こんにちは、GPUを利用した量子コンピュータのアプリ開発が順調に立ち上がり、ある程度規格が決まりましたので、次は半導体を利用した本物の量子コンピュータの開発を年末と来年に向けて取りまとめています。現在は量子コンピュータの開発黎明期と言われていますが、我々は数年前から半導体に取り掛かっており、半導体を利用した量子コンピュータの開発の重要な位置にいると感じています。
SEMIジャパンが量子コンピューターの協議会を設立、半導体製造技術の応用に期待
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13021/
現在blueqat社はSEMIジャパンの量子コンピューター協議会の委員長をJSR様と一緒に行っています。産業用途の半導体量子コンピュータはこれまで大学や研究所主体で行われてきた開発とは一線をかくするものとなっている印象です。重要なのはこれまでの半導体のサプライチェーンの中で、どのように産業に量子コンピュータを組み込むのかが重要になります。
なぜこれまで半導体を利用した量子コンピュータが大きく取り上げられなかったのか、それはまだ量子コンピュータの市場が半導体に比べて大きくなく、超伝導や光などの方式が注目されていて、半導体は技術的にスケールが難しく市場投入は2027-2030年ごろになるだろうと言われていました。
しかし、近年の状況は大きく変わっています。GPUに代表されるようなAI向けの半導体やスマートフォンをはじめとする半導体の技術開発は高度化・活発化しています。半導体を利用した量子コンピュータはこれまで数量子ビット以上は作れないというのが定説でしたが、近年このような状況で急激に大規模化できるようになってきており、2023年は特に大きく半導体量子の期待が膨らむと考えられます。実際、米インテル社はこれまでの常識を大幅に覆す12量子ビットのチップTunnel Fallsを2023年6月に発表しました。かなり画期的なことです。
Intel、12量子ビット搭載チップ「Tunnel Falls」。研究者向けに提供
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1509334.html
さらに、現在の量子コンピュータの開発において大きな課題とされる室温制御機器や測定機器、配線が、量子ビットが増えると莫大に用意しないといけないという課題に関しても米インテル社を中心に多くの企業で課題解決に向かっています。インテル社が開発するHorse Ridgeは莫大な配線と室温機器の課題を解決するために、冷凍機内部にSoCのチップを測定・制御向けに配置し、スケールの問題を解決するものです。
インテル コーポレーション、極低温量子制御チップ 第2世代Horse Ridgeを発表
https://newsroom.intel.co.jp/news/intel-debuts-2nd-gen-horse-ridge-cryogenic-quantum-control-chip/
このような制御・読み出しのチップはクライオCMOSと呼ばれ、既存半導体を利用して作成され、極低温の4K温度で動作するように開発されています。日本でも量子コンピュータの心臓部である半導体量子コンピュータのチップとこの制御用のクライオCMOSチップの両方を開発しています。
シリコン量子コンピューターは日本にも勝機
https://www.sangyo-times.jp/article.aspx?ID=7877
量子ドットのチップとSocチップの二つを小型冷凍機内部に設置することで、多くの測定や制御装置や配線を利用することなく、高速で高性能な半導体量子コンピュータを開発できます。かつ、これまで量産の技術のない超伝導・イオントラップ・中性原子・光と違い、量産体制が整っているのも特徴です。これまで実用化が無理と言われていた半導体ですが、2023年6月にインテル社がこの方向性でチップをリリースしたことで状況が大きく変わっています。今後は産業グレードの量子コンピュータ量産計画がかなり現実味を持って進む状況になったと考えられます。
また、半導体量子コンピュータの最後の部品である冷凍機も大幅な小型化が期待されています。現在超伝導で利用されいてる冷凍機は大型のものが利用されていますが、半導体量子コンピュータの動作温度はそれよりも高い温度で動作するため、冷凍機が小型です。実際に弊社でも来年にむけて開発が進んでいる初号機は冷凍機が従来の量子コンピュータと比べてはるかに小型です。米国ではデスクトップ型のシリコン半導体量子コンピュータも開発が進んでおり、実際に小型化が進むとなれば量産化と合わせて多くの台数を抱えることができます。
我々blueqatはNVIDIAのGPU量子コンピュータシミュレータや最適化・機械学習アプリなど、常に業界の一歩先を見据えて行動し成功してきました。まだ他社が見えていない半導体量子コンピュータに期待することでまた次の展開を占う意味でも開発を加速していきたいと思います。
以上です。