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なぜ量子コンピュータの研究費を増やしても欧米に全く追いつかないのか

Yuichiro Minato

2021/08/24 09:14

#ハードウェア

こんにちは。多少調子に乗ってたくさん記事を出しています。最近の弊社の動向からなぜ日本は十分な研究費がありながら欧米に全くかなわないのかを考察してみたいと思います。

現在弊社では2018年にSBIインベストメント様から調達させていただいた2億円の資本金および資本準備金をもとに活動を行っております。そして、年間の弊社のクラウドや量子コンピュータにかける開発費は大体1.2-1.5億円の間となっています。2018年から約三年間の活動でおおよそ3-4億円程度の予算を量子コンピュータにつぎ込んだことになります。弊社は研究主体のコンサル型の企業ではなく、エンジニアリング中心ですのでかけた予算の多くはシステム構築に使っており、積み上げ型のベンチャー企業と言えます。簡単に言うと2億円の資本金をベースに事業を少しずつ拡大し、資本金の倍程度の予算をかけたシステムを手に入れております。また、弊社ではここ数年国プロゼロ、助成金ゼロ、外部研究費ゼロを達成し、民間での量子コンピュータや機械学習の収益のみで企業の運営を回して純粋に産業化を達成しています。

こうした徹底的な企業運営が実を結び、日本では無理と言われていたGoogleやIBMなどと同じ量子コンピュータクラウドシステム領域・SDK運営での事業化を継続することができています。

このように、産業化を通じて得られる予算というのはかけた予算以上の成果があるというのが現状です。量子コンピュータを本格的に早期の産業化に取り掛かる理由は明白で、資本を複利的に増強することができるからです。欧米はこの流れがうまくいっており、早期の産業化を達成し、GoogleやIBM主導での研究を飛び出したビジネス化を大きく推進することでムーブメントを作り上げています。

日本はまだこの流れについていけてはいません。また、産業化は量子アニーリング方式という、Google/IBM/Amazon/Microsoft/Alibaba/Huawei/Tencent/Baiduなどが採用している量子ゲート方式とは別方式を取っているので、欧米のような大きな果実は期待できないのが現状です。ただ、一方で必ずしも欧米の路線が正しいというわけでもありません。実はGoogleやIBMは頻繁に路線の変更をしているうえ、彼らの戦略が正しいとは限らず、一部では無理をしているようにも見えます。そのため、その間隙を突くように冷静なAmazon社やMicrosoft社は無理に量子に対する投資を加速させず身の丈に合った投資と運営をしています。また、Google社もインタビューで発言している内容と実際のリリースは別のことをしていて、ダブルスタンダードを駆使して見かけの損失を減らしているようにも見えます(GCPにおいて、自社の超伝導よりもIonQのマシンのリリースを優先した)。IBM社は量子コンピュータ業界においては比較的正直な企業で、愚直にいいものを求めている唯一の企業に見えます(ただその分割を食ってる感じはします)。海外の企業は実利がないととてもうまく物事を見せるような戦略をとることがあり、量子コンピュータのような得体のしれない分野においてはそれはものすごくうまくいっているように見えます。

これまで弊社は7年間量子コンピュータ専業としてやってきました。これは海外のベンチャー企業と比べても格段長いわけではなく、量子コンピュータ業界全体が長いスパンにどうしても押し込められています。また、欧米の戦略が正しいとも限らず、海外でも常に量子コンピュータに対する議論がわいており、どの道が正しいかは米国であってもわかっていません。ただ一方、近年確実に進んでいるのがハードウェアです。ハードウェアは作ると目の前にありますし、それを使うということに関しては、以前に比べてすごいゆっくりではありますが、確実に一年ごとにできることが増えていますし、以前ではできなかったことがどんどんできています。

最近ではハードウェア分野でもアイルランドやスウェーデン、オーストラリア、フランス、オーストリアなど、必ずしも超大国でなくてもいい量子ハードウェアベンチャー企業が登場してきているのが特徴です。ハードウェアの産業化にはサプライチェーンが必須ですし、量子コンピュータに対する投資が右肩上がりの今、サプライチェーンを含む量子コンピュータハードウェアのエコシステムが急速に固まってきています。

量子コンピュータの欧米のイノベーションはしばらくソフトウェアではなく、ハードウェアからおこるでしょう。以上です。

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