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[コラム] 量子コンピュータハードウェアとソフトウェア戦略の一貫性はとれているのか?

Yuichiro Minato

2023/10/21 22:13

こんにちは。秋は食事がおいしいですね。本日はよく相談に来る量子コンピューターのソフトウェアに関する戦略的な立場に関してです。

現在の量子コンピューターはハイブリッド方式と呼ばれる量子コンピューターと既存コンピュータを直列につないで交互に計算すると言うことによって、エラーを克服しようと言う試みで、アルゴリズムが作られてきました。 2021年頃には、そうしたエラーがある量子コンピュータをハイブリットで利用したとしても、量子化学・量子物理・組合せ最適化など全ての分野においてあまり有用なアプリケーションは無いと言う事がわかってしまい、最後の望みとしてあまり理論的な裏付けのない量子機械学習を実行するというのが現在世界で流行っています。 量子アニーリングでも全く同様なことが2018年ごろ起こったのですが、その頃の量子機械学習はうまくいきませんでした。ですので、今回もあまり期待しないで見守っています。

さて、このような状況ではコンピューターの開発が進んでいます。いろいろなアプリケーションを使いたい場合、現在の量子コンピューターやハイブリッド方式といったものの弱点や課題点を克服するためには、量子コンピュータアプリケーションに関しては、様々なソフトやハードウェア的な仕様があります。そうしたものを実現できるのは、どの方式かと言う非常に現実的で、かつお金がかかる問題に私たちは差し掛かっています。つまり、次世代のソフトウェアの要件を満たすようなハードウェアの開発が最も期待されると言うことが考えられます。

では、現在のアメリカの量子企業の株価を見ていましょう。公開されている株価は多くが全世界の期待感を持って見守られています。ですので、最近は量子企業の株価が大きな今後の期待感やロードマップの参考となります。

D-Wave

Rigetti

IonQ

各社が 同じような場所からスタートして、現在の株価に大きな差がついています。そのさは約10倍の差がついています。ではこのような差というのは直感的にどのような部分で判断をすれば良いのでしょうか実際にはこうした株価の判断と言うのは大変難しいです。しかし、自分自身の技術的な背景から考えると、非常に感覚とマッチしてるとみられます。その辺を少し解説してみたいと思います。

私たちの会社は、日本でも早くからカナダのD-Waveの量子アニーリングを利用してまいりました。日本で最初に提携したベンチャーと言うことでニュースにもなりました。 組合せ問題と呼ばれる問題をイジングモデルと呼ばれる物理モデルにマッピングし、量子計算機で計算をします。もう少し詳しい人でしたら、量子アニーリングと呼ばれる方式であるということがわかると思います。この理論は日本の研究者が提唱したと言うことで、日本でも大いに盛り上がりを見せていました。 私たちも毎年のようにこうした問題にトライしてきました。この方式にはいくつか問題があります。1つは理論的には良いのですが、その理論を実装すると言うことに非常にハードルが高いと言うことです。 現在主流の汎用的な量子ゲートの方式と同様、ハードウェアの実装に関して、理論的にきちっと量子アニーリングを実装できてないと言う課題があります。 そして現在世界で量子アニーリングを本格的に作っている企業がほぼないので、技術的な広がりがあまり見られず、今後1社だけでこうした業界を牽引できるほどの体力がないと言うふうに見えます。そのため、こうした技術的な課題をハードウェアにきちっと実装できるかどうかというのがかなり疑問視されているというのがあります。

