仕事が辛くなるとポエムが増えます。
GPUクラスタを自前で運用するという選択と、その裏側
私たちはもともとソフトウェアを中心に事業を展開してきた企業ですが、近年では機械学習や量子計算といった高負荷計算の需要が急増し、それに伴いGPUクラスタの導入と運用が必要不可欠になってきました。
クラウドGPUサービスも多く登場していますが、まだまだ運用コストが高く、継続的な検証や開発用途で使い続けるには予算的に難しい場面が多々あります。
そのため、現状ではコストを抑えるために物理サーバーを自前で構築・管理するという道を選んでいます。
想像以上に“地味で大変”
GPUクラスタと聞くと、高性能な計算装置でスマートに並列処理を回すような、どこか格好良いイメージを持たれがちですが、実際の運用は想像以上に地道で泥臭い作業の連続です。
中古やバラ売りのGPUを組み合わせて価格を抑えながら、PCIeレーン数やマザーボードの対応状況を確認
消費電力の見積もりと電源ユニットの選定、分岐ケーブルの手配
ケースに収まらない冷却ファンや大型ヒートシンクとの格闘
ラックに収まらないサイズの筐体とにらめっこ
熱暴走対策のためのサーバールームの即席改造
など、「これ、ソフトウェア屋がやることだったっけ?」と首を傾げたくなるような作業が続きます。
管理コストの“見えない重さ”
クラスタを自前で運用するというのは、金銭面でのコストを抑える代わりに、人的・時間的なコストがかかるということです。
再起動しないノードの調査
GPUの温度監視とファン制御
ドライバとCUDAのバージョン整合性地獄
電源やネットワークの突発的なトラブル
予期しないBIOS初期化
など、ソフトウェアだけを相手にしていた頃にはなかった“手間と気力の消耗”が日々の業務に忍び込んできます。
それでも選んだ理由
この苦労をしてでも、自前運用を選ぶ理由は明確です。
予算が限られているから。そして、ハードウェアの特性や制約を深く理解することが、次世代の技術開発につながると信じているからです。
確かに楽ではありません。むしろ、精神的にはかなりきついです。
でも、自分たちでクラスタを組み、運用し、問題を一つ一つ解決していく中で、以前よりもずっと「ハードウェアと向き合う力」がついてきている実感もあります。
量子コンピュータやAIを扱う時代において、ソフトウェアとハードウェアの境界はどんどん曖昧になっています。
クラウドの裏側、FPGAやASIC、GPUの詳細な制御や冷却までを理解してこそ、本当の意味での最適化や革新が実現できるのかもしれません。
だから今日も、手間のかかる自前クラスタと向き合っています。