この度、半導体を利用した量子コンピュータの開発があまりメジャーでないという指摘をいただきました。
正直半導体技術者向けに量子コンピュータの説明をする際には、一旦超伝導やイオン、原子、光マシンなどは全て忘れていただいて、半導体を利用してどのように量子コンピュータを作るのかの一点に集中していただいた方がわかりやすいという結論に達しました。
シリコン量子ビット:汎用量子コンピューター実現へ期待の星
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00425/
半導体を利用した量子コンピュータは最近インテル社が商用製造ラインでの製作に成功した通り、半導体技術のみで作成が可能です。今後はどのようなものを設計すれば半導体で量子コンピュータが作成できるかの一点に絞って各社や個人と連携しながら情報収集と公開を進めていきたいと思います。
「シリコン量子ビットは、シリコン上に10nm(ナノメートル)ほどの小さな領域(量子ドット)を形成し、そこに閉じ込めた電子を制御して演算に利用する。磁場で電子スピンに2準位系をつくり、マイクロ波を使って電子状態を操作(重ね合わせ)して演算するといった仕組みだ。」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00425/ より
一般的にスピン量子ビットは単一電子を閉じ込め、そこにマグネットにより磁場をかけてマイクロ波を利用し、スピンを制御します。量子コンピュータを作成する際には、これまでの製造技術の延長で作成が可能で、半導体技術が必要になるのは、量子コンピュータの核となる量子コンピュータの素子である量子ビット(電子)とそれらを制御し読み出しを行う極低温CMOSチップの二つとなります。一つの量子チップ上に量子ビットと普通の半導体を混載させるSoCも可能と言われています。
「産総研デバイス技術研究部門上級主任研究員の森貴洋氏のチームは2021年に半導体製造技術を応用して、FinFET構造を採用したシリコン量子ビットを日本で初めて作製した(図1)。」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00425/ より
シリコン層に配置された量子ドット(電子)を各ゲート電極で閉じ込めたり操作したりというふうに利用されます。このような仕組みの半導体チップを設計することが半導体量子コンピュータで達成すべき作業です。
また、これらの読み出しや制御は多くの量子ドットを扱うために常温領域まで引っ張ってくるのには多くの配線が必要になります。そのようなものを減らすためには低温領域での制御読み出し機構を開発する必要があり、現在の多量子ビットの課題はこのような常温でのエレクトロニクスの金額や分量が膨大となっていることがあります。
ぜひ半導体技術者の方で興味ある方は、今のうちにこのような半導体量子コンピュータの仕組みに触れていただくことでより今後もキャッチアップしやすくなると思います。
以上です。