こんにちは、量子コンピュータの社会実装実例に興味がありますよね。今回は光量子コンピュータと創薬関連の話題です。参考にするのは、カナダのベンチャー企業であるXanaduとProteinQureの発表した論文です。
Molecular Docking with Gaussian Boson Sampling
https://arxiv.org/pdf/1902.00462.pdf
XanaduとProteinQure
最近カナダのトロントは機械学習以外にも量子コンピュータ関連が盛り上がっており、トロント大学やウォータールー大学を中心に最新技術を用いたハードウェアやソフトウェアが盛り上がっています。Xanaduは量子機械学習向けのツールや光量子コンピュータ向けのツールやチップを作っており、最新の企業評価額400億円で100億円の調達を行い、光量子コンピュータ向けのチップ開発を本格化することをアナウンスしています。
一方、ProteinQureは機械学習や量子コンピュータを利用した創薬計算などにおいて世界的に有名な企業で、これまで量子アニーリング、量子ゲートなどマシンの種類を超えて様々な最新手法を発表してきました。今回は光量子コンピュータという別方式の計算を利用した創薬計算をシミュレートしていますので、見てみたいと思います。
中国科学技術大学の量子超越
2020年に中国科学技術大学のチームが光量子コンピュータを利用してガウシアンボソンサンプリングと呼ばれるサンプリング計算において、量子超越を達成というニュースがでました。スパコン富岳で6億年かかるけいさんを200秒で完了したという計算が今回利用されているGBSです。
光量子コンピュータの計算方式は量子コンピュータと異なる
現時点では光量子コンピュータの計算方式は普通の量子ビットタイプの量子コンピュータとは異なり、光連続量計算と呼ばれる手法を利用します。光は光子として空間を飛び回るので、光の経路を指定して、ゲートを配置する必要があります。
GBS
ガウシアンボソンサンプリングについての詳しい紹介はこちらからお願いします。弊社の永井とインド工科大学からのインターンのDevanshuが記事を書いてます。
中国発の光量子計算による量子アドバンテージで用いられた手法の解説
https://blueqat.com/cc7a5408-5d18-4c4a-bd32-4d5306813760/d63e091c-427d-41f4-8715-26d2cc2a6cf9
Introduction to Gaussian Boson Sampling
https://blueqat.com/Devanshu%20Garg/2368d453-86f4-4d47-9ddc-5322ba2e9554
ボソンサンプリングは入力した光子が出力される分布を予測するものですが、単一の光子の入力が難しいということから、スクイーズド状態で入力をして分布を予測するガウシアンボソンサンプリングが提唱され、近年の光量子コンピュータのベンチマークに利用されています。
GBSとグラフ問題
GBSの出力分布は行列のハフニアンで決まり、ハフニアンは組合せ最適化問題などのグラフ問題に落とし込むことができるということで、今回は特定のグラフ問題に落とし込みをしています。そして、創薬問題をグラフ問題に落とし込み、GBSとの関連を提案しているのが今回の分子ドッキング法になっています。GBSを用いるとパーフェクトマッチング問題や最大クリーク問題などが解けるということで、リガンドとレセプターの結合について組合せ最適化問題が利用されています。
まだシミュレーション、今後は実機
このようにハフニアン定式化を行うことで、GBSを用いたグラフ問題を解くという方針で光量子コンピュータの社会問題適用が考えられています。今後は実機への実装などがポイントになると思いますので、光量子コンピュータのハードウェア開発状況に合わせて注目していきたいと思います。
blueqatではphotonqatなどの光量子コンピュータ向けのツールを開発
blueqat社では、上記の光連続量計算をツールとして実装したphotonqatを無料で提供しています。pythonを利用し、社会問題を光量子コンピュータ向けのプログラミングに落とし込むことができます。ぜひご活用ください。以上です。