これまでは文京区本郷を本拠地にblueqat株式会社は活動を行ってきましたが、これまで作ってきたソフトウェアの質を高め、より良い営業活動を行うために本拠地を文京区本郷から渋谷区渋谷に移しました。
ホームグラウンド
仕事がしやすいホームグラウンドという概念は大事です。自分が育った場所で仕事をすることでパフォーマンスが上がり、クライアントや株主、社員にいい影響を与えることになります。自分は東京都世田谷区生まれ、渋谷区育ちなので、生まれてから長らく渋谷になじんできました。知り合いや兄弟がいることで、自分が一番パフォーマンスが出る場所が渋谷です。ということでホームグラウンドを得たので、渋谷区渋谷に移転しました。これまでも何度か渋谷移転を考えてきたのですが、日本人の東大信仰が強く本郷からなかなか移動できませんでしたが、グローバル時代では東大でも通用しない分野があるので、海外からも知名度の高い渋谷となりました。
量子コンピュータSDK
弊社は最初にblueqat SDKという量子コンピュータ向けのソフトウェア開発キットを開発しました。普通は米国の大手IT企業がつくるものですので、ベンチャー企業はこの類は開発しません。しかし何とか日本の技術を高めるために収益性を最初は犠牲にして量子コンピュータ向けSDKとして開発を行いました。何度か収益性について検討を行いましたが、OSSとしてリリースしていてなかなか伸びないとか活用方法がみつからないなど苦労しましたが、とりあえず企業としてOSSの量子コンピュータSDKの開発を継続しました。
SDKの収益化とクラウドサービス
弊社は量子コンピュータ関連を行っていますが、当初はGAFAが強いとかいろいろ言われてクラウドは伸びないといわれていました。それでもSDKをもっていたので、それをある時期からクラウド実装することになりました。理由は簡単で、量子コンピュータ向けのツールは開発進捗が早く、数か月前の技術が古くなるのが普通です。クライアントさんのほうで毎回これらのリリースについてついていくのは大変、かつ環境に依存しない仕組みを作るということで、クラウドシステムとして仕上げました。これにより収益化が難しかったOSSを手厚いサポートで運用するクラウドシステムができあがり、初年度から安定した収益をもたらすことになりました。現在ではこのblueqat cloudを核としてさまざなま機能を充実させていくロードマップで進めています。
海外展開
昨今のITは日本国内だけでなく、海外展開が必須です。量子コンピュータの世界ではその技術開発の難易度から世界中の企業や研究者が連携して開発に取り掛かります。blueqat社も海外の主要企業と連携しながらプラットフォームやアプリケーションの開発を進めています。カナダのD-Wave社、米国のIBMやAmazon、米国ベンチャーのStrangeworksや欧州ベンチャーのQuantFiなどと連携をして成果を残しています。今後はシンガポールや欧州、北米を中心に量子コンピュータ関連のシステムやアプリケーションの営業を強化してユーザーを増やしていきます。
機械学習
量子コンピュータのアプリケーションとして有望視されているものは、量子化学、金融計算、業務効率最適化、そして機械学習があります。どれも一長一短ですが、弊社がこの中で選んだのは、数理最適化・離散最適化と機械学習です。量子コンピュータのアプリケーションはまだまだ性能面での課題があり、どのアプリケーションの実用化も進んでいませんが、最近ではBCGをはじめとして詳細な市場規模のレポートがでるようになってきました。その中でも機械学習は比較的適用分野が分かりやすく、既存の方式でも課題がまだまだあるので、量子コンピュータの技術が将来的に生きると思います。また、既存の量子コンピュータと普通のコンピュータをハイブリッドで利用する方法で行う機械学習には既存の機械学習の手法が応用されて利用されます。既存のコンピュータと量子コンピュータのアプリケーションの橋渡しとして量子機械学習はとても分かりやすいと感じており、そこから派生した技術は十分既存の課題に対応できるため、将来的な活動や知見を得ながら、既存の問題を解決することができます。
営業体制
量子機械学習や機械学習を応用して実問題を少しずつ解く機会が増えてきました。社会へとその価値を還元し、将来的な適用分野をより深く知るためにもデータ社会に開発してきた手法やクラウドシステムを適用するのはとても大事です。営業体制をより確立し、効率的に社会問題をデータから処理し価値を生み出す営業体制を早期に確立したいと思います。
シリコン量子ビットとイオントラップ、冷却原子
量子コンピュータはハードウェアがとても大事です。現状は誤り訂正と呼ばれるエラーを減らす機構の搭載をハードウェア開発者は目指しています。多くの量子ビットを搭載した産業用の量子コンピュータの登場が待たれます。弊社ではその中でも流れを読み、イオントラップ方式を現在利用しています。イオントラップはイオンを空中に浮かしてレーザーで計算しますが、常温で動き、量子ビット同士の結合が多い、エラーが少ないなどの利点があり、今までのマシンで計算ができなかった離散最適化問題や機械学習問題を実行できるために重宝しています。機械学習や離散最適化では量子ビット同士の接続数が重要になります。今後国内でのイオントラップ方式の開発と産業化はなかなか難しいと考えています。弊社ではさらにその先の方式として既存半導体を利用したシリコン半導体量子ビットの開発を支援しています。
シリコンを使うことで、既存の半導体産業の延長線上に量子コンピュータを置くことができます。また、小型化が見込まれており、イオントラップとともにデータセンターに置かれる現実的なサイズの量子コンピュータが期待されます。最近では冷却原子型の量子コンピュータも注目されており、とてもハードウェアの発展も期待が持てます。
データ社会のデータと量子の人材育成
量子コンピュータや機械学習の人材育成はとても大事です。量子の技術を身に着けながら、既存の機械学習を使いこなし、データと触れ合って企業のデータを価値ある宝とする実践力は現在のblueqat社での大きな宝となっています。貴重な仕事の時間をスキルを磨きながら社会に貢献する。そして、将来的な量子の行く末を占うようにスキルを磨いていくという理想的なキャリアを遂げることができるのが現在のblueqat社の姿となっています。今後は渋谷の地で安定してこのような活動をサポートできるような体制づくりと実績の対外発表など社会への還元を進めていきたいと思います。
まとめ
blueqat社ではこれまでの数年で構築してきたビジネスモデルや技術をよりレベルアップし、データ社会における計算でのビジネスモデルの支援を引き続き行ってまいります。難しいモデル、将来的な量子への応用、データの活用方法、具体的なモデルの改善と精度の向上など、必要な技術を磨きながら世界に通用する企業として一層スキルアップを目指していきたいと思います。
以上です。