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半導体技術者のための量子コンピュータ講座(随時追記)

Yuichiro Minato

2023/02/22 16:34

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こんにちは、最近半導体を利用した最新の量子コンピュータの開発が活発化されています。研究自体は昔から行われていますが、ようやく商用ラインでの製造が進んでおり、汎用化の道へ待ったなしという感じです。

量子コンピュータのハードウェア開発は現状側から見ていてもこれぞという決定打がなく、みなさん苦労して少しずつという感じがします。半導体の微細化技術や商用化技術をベースに量子コンピュータが作れればより早く発展するのではと期待しており、弊社でも半導体量子コンピュータの開発を目指しています。

量子コンピュータの基本技術として半導体を利用するメリットは、

1、冷却温度の制約が比較的ゆるく、筐体の小型化が可能と言われている。

2、量子ビットである電子のサイズが小さいため、集積化が可能

3、商用の半導体製造設備を利用して製造が可能なため、商用化・量産化へのロードマップが見えやすい

など様々あります。

世界の半導体量子コンピュータの動き

そんな中、SEMIjapan様と量子コンピュータ協議会を22年に立ち上げ、委員長を仰せつかっております。

SEMIジャパンが量子コンピューターの協議会を設立、半導体製造技術の応用に期待

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13021/

今回はセミコンなどへの出展の中で、どうしても量子コンピュータと半導体が結びつかない。量子コンピュータが難しくて理解しづらいという声をたくさんいただきました。世界中で半導体量子コンピュータの開発が多数立ち上がっており、早急に日本でも出遅れないようにするための対応が必要です。

Quantum Motion、スピン量子ビットプロセッサー開発のため、4,200万ポンド(約68億円)のベンチャー資金を獲得

「今回のラウンドは、Porsche Ventures (RBVC) が主導し、Porsche Automobil Holding SE (ボッシュ SE) 、British Patient Capital、および既存投資組の Oxford Science Enterprises、Inkef、Parkwalk Advisers、Octopus Ventures、IP Group、NSSIF が追加で参加した。今回の出資は、私たちが把握している英国における量子技術関連企業への単独出資としては最大規模となり、これまでの出資額は約6,200万ポンド(約100億円)にのぼる。

2017年、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの John Morton教授と オックスフォード大学の Simon Benjamin教授によって設立された Quantum Motion は、スピン量子ビット技術に基づいた量子プロセッサを開発し、大量の半導体プロセスを用いて製造している。同社はすでに、緩和時間9秒のスピン量子ビットの作成、1,024個の量子ドットを搭載したテスト機の製作と12分以内の測定、3×3mm2のテストチップを標準的な半導体製造技術で製作するなど、いくつかの技術的成果を既に実証している。現在、従業員数は40名で、今回の資金調達により、開発の加速化、Tier1半導体製造パートナーとの関係強化、ロンドン本社の規模を拡大する予定である。この新たな資金調達に関する詳細は、同社のWebサイトに掲載されているニュースリリース を参照。」

https://blueqat.com/qbm/c93b2590-5371-4348-b1cf-1bb15f0a9bff

Intel、量子コンピュータへの取り組み

「スピン量子ビットは、超電導量子ビットと比較すると、1量子ビットあたりのダイ面積が桁違いに小さいという大きなメリットがあります。そして300mmウエハ1枚に、1万個以上の量子ドットアレイを搭載できるようになりました。また、スピン量子ビットを用いることで、マイクロプロセッサを製造するのと同じ大量生産工場において、量子ドットを製造することができるのです。電子ビームリソグラフィー、原子層蒸着、リフトオフシリコン加工などを用いてスピン量子ビットを作っている他のいくつかのグループとは異なり、インテルは、標準的なEUV(Extreme Ultra Violet)光リソグラフィー、プラズマエッチング、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用い、193nmの大量リソグラフィー工程でチップを製造しています。理由は、これらの工程が、長年にわたり自社のトランジスタ製造設備において最適化されてきたからで、この手法により、高収率、高精度、低汚染、高均一性、高再現性を実現することができるからです。」

https://blueqat.com/qbm/d7e3e82a-1ded-45fc-a82b-1362efe47e94

このように、昨年・今年は半導体量子コンピュータの勃興の年となっていて、いよいよ商用提供に向けて全世界が動き出しています。現在、超伝導、イオントラップ、光連続量、中性原子までは商用化マシンが登場しており、いよいよ最後の半導体量子の投入が待ち望まれます。

なぜ半導体量子コンピュータは半導体技術者にとって理解しづらいのか

多くの要望やヒアリングを通じて明らかになってきたのは、半導体技術者が量子コンピュータの原理や仕組みが理解しづらいということです。なぜそのようなことが起きるのかを議論していると、そもそも現在出ている量子コンピュータの方式と半導体は関連が薄く、特定の方式のニュースがメインとなっているからだということがわかってきました。

