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2018年に2億円調達して量子コンピュータを丸三年やってみたサービス・ビジネス・技術面の21年年末まとめ

Yuichiro Minato

2021/12/24 14:04

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こんにちは、とりあえず丸三年サービス開発をしてきました。そこで大きなビジネス面での気づきや技術面での気づきがありました。21年も暮れになり、年末が近づいてまいりました。いったんここまでのまとめをしたいと思います。

いかに量子コンピュータの面白さを伝えられるか?

2018年の10月、日本で最初に量子コンピュータのベンチャー企業としてSBIさまから調達をいたしました。

https://www.sbigroup.co.jp/news/2018/1015_11303.html

それまでは量子コンピュータベンチャー企業は雲の上の存在で、日本からはそういうベンチャーは出ないだろうと業界では言われていました。それから3年、世界で活躍するのは普通のこととなりました。当時とはマインドが全く違ってきています。もちろんまだ調達額や規模の面で世界には引けを取っている状況ですが、三年間やってきて今一番大事だと感じているのが、「いかに量子コンピュータの面白さを伝えられるか?」というコンセプトです。なぜそれが大事なのかは実際に最近起こっていることを説明させてもらってからお伝えします。

光量子コンピュータベンチャー企業BosoniQの創業

2021年に新しい光量子コンピュータのベンチャー企業BosoniQを立ち上げました。

https://bosoniq.net

きっかけは、量子コンピュータ業界の状況の変化にあります。実は量子コンピュータ業界は2019年にGoogleが達成した量子超越と呼ばれる報道がありましたが、あれを機に一気に業界が変わりました。簡単に言うとGoogleの達成したのはみんなが予想していたよりも悪い成績だったということです。量子コンピュータの性能はそんなに良くないのではないかという機運が高まり、それまでエラーが多くハイブリッドで開発がされていた量子コンピュータから、ハイブリッドをやめ、単体で性能を伸ばすほうに全世界の方向性が一気に向きました。FTQCと呼ばれる高性能量子コンピュータが実現されないと、量子コンピュータは本当の意味で実力を出し切れないという機運です。それによって、それまでのプレイヤー勢力図がガラッと変わり、業界はいったんすべてリセットされたような状況になりました。Googleも量子超越以降新しいハードウェアを開発していませんし、そもそもハードウェア責任者は辞任してしまいました。

そうした、量子コンピュータへの失望の代わりとしてやってきたのが新規のハードウェア開発です。米国ではその直後にIonQと呼ばれるベンチャーが高性能ハードウェアをひっさげ、少ない量子ビット数で高性能を実現し、最近では誤り訂正も実現しています。チップ型ですが、空中にイオンを浮かしてレーザーで打ち込み、低温が必要なく真空のみで実現できるというものです。そのご2022年には冷却原子と呼ばれる原子をまた空中に止めて光ピンセットと呼ばれる手法で原子を動かして操作する新しい方式も出てきています。

光量子コンピュータはこの文脈の中で独立して発展し、独自のソフトウェア開発ツールをひっさげて登場してきました。米国のPsiQuantumやカナダのXanaduなどが有名ですが、最近は東大・NTTやフランスのQuandela、イギリスのORCA、中国のTuring、オランダのQuixなど世界中で2021年は、光量子コンピュータが立ち上がっています。

blueqatは前身のwildqatと呼ばれる量子アニーリング向けのツールを2017年に出していましたが、2018年には今の量子ゲート方式のツールであるblueqatを開発し、翌年にはクラウドサービスを開始しました。同じく2019年には実は将来的な流行を予測してphotonqatと呼ばれる光量子コンピュータ向けのソフトウェア開発ツールを世界で二番目に開発をしていました。しばらくそのツールは使われることがないと思っていたのですが、2021年突如として光量子コンピュータブームが世界中で始まり、日の目を見ることとなりました。

https://github.com/BosoniQ-github/Photonqat

もちろん光量子コンピュータが注目される理由は、Googleの開発した超伝導がうまくいかなかったため、代わりのハードウェアが熱望されているからです。しかし光量子はソフトウェアから違います。光連続量と呼ばれる光のアナログ性を利用したツールが2021年には必要になりますが、量子ビット型量子ゲートマシンのようには簡単に開発はできないことから、今後世界ではツール類はそうは出てこないと思われます。光量子コンピュータは独自の技術で世界中で競争されていきますが、業界としてはかなり安定しており、光技術や通信や暗号、センシングなど量子コンピュータ以外の用途にも幅広く利用されることから、くいっぱぐれのなさそうな分野No.1となっています。また、光技術は日本のお家芸なところがありますので、BosoniQも立ち上げ直後ながら多くのクライアント企業に愛されながら順調に成長を続けており、世界中から優秀な人材が集まっております。