次に理論的には量子アニーリングであったとしても、現在のコンピューターと同じように組合せ最適化問題の解く速度はあまり変わらないと言うことが最近の研究でわかってきています。 もともと速度向上や加速と呼ばれる現在の コンピューターで解けない問題が量子アニーリングマシンで解けると言う宣伝自体が間違っていたと言うことが課題です。そしてこの理論的な大幅な速度向上が現場で言うとあまり見られないと言うことが皮肉ですが、量子ゲート方式の量子コンピューターの検証によってわかり始めています。そのため、ソフトウェアやそのハードウェアの宣伝文句である理論そのもの自体が少しまだ時間がかかると言うことになると思います。 量子トンネル効果を利用したとしても、解ける問題はごくごく限られており、現在世界でもほとんど見つかっていません。ですので、そうした特殊な問題を解くために大きなハードウェアを購入して、現在のコンピューターとあまり速度が変わらないもしくは精度が落ちてしまうと言うようなものを使うと言うものが、あまりメリットがないというのはあります。 未上場の場合だったらそうした情報は開示する必要なかったかもしれませんが、実際に公開企業となって売り上げ利益のバランスが非常に悪く大きな赤字であって、問題が解けないといった現状に関して将来性に関して非常に?が付いた結果が株価に反映されていると考えています。 現在D-Wave社の主力サービスは量子アニーリングと呼ばれる量子計算機を利用したサービスよりも、既存コンピュータを利用してそちらの計算結果を返すと言うことを中心に行っているため、計算精度は一見良くなったように見えるのですが、実際には既存コンピュータを使った使い古された技術をベースに事業を展開しようとしていると言うところが将来性と言う観点で非常にマイナスかと思っています。

弊社でも、量子アニーリングに関しては非常に長い間やってきたので大変思い出はあったんですが、現在弊社の社内で当時の社員は1人も残っておらず、量子ゲートもしくは機械学習に全部変わってしまいました。そしてカナダの会社自体も人がほとんど入れ替わり、知らない会社となってしまったので、あまり接点がなくなってしまいました。 ハードウェアの開発面、そして理論的な支えとなる部分においても、非常に多くの困難と不安を抱えるため、そうした株価に出てしまっていると思われます。 また、課題として 株価が1ドルを切る期間が長いと上場廃止勧告がなされてしまうと言うことで、以前その1ドルを切る出来事が起きた際に何とか頑張って戻していたのですが、今回も同様に1ドルを戻せるかどうかが勝負の分かれ目になると言うふうになってきてしまっています。

次にRigettiです。この会社はもともと創業者がIBMの量子コンピューター開発者からスピンアウトした企業となっています。この会社も株価が低迷していましたが、1ドルを維持しています。一時的に1ドルを割っていたのですが、D-Waveが1ドルをわっている中1ドルをギリギリ超えていると言うことで、上場維持に関してはまだ望みが持てます。 さてこの企業は先程のD-Waveと同様の超伝導方式となっていますが、量子ゲート方式と呼ばれる計算方式を採用しています。この辺がD-Waveとの大きな違いとなっています。最近ではD-Waveも量子ゲート方式に切り替えるとか、参入すると言うニュースを流れましたが、Rigettiの株価を見てみると果たしてそれだけの開発をかけて超伝導で量子ゲートを作る必要があるのかどうかが怪しいのではないかと言うような判断を勘ぐってしまうくらい難しい株価となっています。 個人的にはRigettiはかなり伸びるかどうかはボーダーライン企業となっています。確かに量子ゲート方式という計算の方式としては非常に期待感が持てる企業となっています。

Rigettiが運が悪いのは、おそらくIonQがいるからです。 また、傍目から見ていて、Rigettiは多くの戦略をベンチャーキャピタルに依存しているように見えます。 採用しているのは超伝導方式と呼ばれる方式です。これはIBMやGoogleなどと同じと言われていますが、正直Googleは2018年以降新しいハードウェアはあまり作っておらずやる気を全く感じません。実際そうしたハードウェアを主導していた主任者は2018年に電撃辞任していますし、今後Googleが本気で量子コンピュータを作ると言うのをどこまで信じていいのかがわからないと言う状況になっています。そのため、新しいマシンの登場を待っています。 こうした超伝導方式の課題はエラーが多いと言うことです。私たちが普段利用しているマシンではほとんど計算結果が出ません。これは世間に大きな誤解をうんでいると思います。現在のマシンでは計算しても計算結果をまともに得られませんので、こうした計算機としての利用と言うよりも、飾り物として利用するというのが正しいように思える位のものです。政治的にすごい発展をしてるとか、国の威信をかけていると言うふうに、そうした見世物としての飾りの意味合いが非常に強くなってきてしまっています。そのため、私たちが超伝導方式を使うと言う事は非常に注意をして使わなくてはいけないと言うふうになってしまっています。 さらに運が悪いのは、IonQはきちっと計算ができてしまうということです。