量子コンピュータとは、量子と呼ばれる物質やエネルギーの総称で、電子や原子やイオンや光子など、極小の世界のものを指します。どの量子を利用するかで世界では様々な種類の量子コンピュータが開発されています。一番ニュースでよく見るのが超伝導と呼ばれる電子の対を利用するもの。イオントラップと呼ばれるイオンを利用するもの。光量子コンピュータは光ファイバーやナノフォトニクスチップを使って光子を利用します。原子核と電子の両方を利用し、電気的な偏りのない中性原子と呼ばれる方式もあります。このように様々な量子コンピュータが開発されています。特に日本では、光と超伝導の開発が活発なため、主にこの二つが量子コンピュータそのものとして紹介されますが、実際にはそうではなく、様々な方式があります。

つまり、半導体技術者が得意とする半導体方式のニュースがないため、超伝導や光量子だけが量子コンピュータだと思われているのが現状な上、国としてこの二つの方式に力を入れているためにこれら以外の方式があまりニュースにならないという状況です。半導体技術者には半導体と電子を利用した半導体量子コンピュータを学んでもらわないとそもそも理解できないという状況です。

ということで、理解しづらいハードウェア原理はそもそも分野が違うと割り切り、半導体を利用してどのように量子コンピュータを作成するかに特化して学ぶことで効率的に量子コンピュータの原理を理解することができると思われます。

ここでは、そのような半導体に特化して量子コンピュータの原理や操作、作っていくかを素人ですがなんとか解説してみたいと思います。

単一電子のスピンを利用して計算を行う

半導体量子コンピュータでは従来のコンピュータとは異なり、単一の電子を利用します。単一の電子はそのままでは計算に利用できませんが、そこに縦磁場と呼ばれる磁場をかけることで、エネルギー準位差が生まれ、0と1を作り出すゼーマン分離によって計算に利用することができます。磁石のNとSのように、磁場を通じて電子のスピンの向きを決めます。実際に半導体量子コンピュータでは、チップの載っているサンプルホルダーの外側に強力な磁石を準備してチップに外部から磁場をかけてゼーマン分離を実現します。

電子に外部から強力な磁場をかけることでスピンの向きによって0と1を作り出し、そのスピンを操作することで計算を行います。電子のスピンの操作にはさらに外部から磁場をかけることでラビ振動やラーモア歳差運動と呼ばれるスピンの向きの二軸での操作が可能となります。

単一の電子は量子ビットそのもので、複数の量子ビットの操作が複雑に絡み合う場合には表現ができないのですが、そうでない場合には、電子のスピンの向きと量子ビットの状態をブロッホ球とよばれる三次元の球で表現します。

Smite-Meister - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5829358による

https://ja.wikipedia.org/wiki/ブロッホ球#:~:text=ブロッホ球(ブロッホきゅう、英,表す表記法である。

縦がZ軸、横はXとY軸です。中心から伸びる矢印の向きが電子のスピンの向きを表します。

量子コンピュータの計算原理、量子の重ね合わせと量子のもつれ

ハードウェアの原理を見る前にソフトウェアから見てみます。量子コンピュータのソフトウェアは電子に操作を施し、時間的に電子の状態を変化させていきます。量子コンピュータのソフトウェアでは、このような時間的な操作を左から右に音符の楽譜のような「量子回路」を記述して実現します。量子回路といってもハードウェアとして回路が実装されているわけではなく、あくまで単一の電子があるだけで、その電子をどのように時間で操作するかがこの量子回路に記述されています。

量子回路の一番左側は量子ビットの番号となっていて、単一の電子に施す操作である1量子ビットゲートと複数の電子に同時に施す操作である2量子ビットゲートがあります。3量子ビット以上に同時に施す3量子ビットゲート以上は、通常1量子ビットゲートと2量子ビットゲートの組み合わせで実現します。

こうした量子回路を構成する量子ゲートは電子に対する操作を表しており、それぞれの記号はどのように電子を操作するかを記述したものです。具体的にはスピンをどれだけ回転させるかの回転角度と、どの方向に回転させるかの軸をしています。例えば、上記のHはZとX軸の斜め45度の軸で180度回転。RZはZ軸周りに任意の角度を指定して回転。RXはX軸周りに任意の角度を指定して回転というように読みます。