光連続量計算はその計算手法からして今までの量子コンピュータとは違いますので、とても興味がわく内容です。光量子コンピュータというものがあり、そういったものを操作するためにはまた異なる理論を使ってやっていくという光特有の面白さがあります。

スピンアウトに際しては社内の優秀な人材を外に出すことにはなりましたが、業界全体が盛り上がっていますので正しい判断だったと思っています。

Quantum Business Magazineの創刊

日本の量子コンピュータ業界はかなり閉鎖的で遅れています。今世界のニュースはリアルタイムで翻訳されてはいってくるにもかかわらず、海外の大手企業の動向を無視する形で進んでしまっており、GAFAのような大手は遅れた日本の状況を今後一気にひっくり返すこととなり、ガラケーに対するスマホやガソリン車に対するEVと全く同じ構図となっています。

そうした現状を何とか回避したいという思いで、米国のQuantum Computing ReportのDougの協力を得て、Quantum Business Magazineという全世界の最新の量子コンピュータの情報をほぼリアルタイムで日本語でお届けするという活動を始めました。

https://www.quantumbusinessmagazine.com/

メディアには中立性も必要なことから、運用にはかかわらずあくまで第三者的な立場でかかわっていますが、予想通り国内でこうした最新のニュースを活用し、株式取引や新規事業の立ち上げ、海外の最新情報の取得に活用いただいており、さっそくアクセス数が増えています。

世界のニュースでは、部品の産業化、ツールの産業化のほか、量子メモリや最近では光量子コンピュータ向けのチップの販売などさまざまな珍しいニュースが見られます。そうした最新のニュースを追うことで、ビジネス面でのひっくり返される不安をなくすというもの大事です。

イオントラップ方式や冷却原子、光量子コンピュータなど最新の海外ニュースがリアルタイムで手に入り、最近では予想通りシリコン型の量子コンピュータのニュースも登場するなど、まさに世界の最先端の情報がほぼ毎日リアルタイムに無料で入ってきます。

これまでの日本の量子コンピュータに対するメディアの立場というのは特定の企業や団体の宣伝が多く、世界の最先端の潮流から大きく外れとても危機感を感じさせるものでした。国内の多くの方が考えている量子コンピュータと世界の量子コンピュータの現状は大きく違っていますが、このメディアのおかげで、米国の考えかたを導入し、情報に敏感な方は乗り遅れないで済むのではないかと思っています。

また、有料のデータベースでは世界の最先端の量子コンピュータのデータ一覧が提供されており、そちらも日本語での提供を始めております。まさにGoogleやIBMだけでなく、世界に乗り遅れない情報が提供できています。

シリコン半導体量子コンピュータの開発

弊社では2018年から超伝導量子ビットの開発を行っているハードウェアの担当部署があり、国の研究所から複数年開発委託を受けて人材の派遣や委託開発をおこない、経産省の下で量子コンピュータハードウェアの知財も保持していました。2021年の3月にはそのハードウェアの開発もやめてしまい、人材や知財は産総研に移譲を行いました。上記Googleの影響はこういうところにもでており、次世代型のハードウェア開発が切望されています。

弊社では現在多くの国研や企業様と組んでシリコン型の量子コンピュータの開発を行っています。上記のハードウェア開発実績をもとに、新型を開発しています。次世代型といっても簡単に開発はできませんので、慎重に行っていますが、上記超伝導で苦労したハードウェア開発体制の組み方に関してソフトウェア企業からの立場からリスクなく、みんな気持ちよく進められるノウハウがたまっていますので、きれいに役割分担がされています。

シリコン量子ビットを開発する企業は国内では、弊社blueqat/産総研と日立製作所さんとなりますが、微妙に開発思想などが違ってきますので、2チームあっても全く問題ないと思います。

https://www.opensiliconquantum.com/

多くの方々に賛同いただき、産業化のタイミングもばっちりでした。量子計算のノウハウ、ハードウェア開発ノウハウ。そして今回重要になるのが今後の知財戦略になります。半導体産業とタッグを組むことで、先日のSEMI JapanでもSEMI事務局に大変お世話になりました。国内の半導体産業を量子コンピュータの側面からぜひご協力しようと思います。この活動は、何とか今後の量子コンピュータの産業化に向けて、既存の半導体への投資を受け継ぐ形で大きな産業の柱としたいと思っています。技術的にも使う量子ビットは今回電子となりますが、どうやって電子を計算に利用するのかスピンという概念をもとにとても分かりやすいものとなっています。

