半導体量子コンピュータの実用化を加速する既存技術の活用
半導体量子コンピュータの開発が進む中、その大きな特徴として浮かび上がってきたのは、従来の半導体産業の技術や部品を広く活用している点です。これは量子コンピュータの実用化と普及に大きな影響を与える可能性があります。
冷却システムの簡素化
半導体量子コンピュータでは、従来の量子コンピュータで必要とされた大掛かりな希釈冷凍機ではなく、4KGM冷凍機やパルスチューブ冷凍機といった比較的シンプルな冷却システムが採用されています。具体的には住友重機械工業製の冷凍機が利用されるケースが見られます。
弊社blueqatやアイルランドのEqual-1では住友重機械工業製の冷凍機を利用しています。
住友重機械工業
配線技術の進化
配線については同軸ケーブルやDC配線が使用されていますが、特にインテルを中心としたデジタル方式の開発が活発に進められています。デジタル方式は電圧でのブロックパルス制御を可能にし、室温機器の大幅な簡素化をもたらします。キーサイト、チューリッヒインストゥルメント、アンリツなどの既存メーカーの製品が活用されています。
キーサイト・テクノロジーズ
アンリツ
半導体チップの製造基盤
最も重要な量子チップ自体も、TSMCやサムスン、グローバルファウンドリーズ、インテルなどの既存の半導体ファウンドリーの製造プロセスを利用して作られています。プレーナー技術だけでなく、最近ではFinFET技術も応用されるようになってきました。ウェハも基本的にはシリコン(Si)をベースとしており、既存の半導体産業の延長線上で開発が進められています。
TSMC
サムスン
GF
インテル
また設計には既存半導体・量子半導体の両方の設計技術が必要で、弊社blueqatでは、実績のあるTOPPANホールディングスのデバイス事業部と設計を行っています。
TOPPANホールディングス
材料開発の動向
ASPIのような企業は、より性能の高い量子素材の開発(成膜用のガス)に取り組んでいますが、基本的には既存の半導体技術をベースにした改良が中心となっています。
ASPI
今後の展望
今後1〜2年の間に、既存の半導体企業からの量子コンピュータ市場への参入表明が増えると予想されています。これらの動きは、半導体量子コンピュータの実用化と普及を大きく加速させる可能性があります。業界のニュースに注目していくことが重要でしょう。
半導体量子コンピュータが既存の半導体技術や部品を活用できることは、開発コストの低減や製造の効率化、さらにはスケーラビリティの向上につながる重要な利点です。量子コンピューティングの実用化に向けた大きな一歩となるでしょう。