株式市場に登場して公開企業となった。今、実際に収益を上げられるかどうか、そして補助金や助成金に依存しないでビジネス課題でスケールするかどうかと言う判断は非常に重要です。 そうした中で、ビジネス的な課題感が大きいというのが現在の量子ゲート方式だと思います。特にこの方式に関して今後問題になるのがFTQCと呼ばれる誤り訂正方式は本当に実現できるかどうかというのが正直ちょっとよく解りません。

現在我々が利用しているNVIDIA社のGPUを利用した量子コンピューターのシミュレーションソフトウェアというのがあります。2020年までは旧方式でソフトの改良がされていなかったため、量子コンピューターに対して非常に低速で50量子ビット以上は計算できないと言うものでした。 2021年にスパコンの最高賞であるゴードンベル賞を獲得したアプリケーション手法によって、GPUは数千量子ビット。そして数万量子ビットの量子ゲート計算ができると言う見込みになってしまったため、こうしたコンピューターシュミレーションを利用したアプリケーションの検証が大きく進んでいます。我々でもこうしたアプリケーションもマシンが数千量子ビットあったとしても、あまり有用な計算ができないと言う風な見込みとなっています。

ここがけっこうな分かれ目になるのですが、多くの量子コンピューターのアプリケーションは、量子ビットの精度や数だけでなく、量子ビット同士の接続に関しては非常に大きな影響を受けます。 この量子ビットの接続というのが現在大きな分かれ目となり始めていて、これは量子コンピューターの性能である量子もつれの性能に大きく影響をします。量子もつれとは複数の量子ビットが状態を共有し、連動して計算をすると言う機能です。この量子もつれを作るためには、量子ビット同士を直接作用させる必要があります。もしくは間接的に量子ビットに影響与えて、最終的にもつれさせ、量子ビット同士に影響与えると言うのもできます。 他の方法としては、量子ビットのコピーは作れませんが、情報の入れ替えはできますので、量子ビット同士が接続できるところまで量子ビットの情報を入れ替えながら計算をすると言うことも考えられます。どちらにしろこうした一筋縄では簡単には遠方同士の量子ビットの計算はできません。

量子コンピューターのエラーが多いと言う事も1つの視点ですが、この量子もつれの度合いが大きいかどうかというのも、今後のアプリケーションの行く末を大きく決めます。現在の量子コンピューターのアプリケーションに関しては、例えばD-Wave社が参考になるのですが、接続が少ないと必然的にアプリケーションが限定されます。例えば最適化問題でシフトの計算をしたい場合、遠方同士の日付は連動していないと計算ができないことが多いです。一方で、交差点を介した道の混雑度の計算など、直接遠方の道同士が計算できなくても交差点の隣接している道路だけで計算することができます。そのため、D-Wave社ではもともと接続の少ない問題のような北京の交通最適化問題のような問題がときやすいとして取り上げられました。

同様のことが量子ゲート方式でも適用できます。現在の量子コンピューターではこの接続数があまりにも足りないため、計算が限定されると言うことが度々起きています。例えばシフトの問題を解きたい場合に関しては、超伝導方式では量子コンピューターの素子を平面に配置しているため、遠方同士の計算を頻繁にしたいと考えていても、近距離の計算でしかできないため計算を近似するもしくはハードウェアに合わせると言うふうにして妥協しなくてはいけません。同様に誤り訂正に関しても、遠方の量子ビットを複数束ねて計算する必要があるため、あまりにも接続が少ないと課題になります。 そこに次世代で期待されているFTQCと呼ばれる誤り訂正付きの量子コンピューターのアプリケーションというのが出てきます。

次世代のアプリケーションは、現在のエラーが多い量子コンピュータのアプリケーションの課題を解決するためには、より量子コンピューターの性能を本格的に利用するために量子もつれが重要になります。次世代のアプリケーションでは、非常にアプリケーション側で量子もつれを要請するような作りとなっており、本格的なアプリケーションを利用するためには、本格的なハードウェアがないとそもそもアプリケーションを作ることができません。前述したNVIDIAのGPUを利用して数千量子ビット。そして数万量子ビット計算できるといった計算は、そうした量子もつれがあまりないと言うことが前提となっている場合のみ計算ができるということがわかっています。