また、今回の特徴はクライオCMOSや冷凍機の開発も行っている点です。シリコン量子ビットの特徴であるマシンの小型化についてはサーバーラックサイズ、デスクトップサイズが可能といわれていますので、日本の得意分野である小型化、最適化の観点からシリコンマシンの小型化を進めるための周辺機器の国内産業化を維持するための冷凍機およびクライオスタット開発もおこなっております。

現在チームで残り足りないのがクライオCMOSと呼ばれる制御・読み出し回路の低温チップ化です。これを抑えることによって小型化が実現します。ぜひ興味ある方はご参加下さい。その他、ウェアの開発、製造装置の開発など、あらゆる半導体製造設備及び素材メーカーに半導体量子コンピュータの産業化、収益化チャンスが訪れています。ぜひご参加ください。

ここまでblueqat cloud本体の話が全く出ませんが続きます。

イオントラップ企業の米国上場

最近大きな流れとしてイオントラップハードウェアを開発するIonQがNY証券取引所に上場しました。日本にはIonQを使っている企業はほとんどありませんから、多くの方が弊社のyoutubeや問い合わせに来ます。実際IonQから直接弊社のシステムが紹介されるなど、弊社もIonQのヘビーユーザーですので、毎日使っているからこそわかるツボがあります。

イオントラップ方式が弊社にはまったツボは二つあり、

1,組合せ最適化・機械学習と相性のいい全結合マシン

2,組合せ最適化と相性のいい2量子ビットゲートRXX/RZZなどを標準搭載

となっています。とにかくAIに必要なのは量子ビット同士の結合ですが、超伝導や弊社が開発するシリコンは隣同士としかつながっていないため、その点がネックになります。また、量子ゲートの種類もマシンによって可換ですが得意なところが微妙に異なり、イオントラップではモルマーソーレンセンゲートと呼ばれる複数量子ビットのゲートがベースとなったRZZゲートなどが標準装備となっていて、これが最適化などと大変相性がいいです。

このようにマシンによっての特徴があり、blueqatが得意とする組合せ最適化や機械学習にとってはIonQはとてもうってつけです。また、HoneywellとCQCがくっついた新しい企業も上場を目指しているとあり、そちらもイオントラップとなっていますが、HoneywellのマシンはさらにMCMRと呼ばれる特殊な機能がついていて、そういうのは僕が個人的に大変興味がある好きなマニアック機能となっています。

ほかにもIonQはイオンでマルチコアを実現したり、やりたい放題で2023年には今のコンピュータと同じサイズくらいの超小型マシンの登場をアナウンスしています。とても期待が持てます。それまで超伝導が主流だった業界にさっそうと現れて、イオンを空中に浮かせてレーザーを打ち込むなど、従来のコンピュータの常識を変えるようなマシンが普通に市場投入されているところがとてもこの業界の面白いところです。最新のニュースも使うイオンの種類をイッテルビウムからバリウムに変更しました見たいな、マニアックなニュースがマシンの性能に直結し、市場に影響を与えるのも面白いです。

原子を使ってスーパーマリオやインベーダーゲーム

新型マシンが来年出ます。本当にこの業界は今最新技術の展覧会みたいになってて、とてつもなく面白いです。上記イオンと違ってルビジウムを利用して、リュードベリ原子と呼ばれるものを使います。これは、光ピンセット呼ばれる手法を使ってレーザーで原子を動かして計算をします。リュードベリ原子はこれまでの超伝導やイオントラップとはまた異なり、リュードベリ状態と呼ばれる特殊な状態を計算に利用します。量子ビット数が1000量子ビット級が現実的に作れそうなところに来ており、多くの原子を光ピンセットでとらえることで数百単位での原子を操作することができます。日本の光技術も多くが使われている新世代のマシンです。

リュードベリ状態にある原子同士が近づくと片方しかその状態を維持できないという特性があり、そうした不思議な特性を計算に応用しています。当初は量子シミュレータと呼ばれる量子を使って原子のふるまいを直接シミュレーションし、既存コンピュータではできないような計算を目指しています。

