量子コンピュータの実態を見つめ直す
半導体業界に少し関わってから、私の量子コンピュータに対する見方は大きく変わりました。
現在世間に出回っている「量子コンピュータ」は、実際のところ完全な「計算機」と呼べるものなのでしょうか?
結論から言えば、現在の量子コンピュータは本格的な量子計算機への道のりにある「プロトタイプ」や「試作機」の段階だと考えています。
将来実現される本物の量子コンピュータへの過渡期にあるものです。
半導体と量子コンピュータの本質的な比較
量子コンピュータを理解する上で見落とされがちな重要な点があります。
それは、量子コンピュータが本質的には「汎用計算機」であり、既存の半導体で実現されている論理計算も実行できるということです。
現在の量子コンピュータはアナログ的な性質が強く、従来の半導体ベースの論理計算を再現するという視点が軽視されているように感じます。
しかし、真の計算機としての複雑性を確保するためには、既存計算機と同様の汎用論理演算能力が不可欠になってくるでしょう。
時間方向への論理展開という新発想
従来の半導体計算機ではCMOSトランジスタを用いて「空間的に」論理回路を構築していますが、
量子コンピュータではこれを「時間方向」に展開するという斬新なアプローチを取っています。
これは計算機アーキテクチャとして新しい考え方です。
未来への展望
これからの量子コンピュータ開発では、量子固有の計算能力だけでなく、
古典的な論理演算の実装や効率的な論理合成など、新たな方向性の探求が重要になってくるでしょう。
私自身、半導体技術をベースにした量子コンピュータの開発において、これらの新しいアイデアを実現していきたいと考えています。
量子コンピュータが真の計算機として成熟するには、量子力学的な特性の活用だけでなく、
計算機としての基礎的な論理能力の確立が不可欠だと信じています。
量子コンピュータはまだ発展途上の技術ですが、半導体技術の歴史から学びつつ、
新たな計算パラダイムを切り拓いていく過程は非常に興味深いものです。