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ディープテック10年、資金調達6年──量子コンピュータ事業の苦闘と生存戦略

Yuichiro Minato

2025/02/11 11:12

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ディープテック10年、資金調達6年──量子コンピュータ事業の苦闘と生存戦略

はじめに

ディープテックで量子コンピュータ事業を始めて10年、資金調達をして6年が経ちました。毎日が試行錯誤の連続で、トレンドの変化に振り回されることもしばしば。しかし、この道を選んだ以上、環境の変化に適応しながら進み続けるしかありません。特に近年は、生成AIのような爆発的なトレンドが現れ、ディープテックの投資回収の難しさがより鮮明になっています。しかしなぜか社員のやる気はマックスで最近の厳しい状況の方がやる気はあるようです。

量子コンピュータもその例外ではなく、期待と現実のギャップが広がる中で、投資家の目線も大きく変わってきました。本記事では、この10年を振り返りながら、ディープテックの現実と生存戦略について書いていきます。

1. 量子コンピュータ事業の10年

10年前、量子コンピュータはまだ研究室レベルの技術でしたが、「未来の計算機」としての期待は高く、シミュレーション技術やアルゴリズム開発を進める企業が増えてきました。しかし、その当時は明確なマネタイズモデルが存在せず、「いつか来る未来」を信じて研究を続けるしかありませんでした。

6年前に資金調達を始めたときも、多くの投資家は「ディープテックは長期的な投資」として考えていたものの、期待値ばかりが先行し、技術が市場に適用されるまでのギャップに対する理解はまだ浅いものでした。実際に量子コンピュータを活用できる範囲は限定的であり、そこに収益性を見出すのは至難の業でした。

2. ディープテックの現実と生成AIの衝撃

近年、生成AIが爆発的な成長を遂げ、テック業界の投資マインドが大きく変わりました。
以前は「長期的な視点で育てるべき」と考えられていたディープテックも、生成AIのように「短期間で市場を破壊する」技術が登場したことで、より即時的なリターンが求められるようになっています。

特に、ディープテックの多くは投資回収が困難な領域です。

  • 研究開発には膨大な時間と資金が必要
  • ビジネスモデルが確立される前に競争環境が変わる
  • 量子コンピュータのように「期待値が先行しすぎる」と、実用化までの間に投資家の関心が他の分野へ移る

こうした環境の変化により、「量子コンピュータは本当にビジネスとして成立するのか?」という問いを、以前にも増して突きつけられるようになりました。

3. トレンド変化の激しさと頻繁なピボット

現在のテック業界では、1〜2年で大きなトレンドの変化が起こるのが当たり前になっています。

  • 2010年代前半:クラウド・ビッグデータ
  • 2010年代後半:AI・量子コンピュータへの期待
  • 2020年代前半:Web3・メタバース(短期間で収束)
  • 2022年以降:生成AIの急成長

このような変化の中で、量子コンピュータ事業も市場の期待に応じて頻繁にピボットを余儀なくされてきました。例えば、量子コンピュータの商用利用にフォーカスしていた企業が、クラウドサービスとしての提供に切り替えたり、量子ソフトウェアの開発にシフトしたりするケースが増えています。しかし現状の米国市場を見ていても量子業界で収益化がうまくいっている企業はほとんどなくて、苦労が垣間見れます。

しかし、こうしたピボットは容易ではありません。
なぜなら、

  1. ディープテックは技術の蓄積が必要であり、短期間での方向転換が難しい
  2. 市場の期待と技術の成熟度のギャップが大きすぎる
  3. 投資家が「次のトレンド」に流れやすく、継続的な資金調達が難しくなる

その結果、「誰もついてこられない」状況が生まれ、スタートアップの淘汰が進んでいきます。

4. ディープテックが生き残るための戦略

では、こうした環境の中でディープテック企業はどう生き残ればいいのか?
私がこの10年間で学んだことをまとめると、以下の3つが重要だと考えています。

① 短期・中期・長期の収益モデルを組み合わせる

ディープテックの多くは「長期的にしか収益化できない」と考えられがちですが、それでは事業が続きません。短期的な収益を生み出すサービスを持ちながら、中期的にスケールできる領域を模索し、長期的にディープテック本来の強みを活かす──このバランスが重要です。

② ピボットを前提とした開発体制を持つ

「この技術に固執する」と決めすぎると、市場変化に適応できなくなります。例えば、量子コンピュータの研究開発を進める中で、量子ソフトウェアやハイブリッドコンピューティング(GPU+量子)への応用を模索することで、市場ニーズに対応しやすくなります。

③ 長期的なビジョンを持ちつつ、目の前の市場に適応する

ディープテックの最終ゴールは長期的な技術革新ですが、そこに到達するためには「今、使える技術」を提供し続ける必要があります。量子コンピュータなら、例えば「古典的な計算機と組み合わせた最適化ソリューション」など、現実的に提供可能な技術を見極めることが重要です。

5. これからの10年に向けて

これまでの10年は試行錯誤の連続でしたが、今後もディープテック業界は加速度的に変化していくでしょう。特に、量子コンピュータの分野では、

  • 量子ハードウェアの小型化・集積化
  • 量子と古典コンピューティングの融合
  • クラウドを活用した量子サービスの普及

といった方向性が鍵を握ると考えています。

ディープテックに挑む人にとって、この道は決して楽ではありません。しかし、それでも進み続けることで、新しい価値を生み出せると信じています。10年前と比べ、量子コンピュータ業界は確実に前進しており、その歩みを止める理由はどこにもありません。

次の10年も、環境に適応しながら成長を続けていくつもりです。

苦労しているような文章ですが、何もなかった10年前に比べれば量子コンピュータというだけで知ってる人がいるだけかなりマシで幸せな日々だなと感じています。

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