WIREDのイベントを終えて──量子コンピュータをより未来志向に
先日、WIRED主催のトークイベントにて、編集との対話形式で登壇する機会をいただきました。専門家としてプレゼンするのではなく、対話を通じて量子コンピュータの現在地やこれからの可能性を語るという形は、非常に新鮮で、自分自身にとっても気づきの多い時間となりました。
参加された方々も非常に熱心で、さまざまな分野に関心を持つ方が多く、量子コンピュータという最先端技術に対する期待や疑問が、とてもリアルに、そして深く届いてくるように感じました。
その中でいただいた質問の数々は、従来の専門的な議論とは異なる切り口で、まさに視点を拡張してくれるものでした。研究者同士の場ではなかなか出てこないような問いかけに触れることで、自分自身の思考の幅も広がった実感があります。
世界はすでに未来を見据えて動いている
イベントを通じてあらためて感じたのは、量子コンピュータはいま、長年の科学的取り組みの集大成でありながら、すでに次の時代に向けた準備が始まっているということです。
中国やアメリカでは、量子技術に関して国家レベルで未来を先取りするような動きが加速しており、その予算規模や開発スピードは日々進化しています。研究の難易度や求められる成果も急速に高まってきており、競争のステージ自体が変わりつつある印象です。
日本が取るべき「少数精鋭の先読み戦略」
では、日本はどうするのか。
そう自問したときに出てきた答えは、**「王道を極めながら、さらにその先を読みきること」**でした。
日本には、潤沢なリソースがあるわけではありません。しかし、だからこそ着実に、そして深く技術を掘り下げる文化と知恵がある。王道を大切にしつつ、米中が見ている未来のその先を見通し、限られた人材と予算で、最先端の技術領域を先導する戦略が求められているのではないかと強く感じました。
アプリケーション開発──研究と商用の間で
また、イベントを通して感じたのは、量子アプリケーションの開発における「研究」と「商用」の立ち位置の違いです。
たとえば量子シミュレーションは非常に魅力的な領域であり、学術的にも重要です。しかし、商用ベースでのスケーラビリティやマネタイズを考えると、必ずしも一致しない部分があります。
だからこそ私は、あえて市場規模が大きく、現時点でも明確な需要がある領域──AIとの融合など──に焦点を当ててアプリケーションを展開していくことが、いま必要な道だと再認識しました。
技術を社会に届けるために
量子コンピュータという技術は、未来を作るための道具であり、社会と技術が交差する“翻訳点”をどう作るかが非常に重要です。
今回のようなイベントで、技術そのものではなく「その先にある可能性」を共有し、多様な視点からの対話が生まれたことは、非常に貴重な経験でした。
そして、私自身もこの先、より未来志向で、より社会実装を意識した技術開発とコミュニケーションに力を入れていきたいと思います。