純国産半導体量子コンピュータ向け冷凍機の最前線:マグネット選択と冷却技術
純国産冷凍機一号機の誕生
半導体量子コンピュータ開発において、適切な冷却環境の確保は極めて重要です。昨年早々、純国産の半導体量子コンピュータ向け冷凍機一号機が完成し、量子コンピューティング分野における国内技術の進展を示す重要な一歩となりました。今年は二号機にとりかかっています。
マグネット選択の重要性
半導体量子コンピュータ向け冷凍機において、最も重要な設計要素の一つがマグネットの選択です。現在、大きく分けて二つのアプローチが存在します:
- 超伝導マグネット方式: 一号機が採用しているこの方式は、強力で安定した磁場を提供できますが、比較的大型になる傾向があります。
- 永久磁石方式: 一部の企業が採用するこの方式は、装置全体をよりコンパクトにできるメリットがあります。
今後しばらくの間、多くの半導体企業はマグネットを設置し、マイクロ波制御技術を用いてビット数の増加を目指すと考えられます。この選択は量子コンピュータのスケーリングと性能に大きく影響するため、極めて重要な設計判断となります。
弊社のアプローチ
私たちはハードウェアメーカーではないため、異なるアプローチを追求しています。具体的には、マイクロ波を使用しない制御方式を開発することで、より小型で効率的な量子コンピュータの実現を目指しています。これにより、将来的には装置の小型化と実用性の向上が期待できます。
冷却性能の現状
半導体量子コンピュータの開発メーカーは、一般的に1Kという温度帯をターゲットとしていますが、実際には0.3-0.5Kという、より低い温度での動作が達成されています。注目すべきは、これらの温度帯が高価な希釈冷凍機を使わずとも、市販のGM冷凍機を利用して達成できている点です。
弊社でも、住友重機械工業製の4KGM冷凍機を活用してハードウェア開発を進めています。このように、冷却技術の進歩により、より現実的なコストと規模で量子コンピュータの開発が可能になってきています。
今後の展望
半導体量子コンピュータ向け冷凍機技術は、マグネット選択と冷却効率の最適化を中心に、今後も急速に発展していくでしょう。特に、商用化を見据えた小型化・低コスト化の流れは加速すると予想されます。
純国産技術の発展は、量子コンピューティング分野における日本の競争力強化につながるものであり、引き続き注目していく価値があります。