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究極の量子コンピュータ始動──実験室の終焉、チップの時代へ

Yuichiro Minato

2025/09/09 22:07

#特集

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序章:実験室の中で始まった競争

量子コンピュータの歴史は、常に実験室から始まってきました。超伝導、イオントラップ、光学系──世界中の研究者たちが理論と技術の限界に挑戦してきました。しかし、膨大な冷却設備や巨大な装置に依存する「実験室型の量子コンピュータ」は、どうしても社会実装の壁を越えることが難しいものでした。

転換点:半導体が切り拓く未来

その壁を打ち破るのが「半導体を利用した量子チップ」です。
既存の半導体産業で培われた製造技術を活かすことで、コンパクトかつ高性能な量子コンピュータをチップ上に集約できるようになりつつあります。これは、量子コンピュータを「特別な研究装置」から「実用的なマシン」へと進化させる大きな転換点です。

準備完了:コンポーネントと量産体制

半導体量子コンピュータの心臓部はチップです。ただ、周辺の冷却や配線といったコンポーネント群が整備されることが重要ですが、社会実装の準備が整いました。さらに、半導体製造の量産体制と結びつくことで、商用化への現実的なロードマップが開かれました。もはや「ラボの中の夢」ではなく「社会を変える産業基盤」へと進化しようとしています。

これから:チップ設計・製造の本格化

次のステージは「チップ設計と製造の本格化」です。量子コンピュータはついに、実験室の中で終焉を迎え、社会の中で進化を続ける存在になります。究極の量子コンピュータが社会に解き放たれることで、創薬、金融、材料開発、AI強化など、私たちの生活や産業に革命をもたらす未来が現実のものになるでしょう。

以下詳細

私たちは現在、半導体を利用した新しい量子コンピュータの開発を進めています。本記事では、現時点での仕様や開発ロードマップをご紹介するとともに、今後予定している配備計画についても触れます。

1. 半導体とEO方式による新しい量子コンピュータ

開発中のシステムは、Exchange Only (EO) 方式を用いた量子コンピュータです。従来の量子コンピュータで一般的なマイクロ波制御は一切必要なく、すべてゲート電圧スイッチングによって量子操作を行える点が特徴です。これにより、同軸ケーブルや高価な高周波装置を排除し、より低コストかつシンプルな制御系を構築することが可能となります。

さらに、半導体技術の強みを活かし、量子ビットと制御CMOSを同一チップに集積設計できるため、将来にわたり柔軟で拡張性の高いアーキテクチャを提供します。読み出しには電荷センサーを採用予定です。

2. 冷却技術と筐体設計

動作温度は0.3Kをターゲットとしています。

  • ベースとなるのは住友重機械工業製の4KGM冷凍機
  • これにHe3モジュールを追加することで、従来の大型システムを**サーバーラックサイズ(W600 × D1000 × H900mm)**へと小型化。(現状はまだHe3モジュールが大きいため2025年の実機展示では旧型の展示となることがあります。)

この構成により、既存の研究施設やデータセンターにも導入しやすいサイズ感を実現しています。現状では冷凍性能にやや不安定さがあるものの、開発を進める中で改善を図っています。

また、冷凍設備の制御には国内開発のクライオスタットを採用。一般に入手可能な既製品を活用することで、特殊部材に依存しすぎない実現性の高い構成をとっています。

基本納期を半年と想定しています。

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3. 制御系の開発ロードマップ

初期段階では室温制御を採用しますが、将来的には4KステージへのクライオCMOS搭載もしくは0.3KステージにSoCを搭載する形で制御系を集積化する予定です。これにより、制御の高速化・省電力化が進み、量子コンピュータ全体の効率性も飛躍的に高まります。これにより配線の問題を解決します。

4. 量子ビット数の拡張計画

現在は6量子ビット構成を想定しています。
しかし、制御系の整備と技術的成熟に伴い、今後は数百量子ビットから数千量子ビット規模へと拡張していく方針です。これは、半導体アーキテクチャの持つスケーラビリティを活かした重要な成長戦略です。

5. 本体仕様と電力要件

  • 本体サイズ:W600 × D1000 × H900mm(サーバーラックに収まるサイズ)
  • 消費電力:約2000W弱
  • 冷却設備:住友重機械工業製4KGM冷凍機+He3吸着モジュール
  • クライオスタット制御:国内開発品を採用

すでに入手可能な市販装置を中心に構成しているため、特殊な部材を必要としない点も実用性の高さにつながっています。

6. 実機配備と展示計画

今後の開発ロードマップとして、チップ開発に先行して、冷凍設備を中心とした量子コンピュータ本体(実機マシンおよび展示用設備)を全国に配備していく計画があります。

この配備により、研究者や企業の皆さまが半導体量子コンピュータの動作環境を実際に体験し、将来の利用シナリオを検討できる場を提供します。興味のある方は、ぜひ株式会社ビジュアルテクノロジーへお問い合わせください。

https://www.v-t.co.jp/

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7. 今後の展望と問い合わせ先

私たちはクラウド事業者として量子計算資源の提供を主軸としています。そのため、外部へのハードウェア販売は予定していません。ただし、ハードウェアやチップに関するご相談は以下の各社へお問い合わせください。

今後は、SoCチップの設計と量子ビット拡張に注力し、EO方式と半導体技術を融合した次世代量子コンピュータの実現を目指してまいります。

まとめ

半導体量子コンピュータは、シンプルな制御・柔軟な設計・小型化可能な冷却系といった特徴を兼ね備え、研究開発から社会実装まで幅広い可能性を秘めています。冷凍設備の先行配備と展示を通じて、より多くの方にこの新しい技術を体感いただけることを期待しています。

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