーリングを行っている企業はほとんどおらず、量子ゲート方式しかやっていないのにもかかわらず、誇大広告とはどういうことでしょうか?また、量子コンピュータに参入してしまった企業はどのように対策をしているのでしょうか。
特に誇大広告として語られてしまっているのが、
1,組合せ最適化問題(誇大広告度大)
2,量子化学計算(誇大広告度中)
3,量子機械学習(誇大広告度小)
の三種類となっています。実際には今の量子コンピュータではこれらの問題を効率的に解くことはできません。では、なぜ今量子コンピュータが注目されているのでしょうか?それは、10年後20年後を見据えてということになっています。今後を見据えて時間がかかるので、今から今後万が一より強力な量子コンピュータが出てきたときのために準備しましょうということです。
弊社でも大きな期待をもって開発に参加される企業様も増えていますが、期待感が大きい企業様にはまず期待感を下げるところから始めています。また、そうでなくても最近は期待感高くなく、かなり現実的に研究をして量子コンピュータを冷静にとらえる企業様がだいぶ増えております。そういった意味でも、上記のアプリケーションが量子アニーリングでも量子ゲートでも効率的には解くことはできないが、少なくとも量子ゲートを使ってどのように将来的に解けばよいのかを学ぶ、チュートリアルを実行するという学習としての量子コンピュータに専念される企業が増えました。
まず、現状の量子コンピュータへの期待感の低下はどこからきているのでしょうか?それは、2017年ごろから量子アニーリングへの失望と入れ替えで、高まったNISQと呼ばれる量子ゲート方式のハイブリッドアプリケーションの産業応用が結果として失敗に終わったことが原因となりました。当時は2021年ごろにはNISQと呼ばれるエラーが多い量子コンピュータでも既存のコンピュータをハイブリッドで利用すれば高速性が活かせるのではないかという期待感が全世界でありました。しかし実際にはそのようなことはなく、組合せ最適化問題も量子化学計算も高速には計算できないことが分かり、現在に至ります。量子機械学習も試されていますが、今のところ高速性は特に発揮されていません。
では、各企業はそのような期待感の下で参入した量子コンピュータ業界とどのように向き合っているのでしょうか。実際に最近では量子コンピュータのシミュレーションや実機の利用がクラウドで広く広がってきたこともあり、この量子ゲートのNISQの産業失敗はだれでも確認することができます。
1,チュートリアルや学習に専念する。
2,研究開発を中長期で計画する。
3,光方式へ行く。
4,誤り訂正付き量子コンピュータFTQCへ向かう。
などです。控えめなのは、やはりすぐには使えない。10-20年はかかると覚悟をして学習や中長期の研究計画を立てるということでしょう。多くの企業は実用化をあきらめてこのような方針を取り始めています。
また、光方式へ行く企業も増えています。最近では中国やカナダのxanadu、米国のPsiQuantumなど大型予算や調達を活用した光量子方式のニュースが目立つため、雨後の筍のように今後は光量子ベンチャーや研究が出てくると思います。こちらもまだこれからの分野なので、黎明期の立ち上がりに大きな投資が動き、研究開発やビジネス応用が活発化します。
そして、量子コンピュータはNISQの代わりにFTQCと呼ばれるより理想的な量子コンピュータをより長いロードマップで求めていく流れです。これがおそらく一番難しいでしょうが、確実に進む道です。多くの企業や研究者は基礎研究に戻り量子コンピュータを小さいサイズに戻って理論の構築を始めています。
日本のトップレベル級の量子コンピュータ企業は、世界から見てもかなり優秀な企業が多いため、上記無理に量子コンピュータで革新的な計算ができるとは宣伝しておらず、バックに大学がついているので、かなり冷静な運営をしている企業が目立ちます。
最近多くの企業が量子ゲートに参入していますが、大きなチームを組んで難しい問題に取り組んでいます。量子ゲートマシン特に、NISQとFTQCの両方を会得するのは大変なので、数年をかけてぜひ参入を果たし、中長期での計画を立てていただきたいと考えています。
以上です。