そのため、たとえNVIDIAのGPUであっても、量子もつれが複雑に絡まり合っている場合では、計算速度は非常に遅くなり、現場では40量子ビット、50量子ビットに制限されてしまうということがあります。つまり、エヌビディア社のGPUで開発されている新規のアプリケーション開発キットに関しては、既存のエラーが多く接続が少ない量子コンピューターが前提となっているというのがあります。 超伝導方式では、果たして将来的な誤り訂正のマシンが作れるのでしょうか。正直僕は分かりません。しかしイオントラップでは接続数が多いため、誤り訂正に最も近いのではないかと言うふうに現在最有力視されています。ですので難しいのは現状のエラーの多い量子コンピューターのアプリケーションを開発する、そしてGPUを併用すると言う戦略と、将来的な量子コンピュータを作ると言う戦略はかなり相反する戦略となってしまっています。

こうした戦略の知見の違いの多さ、接続の少なさと言う観点から、超伝導の方式の期待感がイオントラップを下回っていると見ることもできます。

最後にIonQですが、課題点は量子ビットの少なさです。今後こうした量子ビットを増やせない場合には大きく期待感を下げることになるとは思います。現場アマゾンで使える最新型のIonQのマシンで25量子ビットとなっていて、私たちも利用しましたが、大変性能が良いです。また実際に計算ができると言うところも良いのですが、25量子ビットは手元のパソコンでもシミュレーションで充分計算できるものです。そのため現在のコンピュータが計算できる範囲であれば確かめようができますし、あまり期待感がありません。ですので25量子ビットが計算できると言うこと自体は量子コンピュータにとっては凄いことですが、既存のコンピュータにとってはあまり凄くないことです。 本当に現在のロードマップで量子ビットが増えていくのかどうかというのが1つの疑問点となっています。そのため、大きく株価の伸ばせない可能性もあります。今後50量子ビットをゆうに超えてくると言うことが起これば重要かと思いますが、現状で言うと複数のマシンを接続して、そうした大きな量子ビットを実現しなくていけないと言うことになってくると、今度別の問題が出てきます。

イオントラップ方式はイオンを動かすことができるので、全結合方式といって、すべての量子ビット同士が計算できるというのがマシンの1つの利点となっています。 今後量子ビットうまく増やせず、複数のチップを接続して実現するとなると、必然的に接続数が減ります。そうすると上記のようなRigettiのような問題が出てくると言うことがあります。 ですので、今後まだ予断を許さないと同時に別の方式がこうした旧来の方式と競合してくるということが充分考えられます。それが今後登場してくる中性原子と半導体です。おそらくイオントラップのライバルが中性原子となり、超伝導のライバルが半導体となると思います。光方式に関しては少し開発が独立していますので、こうした4方式と直接比較することはできないと考えています。

まだまだ量子コンピューターの業界は未発達です。2018年頃は大きな期待感があったのですが、現状で言うとこの4方式が市場投入され、競争が加熱化しない限りは大きくおさまって行かないと考えています。まずはイオントラップ方式と中性原子方式の戦いが起こるのではないかと思っています。 そしてその後に超伝導と半導体が競争になると考えています。

我々はあくまでクラウドサービスやソフトの企業ですが、現場の量子コンピューターを利用する際に、一番ネックとなるのが、現在の接続数の少ないマシンと将来的な量子もつれが多いマシンとの、ハードウェアとソフトウェアとの融合や一貫性というのがとられてないと言う点です。国内ではそうしたソフトウェアとハードウェアをもう少し細かい観点から分析し、ソフトウェアとハードウェアの一貫性と言う観点から開発をしたり、将来性を語ってると言う論調はあまり見られません。そのため、ソフトウェアとしては量子もつれが必要なのに、ハードウェアとしては量子もつれが取りづらいと言うものを開発してると言うような場面を見かけることもあります。

私たちは現在、そうした量子もつれが強いマシンが登場していないため、必然的に現在の量子コンピュータを利用する必要がありますし、GPUの量子コンピュータのシミュレーションでは、そうした量子もつれが強いアプリと言うのは使うことができません。そのため多くの場合で、ソフトウェアは量子もつれを犠牲にして、現在計算できるものを重視していると言う戦略をとっています。今後本当に量子もつれが強いマシンが出てくることがあれば、より量子もつれが強いアプリケーションを開発することができると期待していますが、現場ではそうした状況がまだまだ見えないため、今後どうなってくるかというのも私たちソフト屋がからの期待感と言うのはあります。以上です。

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