こんにちは。量子コンピュータで新しい技術はワクワクしますよね。今日はホログラフィック・ダイナミック・シミュレーションです。こちらの論文をみてみます。
Holographic dynamics simulations with a trapped ion quantum computer
https://arxiv.org/abs/2105.09324
以前はholographic VQEを紹介。
https://blueqat.com/yuichiro_minato2/904b413e-e1da-4102-b9b8-82bd60184246
前回はテンソルネットワークのMPS状態を折りたたみ、MCMRを使うことでMPSをコンパクトに結合次元+1量子ビットで少ない量子ビットで大きな計算ができました。回路にパラメタライズド量子回路を利用することでVQEが実行できます。今回はMPSの初期状態にさらに時間発展を使って横磁場イジングモデルTFIMを実行しています。
下記では横が量子ビット、縦が時間方向です。青いのはMPSで、結合次元dが設定されています。このMPSに対して時間方向に時間発展演算をしています。
時間発展で横磁場イジングモデルの計算をするには、横磁場とイジング・局所磁場の計算を交互に時間発展させています。
前回のホログラフィックVQEから工夫されている点は、MPSのテンソルの階数が4になっていて、量子ビットの出力がスピン2つぶんになっています。サンプルを取る際には、隣接の2スピンずつ取るようになっています。
これに対応する量子回路は、
このようになります。隣接2量子ビットはまとめてサンプリングされ、隣接のテンソルと結合次元2^nbで結合しています。これは、量子回路でのMPSを使った際の折りたたみ方を適用する必要があります。
これを時間発展させると、量子ビットをかなり節約して時間発展計算ができます。必要になる量子ビットは時間発展方向の時間によります。
今回は、実機を使って、self-dual kicked Ising (SDKI) modelと呼ばれるものの32スピンの計算を9量子ビットで行っています。
まだそこまで複雑な計算はできていないように見えますが、以前のMPSを使ったholoVQEよりは格段にテクニック的にも進んでいるのが確認できました。以上です。