とんでもない技術力である一方、計算の概念も大きく変え、これまで量子コンピュータ業界にはなかった量子シミュレーションを一般の社会問題に応用しようという試みでボストンのQuEraやフランスのPasqalといった冷却原子企業が原子を使ってスケジュールの問題や流通の問題を解くことにチャレンジしています。

アマゾン社のシステムにも2022年に早々に登場予定となっており、汎用計算もしくはリュードベリ原子量子シミュレータかどうかどちらが出るかが期待されます。

このように、量子コンピュータの最前線は量子計算だけでなくさまざまな計算の概念を持ち込みますし、世界の最先端技術の博覧会のようになってきました。原子分野もかなりの人材がおり、とても面白いです。

元に戻って量子の面白さを伝えられるか?

ここまで見てきて、量子コンピュータは単に計算をすればよいというフェーズではなく、過渡期でとても面白い試みがたくさんあります。IBMやHoneywellは回路途中でリセットをすることで誤り訂正や機械学習に新しい手法を導入します。イオントラップではマルチコア、分散型など新しいマシンも登場します。冷却原子ではリュードベリ状態を理解したうえでの量子シミュレーションや最適化計算、光量子コンピュータでは光連続量計算やそこから派生したGBSアルゴリズムの応用など、量子コンピュータをつかいこなすと一言でいっても、元の量子計算の概念を飛び越えた試みが多く出てきています。

これらのバリエーションはすべて、使う量子の種類が違うことに起因します。量子を社会問題に応用してビジネスをしようというのがすごい発想だなと今更ながら思いますが、空中を飛び回る光子と二次元にトラップされる冷却原子では応用される先も応用の仕方も全く違います。

そのような量子の個性を一つ一つ丁寧に理解し、量子コンピュータの実力が存分に発揮できるような最先端の現場に今私たちはいます。毎日新しいニュースが出ますが、みんな自分たちの方式が主流になると信じて多くの時間と情熱を費やしての開発が世界規模で行われていて、日進月歩のかなり熱い状況がまさに今です。

ビジネスとしての発展はまだまだハードウェアの黎明期なのですが、人材面では次世代の量子コンピュータを担うような人材が出始めており、すそ野が広がっています。今量子の面白さを次世代に伝えることによって、人材が広がり、さらにその次の世代につなげるという正のスパイラルが形成され始めています。

量子コンピュータをよくわかないけど流行っているし、何とかお金に換えたいというビジネス面の要望よりも、今は量子を利用することでどれだけ多くの人たちが多くの量子の解釈に基づいて新しい産業化を目指していて全く予想のつかない未来の世界に突入している未来のワクワク感みたいなのは今まさに感じられるとても面白い状況となっています。

3年間投資を受けて進んできたのは、ビジネス化という使命でしたが、量子を活用したコンピュータの勝者はまだまだ決まるのは未来になりそうです。そうした長い年月をもしかしたら次の世代まで引き継がないといけなくなるかもしれない状況で、どれだけ量子を楽しく面白くとらえ、ワクワクしながら長い産業化の道のりを進んでいけるか、途中であきらめないでやっていけるかは、しばらくの事業化の柱となるコンセプトではないかと思います。

さまざまなアイデアが出始めていますが、それらはまだまだ量子の世界をきちんと理解できているとは言い切れないものばかりで、今後量子の世界をより深く知ることによる知の好奇心をより強く働かせて量子を理解したものがビジネスの勝者となるというのも大変面白い状況かなと思います。

量子に興味がある、ロマンを感じるという人もとても多いと思います。量子の魅力に取りつかれ、それを仕事とできることはとても幸せなことなので、才能ある若い人を含め、老後を有意義に過ごしたいという人材含めて大きな人の渦ができ始めています。

細かいことはいまだよく見えないですが、複数のマシン、複数の方式、異なるツール。それぞれの量子の面白さを伝えられるようなサービスにしていきたいと思います。この3年で弊社のエコシステムや扱うビジネスの規模はだいぶ桁が上がりました。量子の世界に参加される企業は大手が主流で、ベンチャーをやっていて一生かかわりのないような大手企業様と多くの取引をさせていただいております。余裕がある企業も多いので楽しむということを前向きにとらえてもらえるという側面もあるかと思いますが、ますます量子の世界は楽しみになってきました。

以上です。

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