こうした操作で計算を行う際には、量子の重ね合わせと量子のもつれと呼ばれる新しい考え方を導入して計算を行います。

通常スピンの向きがZ軸上で上向き、もしくは下向きの場合には、計算結果の読み出しは0もしくは1が確定します。一方、スピンの向きがXやY軸にある場合、0と1の読み出しは50%ずつ確率的に行われます。つまり計算をした結果はときどき0でときどき1となります。量子コンピュータのソフトウェアではこのような概念をうまく利用して計算をしますので、計算結果は確定的でなくても大丈夫です。

スピンの向きがXY平面上にあれば、0と1は50%ずつですが、そうでなく、軸が少しずれている場合には0と1が出る確率は、例えば20%と80%のように変わることもあります。量子コンピュータの計算では、複数回計算し、このような出現確率を大数の法則で捉えるなど様々なソフトウェア手法が開発されています。近年の量子コンピュータではこのように複数回同じ計算を行なって、確率的に求めた答えの分布を利用するサンプリングと呼ばれる手法も定着しており、2018年にGoogle社が発表した量子コンピュータでの量子超越はこのようなサンプリングを利用しています。

0と1が確定的に出ないで、確率的に出る状態のことを量子の重ね合わせと呼びます。

そして、上記の量子回路にXと棒で繋がった操作がありますが、これは条件付きの2量子ビットゲートと呼ばれており、片方の量子ビットが0の場合には操作をせず、1の場合にはX軸周りに180度回転するという操作に対応しています。先ほどの量子の重ね合わせとこの条件付き量子ゲートを組み合わせることで量子ビット同士の操作を複雑に絡み合わせることができ、量子のもつれと呼ばれています。

量子コンピュータではこの量子の重ね合わせと量子のもつれを利用して複雑なアルゴリズムやソフトウェアを実現します。また、それらの操作を利用せずに、0と1を確定的に利用することで、現在のコンピュータの論理演算も再現できることから、「汎用量子コンピュータ」と呼ばれています。汎用性があるので四則演算などもできはしますが、エラーが多くあまりそのような計算をしてもメリットがないので、現在は量子コンピュータ特有の計算のみが注目されています。

参考資料

ここからはハードウェアの話を頑張ってみたいと思います。僕は専門家ではないので間違いがあるかもしれませんが、ここから先は下記の資料を中心にまとめて記述します。

Architecture All Access: Quantum Computing

https://www.youtube.com/watch?v=-5fKVn1GR9Y

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その1~素子構造~)

https://quanta087.hatenablog.jp/entry/2017/03/17/135316

あとは、産総研の森さんの資料などを参考にしました。

半導体量子ビット(電子)

まずは量子ビットを作成する必要があります。量子ビットは半導体の場合には電子そのもので、電子を空間的に閉じ込め、固定する必要があります。超伝導の素子はギリギリ肉眼で見えるほど大きいものですが、電子は微小で見えませんので微細化に向いています。

インテル社の動画や森さんの資料をもとに断面図を書いてみました。従来の計算機では電子は流れていてスイッチのように計算をしますが、量子コンピュータでは電子は固定されています。固定するために下記のような断面になっていて、電子は左右に貯蔵されて、必要なぶんが中央の計算領域に固定されるようです。

このように空間に電子が固定され、外部から磁場かかるとスピンに方向性ができ、計算をできるようになります。

初期化

スピンの向きで量子ビットの値を初期化する必要がありますが、ソフトウェア的には0に初期化をして利用します。

量子ゲート操作

量子ゲートの操作はスピンの操作に対応していましたが、外部磁場と直行する方向に磁場をかけることでラビ振動を起こし、回転操作をすることができるそうです。この辺りは今後フォローしようと思います。

読み出し

読み出しなどありますが、まだ調べていませんので今後やります。

クライオCMOS

量子ドットは冷却が必要で、1K程度の冷却が行われます。冷却はクライオスタットと呼ばれる一式の冷却設備で行われます。主に4Kと1Kの温度ステージがあり、1Kに量子ドットチップが置かれます。量子コンピュータでは測定機器や制御機器は常温に置かれ、大きな場所を取りますが、これから4Kステージにステージにチップ化する事で大幅な小型化ができるようで、このようなクライオCMOSと呼ばれるチップは今後の開発において重要な要素なると期待されています。

類似商品

中国の深圳では、この量子ドットの類似のNMR型のデスクトップ型量子コンピュータが2量子ビット100万円で販売されています。こちらは磁石に小型の常温型の磁石を使い、電子のかわりに原子を利用してスピンで計算しているため、参考になるかもしれません。

https://mag.switch-science.com/2022/09/19/spinq/

まとめ

まずは半導体を利用したコンピュータの仕組みと、操作について確認をしました。最近では論文もかなり増えていて情報もこれから出ると思いますが、情報が出る頃にはさらに最先端では先に進んでおり、追いつけないという事態になりますので、早めのキャッチアップをお勧めします。以上です。

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